第十二話 小さな手
第十二話 小さな手
2236年 秋の終わり 海上
私たちは海の上に居た。
波は静かみたい。
隣でセイジは座って海面をずっと見ている。
これから久しぶりの戦いが始まる。
私たちは施設のある島から離れた海上に留まっていた。
施設のある島から出て来る船を襲うため。
あまり良い方法ではないと思う。
しかし、今はこれが抵抗できる方法だと。
私はそう思うことにした。
船を襲うにあたって、私たちはすべきことをした。
行きかう船にその場に居てもおかしくは無い船であると認識させること。
これには時間がかかった。
この行為は海上での食料調達を含めて一石二鳥なのでいいとは思うけど。
それもすべてこのときのため。
出来るだけ簡単に船に乗り込めれば、あとはどうにかなると思う。
ルイスの弓の腕も期待できそう。
それにしても、あの腕はどこで身につけたんだろう。気になる。
セイジは自分の武器を手入れしている。
もちろん外からそんな行為が見えないようにしている。
彼が使っているのは両手で持つ剣だけど、腰に挿せる程度の大きさのもの。
彼は重すぎる剣は使い勝手が悪いだろうと考えたみたい。
力任せに片手で振り回すことも出来るので面白いと本人は言っている。
ちなみに私は片手で持てる短剣を両手にそれぞれ持った形。
セイジの武器よりは動きやすいし、何より手数と速さで勝負。
そういえば、仲間の中には斧や斧の持つ部分を長くしたような武器を持っている人もいる。
片手で振るなり、両手で振り回すなりそれぞれである。
レイはごつごつした棒を一本持っている。
棍棒というらしい。
棒の先端は球形で無数の刺が付いている。
あの棒で相手を殴るということなのだろう。
想像するだけで痛そう。
ケイトを含め何人かは、今回の作戦に参加していない。
ルイスやレイの話ではケイトは単独行動のほうが得意らしい。
それを二人は理解している。
一体彼は何者なのだろうか、凄く気になる。
ちなみに、今回参加している人間が持っている武器の一部はきおくに載っていたものを真似て作ったものらしい。
しかし、自分たちの記憶を頼りに創ったため、元の武器とは少し違うかもしれない。
使えるならそれでいい話だけど。
今は食料を得るために釣りをしている人間もいくらかいる。
海にもぐって貝類を探している人も何人かいる。
そうしながらも、私たちは行きかう船を見ている。
既に、施設のある島には船がある。
その船が何時島を離れて国に戻っていくか。
ひとまず、そのときがくるまで今は待とう。
その時は突然に来た。
見張りに立っていた男が騒がしい音を立てて私たちがいるところに来た。
彼が来る前に私はその物音で起きたけど。
「船が出たぞ。」
男の声で一斉に起きだす。
セイジはまだ寝ている。
ひとまずびんたを何回かする。
そしたら不機嫌ながらも起きた。
その気持ち別のところに向けといてよ。
私たちは用意を済ませて、自分たちの船を島から離れた相手の船へ近づけていく。
相手の船は私たちの船の数倍はある大きさ。
あの中になにがあるのか気になるところ。
ルイスは弓を持ったままずっと相手の船を見ている。
見張りを撃とうということらしい。
船は相手の船尾に近づいていく。
一人が見張りをしているところが見えた。
ルイスはすかさず弓を引いて放った。
相手はこちらに気が付いたが直後に矢が当たって倒れた。
少し時間を置いて、ルイスはみんなに言った。
「大丈夫そうだ。行こう。」
さすがに大声を出すのはまずいので、それぞれ頷く。
何人かが縄の先端に大きな針を付けたものを振り回して船に投げ込む。
針が引っかかったことを確認するとそれぞれ上りだす。
私もセイジも相手の船に入る。
船には二、三人残り周りを見張っている。
私とセイジが相手の船に侵入すると、既に事が始まっていた。
ルイスは船内から出て襲ってくる相手を矢で射抜いたり、近づいてきた敵を短剣で切りつけていたりしている。
やはり弓だけでなく短剣は必要なんだろう。
いや、そんなことはあとで考えればいいこと。
「うりゃあ。」
ルイスは叫びながら船上で棍棒を振り回している。
棍棒棒に当たった相手が吹っ飛んでいる。
私たちもその中に加わる。
私の両手に持つ短剣が、セイジの剣が月明かりに光る。
思ったよりも簡単に済んでしまった。
武装していた人間は十人にも満たない。
ほかには船を動かす人間たちも居たけど、無抵抗者確定。
私たちは占領した船を施設がある島から見えない位置に進めさせる。
自分たちの船もそのあとをついていく。
船を止めると、今回運んでいたものを船外に運び出す。
とは言っても大量の紙が入った木箱と乗組員の食料だけらしい。
「この船で施設のある島にそのまま戻りな。じゃなきゃここで死んでもらう。」
ルイスは残りの乗組員にそう告げる。
彼らは逃げるように島へ戻っていった。
もし、彼らがここで荷物を奪われたと報告したとしても私たちが居るアジトまでは到達出来ない。
施設のある島へと戻っていく船を全員が見ていた。
「さて、戦利品を持ち帰ろうか。」
レイがみなに言う。
私たちは手分けして大量の紙の入った木箱と奪った食料を自分たちの船に乗せてアジトへと戻る。
アジトに到着すると残っていた人間が出迎えてくれる…なんてことは無かった。
既に残っていた人間はみんな寝ていた。
ケイトは居ないようだ。どこかに行っているのだろう。
木箱と食料を部屋の中に置くと、疲れたのか私たちはすぐに寝てしまった。
次の日の朝早くにケイトは帰ってきた。
「彼ら慌ててたよ。うまくいったんだね。」
施設のある島に偵察に行っていたらしい。
単独行動とはこの事だったんだ。
ケイトは疲れているらしく。そのまま寝てしまった。
私たちは昨日手に入れた木箱の中の紙を調べてみる。
大量の紙はきおくを書き写した一部らしい。
しかも、ほとんどが武器や戦術といったものだった。
「戦争始める気かよ。」
同じく大量の紙を見ていたセイジが言い出す。
これほど内容に偏ったものを運んでいたのだ。
戦争を始めると言い出しても不思議じゃない。
しかし、あの国が何処に戦争をするのだろうか。
まだ良くわからない。
彼らは一度船を襲われたんだ。
今度からはもっと警備を厳しくするだろう。
次の船は襲えるだろうか。
いや難しいかもしれない。
今はこの大量の紙を読んで、施設を取り戻す方法を考えよう。