第十一話 新手
第十一話 新手
2236年 秋の終わり 某所
私は眼前に見える陸を見ている。
ここは船の上だ。施設がある島を見ているわけでも邪魔者を探しているわけでもない。
背後に誰かが近づく気配がする。
振り返れば乗組員の一人が立っていた。
「カール大尉、こんなところに来てどうするのですか。」
乗組員の一人が私に言う。
分からないのも仕方が無い。テリーすら知らない場所にお前たちを連れて行くのだから。
私はまた同じ姿勢に直ると皆に言う。
「陸に着いたら、私と数人以外は船に残って欲しい。」
あの場所に大勢で押しかけても面白くは無い。
我々に付く人々がこの先に居る。正確にはわが国から離れて勢力を拡大する試みをした者たちというほうが正しいだろう。
私は彼らとつながりがある。国としてではなく一個人として。
国は彼らの行動には全く関心が無い。
彼らの規模が小さいからだ。
テリーは施設に置いてきた。
これは我々が本当にすべきこととは違う。
「さてと、行こうか。」
「ふざけるな。」
大男がテーブルを勢いよく叩く。
私についてきた何人かが微かに体を動かす。
いや、動かすなよ。
今目の前にいるこの大男が私と面識のある男だ。
名前は確かグランとか言ったか。
彼の部下からは頭と呼ばれているから忘れてしまいそうだ。
「俺は自分の国を出たんだ。いまさらその国に頼られたくは無いな。」
グランの言葉はもっともだ。
「国ではなく私の力になってほしい。」
私の言葉にグランは考えている。それをただ私は待っている。
しばらく考えた後、グランの口が開く。
「何をするんだ。」
のってきた。
「ある集団が私を殺そうとしている。」
少し間違っているような気もするが、彼を使うためだ。
「そうか、お前を。」
グランは考えている。さぁ、どうする。
「だからその集団が私を殺す前に殺して欲しいんだよ。」
成功すればうれしいものだ。
「どこにいるんだ。」
彼の言葉に内心笑いが止まらないよ。
僕らは昔とは違うんだ。
私は一度目をつむり、一呼吸する。
私は彼を見て言った。
「ロンドンのある島の対岸一帯のどこかに居るよ。」
「正確な場所は分からないんだな。」
グランの言葉通り彼らの場所は私にも分からない。
しかし、それでもいいんだ。
「彼らの中には父親と娘の親子がいる。それが目印だ。」
おくりものが目印になる。これいい考えだね。
「部下に探させてみよう。見つかり次第殺せばいいのか。」
「そうだよ。私は別にすることがあるんだよ。」
これで面倒なことが消えればいい。
あとはグランの答えだけだ。
私は彼の目を見た。
彼は私の目を見て言った。
「わかったよ。任せてくれ。」
完全に私の仲間になったみたいだ。
さてと、頑張ってもらおうかな。
「それと、自分でも気をつけろよ。」
私はグランの言葉に礼を言って、連れてきた部下とともにその場を離れた。
彼らにも、そして自分の部下にも気づかれないように闇の中で笑った。
施設に戻る途中ずっとまだ見ぬ敵の集団がグランたちに始末されるところを想像する。
奴ならやってくれるだろう。
そういえばテリーが居ないためか、誰も話しかけてこないな。
本当につまらない。
私は沈んでいく太陽を見ながらはため息をついた。
そういえば、私の居ない施設のほうは大丈夫なのだろうか。ちょっとまずかったか。
「カール大尉。輸送船が彼らに襲撃されました。」
施設に戻るとテリーは慌てた様子で私に言った。
私の予想は悲しくも当たってしまったようだ。
あの集団が船を襲ったのか。まるで海賊だな。
「大尉。申し訳ありません。」
「船のほうもしっかりしておけと…。」
私はため息を付く。
私の心は曇っているよ。このまま雨が降ってしまいそうだよ。
「申し訳ありません。」
テリーのほうは既に雨模様かな。
「もういい。もっと強化をしておけ。彼らは私の知る者に始末させるようにしてきた。」
そういうと今は陸すら見えないグランの居るであろう方向を見る。
私の言葉にテリーは少しは落ち着いたのか。
「では、彼らを追わないのですね。」
私は顔をテリーの顔に近づけてみる。
「だからぁ。私が知っている奴に頼んであるって。それに面と向かって潜伏場所すらわからない彼らをどうやって始末しにいけるの。」
私はテリーから顔を離すと、その場をぐるぐると歩き回り始める。
「そうですね。わかりました。船の警備を強化しておきます。」
私はその場をぐるぐる歩き回りながらもテリーを見て言った。
「頼むよ。私が居ないときに限って何か悪いことが起きてちゃ使い物にならないよ。」
「はい。以後気をつけます。」
テリーの言葉に私は立ち止まり。
「よろしい。以上だ。」
私は言うことを言ってその場を離れた。
失敗したのなら、成功することによって責任をとってもらおうか。