見上げた月は涙で霞んだ
何を願っていたのだろうか?
何を望んでいたのだろうか?
今はもう、それさえも分からない。
見上げれば丸い月が浮かんでいた。
月はいつもそこにあって、変わる事がない。
満ちては欠けるを繰り返すだけ。
それは私を安心させ、時に悲しくさせる。
私は長い時を生きてきた。
もう自分の歳も分からないくらいに。
友人も恋人も両親も死んでしまった。
私だけが残ってしまった。
愚かな選択をした自分を呪っても呪っても変わることの無い運命。
人の血をすすり、夜にしか生きることが出来ない命。
意味のない命。
何かを生み出すことも出来ず、土に還ることも出来ない。
単なる化け物に成り果ててしまった。
こんな化け物の涙をぬぐってくれる人など、どこにいる?
いるはずがない。
だけど月だけが優しく私を照らしてくれた。
優しく包んでくれた。
もう孤独はイヤだと思っても、自分ではどうすることも出来ない。
『死』を選ぶことも出来ない。
愚かで情けない女。
どんなに泣いても、叫んでもこの体は変わらない。
消えない。
私は月を見上げて嘆くだけ。
涙が枯れ果てるまで私は泣くだけ。
自分が何を望んでいるのかも忘れて、ただ泣いた。
もう涙しか出ない。