家庭文庫をやめちゃって
5年続けた家庭文庫。やめてしまうことに
長女のヒカルが入学した当初は、家庭文庫でのミナミは、誰からも挨拶一つされない存在だった。
でも、次女のユウカが生まれてから事情はかわった。
多くの子どもたちが、次女の面倒を見てくれ可愛がってくれたのだ。
さながらアイドルのように、みんなの注目をあびて、次女は育った。
参観日に行こうものなら、周囲を児童が囲んで歩けないほどだった。
平日も休みの日も、女の子たちが集まってきて、次女を抱っこしたり、ブランコにのせたり、遊んでくれた。
ユウカは、とても活発で明るい子に育っていった。
長女のヒカルもまた、友達がふえて、家庭文庫ですごす時間が多くなっていった。
ミナミは、夫や姑や近所の大人の間では不人気だったが、子どもたちとすっかり仲良くなり、夫の了解をえて、100万円ほどで家庭文庫の一部を改装して、姑と別居して住んでいた。
そんな時だった。
ミナミは、よく次女の面倒を見てくれていたヒカルの友達とトラブルを起こしてしまったのだ。
文庫と家が一緒だったこともあって、自分の家のように出入りする子どもたちの中には、夕飯を食べてしまう子もでてきて、カッとなったミナミは注意してしまったのだ。
それが原因で、しかった子の親御さんが怒り、ミナミは、文庫でも近所でも、子どもたちの誰に挨拶しても誰からも挨拶されない、いわゆる無視といった状態になってしまった。
人数が少ないだけに、そういうときは手も足もでない。
もっと慎重に行動していれば。思慮分別があれば。
ミナミに後悔は多い。
だけれどもことはおこってしまった。
ミナミはまたもや、悩みふさぎ込む日々を送っていたけれども、実家の母から安く家が出てるけれども買わないかと持ち掛けられ、買うことを決意する。
長女のヒカルも学校でいじめを受けるようになり、このままではいけないと思い詰めてのことだった。
せっかく始めた家庭文庫を5年でたたみ、ミナミは娘2人と、夫の実家を出て、ミナミの実家のある地方都市に引っ越しした。
毎日、なんだかんだと騒がしかった文庫を出て、姑もいない、近所の目も厳しくない、地方都市の一戸建て。
新興住宅地ではなく古い町並みではあるものの、核家族であり基本的に互いは干渉しない。
次女は3歳になっていたのですぐに近所の幼稚園に入れたが、ここも自由で、まるで干渉されなかった。
ミナミはそこで、久しぶりに、ママ友と普通に挨拶をかわしたり世間話をした。
一番最初に声をかけられたとき、自分ではないと思って振り向かなかった。
それが自分を読んでいる名前だと知ったとき、ミナミは飛び上がるほどうれしかった。
5年ぶりに、ママ友から声をかけてもらったのだから。
家庭文庫をやめたことは、虚脱感と同時に、安堵でいっぱいだった。
まったく笑わなくなっていたミナミは、炭水化物を抜いて急激に痩せたのが原因か、うつ状態に陥り、過呼吸の発作を起こすようになっていた。夫の実家に行こうとすると、過呼吸がおこって、自制できなかった。




