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シンプルマザー  作者: ボケナスは嫁に食わせるな
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島へ引っ越そう

「血液検査までこちらでお待ちください」

 病院の廊下のベンチで、心電図をはかりおえてぼんやりしていると看護師さんんが声をかけてくれた。

 今日は、入社前健康診断にきている。NPO法人の契約社員のフルタイムだけど、グループ会社は病院を中心に介護施設や保育園などを経営する2500人の規模の会社である。

 グループの病院で健診を受けているところだ。

 この健診でひっかかったら、正式採用はされないとのこと。

 44歳のミナミにとって、健診に受かるというのは並大抵ではない。

 とくに身長152センチにして体重63.5キロのミナミとしては。

 といってもミナミ、この2週間ほどで体重67.9キロから4キロばかり落としたのだ。

 健診前の4日間で2、3キロは落とした。

 酵素ファスティングのお蔭だ。ただ生理中なので、水分の代謝が悪いためか、なかなか体重は落ちなかった。

 いつも行っている整体で耳つぼをやってもらったけれども、水分代謝のツボのシールが昨日はがれてしまったところだったのだ。

 ミナミは手帳を開いて、やるべきことリストを確認した。

 ミナミは、NPOセンターで働く仕事の内定をもらっているが健診に通って受かるかどうかは1週間後で

 それだけでもドキドキなのだが、なんと今、引っ越しの最中で、そっちもまたドキドキであった。

 ミナミの両親が50万円を出し、ミナミが30万円を出して買った、離島の家に、一週間後に引っ越し予定なのだ。

 住所変更を済ませ、転校手続きを長女のヒカルの中学では行ったところ。明日は、新しい島の中学校への転校手続きをする予定だ。

 次女のユウカの幼稚園、そして今度行く保育園は入所手続きが7月末までにすれば9月1日から入所できるとのことで、大急ぎで夫の勤務証明をとって、ミナミは求職カードのコピーをつけて、今日健診の後に提出するてはずを整えている。

 今日は、この後、市役所にいき、市役所近くの皮膚科で水虫の薬をもらうことになっている。

 ミナミは中学校のころから父親からうつされた水虫に悩んでいたが、ようやく決心して治療に通いはじめたところだった。

 3週間ほどたつが、ウソのようにカユミがなくなっていた。けれどもまだツルツルといったところではない。皮があちこちからはげ落ちて、むしろ汚くなっていた。

 引っ越しも、島に行くたびに、トクコの車を借りて荷物を運んだので、あと、一回運べば終わるところまで近づいている。

 ただ昨日、ヒカルが、お別れカラオケに友達と行って帰ってくると、

「子猫をかっていい?」

と、ねだりだしたのだ。

 ミナミの両親にはもう承諾をとっているという。

 保健所にいれられる前の猫を、ひきとるコーナーで、かわいい子猫をみてすっかり夢中になってしまったようだ。

 いよいよ、丘の上のジェーンのようだなぁと、ミナミはちょっとおかしい。

 それと同時に少し不安だった。猫飼えるかなぁ。

 でも、すぐに可愛い猫が家にいることを考えると、悪くないと思うのだった。

 夫のカズキとは家を出て以来、ずっと揉めていて、夫のカズキと違う、可愛いペットに癒されたくて仕方なかったのだ。

 ヒカルもユウカも大きくなっているので、特に猫のような生き物が我が家にいるといいなぁと思うのだ。

 ペットセラピーというやつか。

 そしてこの猫が、またどういう訳か、8月1日に、お試しで島の家にやってくることになっていた。

 しかし、ヒカルの部屋で飼うというけれども、ヒカルの部屋もユウカとミナミの部屋も2階の和室で、ヒカルは4畳半だ。

「おじいちゃんがタンスの襖をのけて5畳半に広げてくれたから」

 と、ヒカルはいうけれども、ミナミはそんな狭い部屋で、とも思う。

 その反面、ヒカルにも、ユウカにも、猫というのは、すごくいい影響を及ぼすのかも知れないと思う。

 最近の子どもはゲームやパソコン、スマホに囲まれていて、リアルな何かに欠けていると思う。

 そんな中、猫はまさにリアルだった。

 ミナミが子どもを産んだときも衝撃だったのは、赤ちゃんがリアルタイムで生きていて、少しも手が離せないんだという現実。

 自分の都合ではどうにもならないということ。時間が自分だけのものではなくなるということ。

 そういう鬱陶しさと同時にたまらない愛情が赤ちゃんにわいてきたのを今でも思い出す。

 猫をかうって、触れ合うってこと。

 きっと、今の子どもたちは肌と肌のぬくもりみたいなものを無意識に求めているのかも知れない。

 そう思うって、ヒカルには猫を飼うことを全面的に世話する条件で認めた。

 しかし、和室をそうなってくると衛生上も改装する必要が出てきていて、予算やいつまでに仕上がるか、そもそも、二階に置いた荷物をまたのけなければならないということに、ちょっぴり、不安があった。

 しかし、それでもなんだかすべてが順調で、ミナミは、きっとうまく行く気がしていた。

 ミナミは、健診の結果は出ていないけれども、洋服を買って帰ろうと、決めていた。

 見た目って重要だとどの本にも書かれている。

 ミナミは見た目はイマイチだけど、中身は、こちらもイマイチかもしれない。

 でも、少しくらい、見た目を変えることだってできる。新しい生活にあたって、少し見た目を変えて、新しい自分で、新生活を迎えたい。

 なんだかミナミをそんな気分にさせていた。


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