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シンプルマザー  作者: ボケナスは嫁に食わせるな
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酵素でファスティング

「お腹が空いたな」

 まだ暗い中、何か食べようかと考えて起き上がりながら、ミナミは思い出した。

「あ、酵素でファスティングしてるんだった」

 ミナミは起き上がっても、何も食べられないんだと思うと、もう一度布団に倒れこんだ。

 手足を伸ばして大の字に寝転がると、自分が汗臭いなぁと感じる。

 ミナミは汗っかきなので、いつも大量に汗をかいている。

 洋服がすぐに臭くなってしまうのだ。

 せめて着替えようと起き上がると、隣で眠っているユウカが寝返りをうった。

 起きてトイレに行きスマホで時刻を確認する。

「1時」

 まだ夜中の一時だった。

 酵素液を一日目は夜だけ、そして2日目は三食置き換えてみた。

 といっても、三食だけでは物足りずに、口さみしくなるたびに酵素ドリンクを飲んでいたので実際は何杯飲んだかわからにくらいだ。

 おいしいのはおいしいけど、日中ひどくだるくて、頭が痛かった。それに下痢をしていた。

 夜中の一時だけど、酵素液と水を飲む。

 すぐにお腹がさしこんできて、トイレにかけこんだ。

 なんだか熱っぽい。

 今までの恨みつらみ、夫のカズキに対する苛立ちなどが、走馬灯のように次々に思い浮かび、ミナミは布団に横になったまま、ひとりで悪態をついた。

 あれも最低だし、これも最低。考え出すときりがないほど、今まであった、すべての悪いことをいっぺんに思い出していた。

 すべてが悪い方向にいっているように思えて、沈み込む。

 こんなに下痢しているのに、ミナミの体重は500グラムも減っていなかった。

 そういったことも、苛立ちの原因の一つになっていた。

 でも、下痢しているところをみると、なんだか、体の中がキレイになっていくといった感覚はあった。

 それに、下痢しているにも関わらず、寒くなるということがなかった。

 大抵のダイエットとか断食は、まず体が冷えていくものだったからだ。

 でも酵素では、お腹まわりが、ぼわんとあたたかかった。

 ミナミは、色々と思い出しながら、うつらうつらと眠り、夢にうなされてはまた起きるを繰り返しながらもそれでも眠りについた。

 朝起きると、不思議と体が軽くなっていた。

 朝からは下痢がおわり、おしっこがやたらとシャアシャアでるようになっていた。

 今日は、夏休み中だが、ユウカを幼稚園の預かり保育に行かせる予定になっていた。

 ユウカに朝ごはんを食べさせているとヒカルがのっそりと起きてきた。

「あたしさあ、おばあちゃんところの中学に、いこっかな」

「え?おばあちゃんところ?」

 ミナミは聞き返した。

「みきしゃん、引っ越しちゃったし。成績下がったし。塾行くのやだし」

 ヒカルは顔をしかめた。

「ああ、そっか友達いなくなっちゃうしね」

 夏休み直前に、クラスで一番仲の良い友達が引っ越しすることになったのだ。

 それに成績は中の上くらいだったのが、今回のテストでは中の下にランクされていた。

「私もさ、仕事決まったら、そういえば、ユウカの面倒を見てもらうのに、おばあちゃんとこにいたら便利だとは思う」

「うん、でしょ。あたしもさ、気分変えたいっていうか」

「え?引っ越すの?!やったー」

 次女のユウカは無邪気に喜んでいる。

 この前、姉のトクコのところに住所変更したところだけど、また引っ越しとなると変更だな。

 でも意外と住所変更は大した手続きではなかった。

 学校が変わるとなるとどうかなぁ。

 ミナミの名義として買った島の家は、ミナミの両親が今は住んでいる。

 美しくはないが、とても気持ちの良い家だった。

 島の学校は有名で、島の外からも校区外の通学を受け入れている。

 フェリー代無料で、船着き場からはスクールバスも出ている。

 小学校と中学校しかないけれども、少人数でとても良いときいている。

 ヒカルにとっても、ユウカにとっても、最適な環境かもしれないな。

 ミナミはそう思った。

 酵素液で、下痢しまくったおかげで、色々な悪い物がすっかり出て行ったようだった。

 なんだか、軽い気持ちになってきていた。

「そだね、引っ越そうか」

 早速、母親に電話をかけると

「いいよ」

と、二つ返事でオーケーしてくれた。

 ミナミの母という人は幼い頃こそ厳しかったけれども、とてもさっぱりした人で、決断がとても速いのだ。

「いつ来る?」

「まだいつとは」

 そう、口をにごすミナミにヒカルとユウカが声をはりあげた。

「今日!」

「いいよ」

 電話が切れた。

 今日ったって、準備がいる。

「ちょっとあんたたち、無理言っちゃだめよ!」

 でも考えてみると、ミナミは健康診断をうけて、一週間くらいで正式採用か決まるとのこと。

ちょうど8月2日には決まり、決まればすぐに出社だ。

 そうなると引っ越しは難しい。

 後、9日。

「ほんとに引っ越したい?」

「うん」

 姉妹は、こういうときは結束がかたかった。

「じゃあじゃあ、今日は無理だけど、8月1日くらいをめどに引っ越そう」

「わかった!今から、荷物つめるね」

 ユウカがダイニングテーブルをとびだした。

「今日、さっそく第一弾いこ!」

 ヒカルも部屋にひらりと去った。

 やれやれ、また引っ越しすることになってしまった。


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