詩をめぐる6つの断章(ピエール・ブーレーズ追悼)
其の1
現代において詩を書く者は
必ずオーデンを経なければならない
すなわち
煙草がダメとか酒が飲めないとかではなく
一度でも
ラッキー・ストライクFKを吸いながら
ドライ・マティーニを傾け
ブラックコーヒーを啜った経験がなくては
詩は書けないのである
其の2
たとえブーレーズを知らなくても
「ル・マルトー・サン・メートル」を聴いてまるで心を動かされない者が
詩と音楽の関係性を論ずるなんてことがあり得るだろうか
其の3
オーデンとブーレーズの接点だって?
バーンスタインがオーデンの「不安の時代」をシンフォニーに脚色して
ブーレーズがニューヨーク・フィルハーモニックの後任を務めたってことだけで
詩的説明には十分だろ
其の4
いくら早くからブーレーズをフィーチャーしてたって
「ブラームスみたいな下らないシンフォニーやコンチェルトを書き散らした作曲家が」と
うすら笑いを浮かべていた浅田彰と坂本龍一よ
君たちの老後はきっと寂しいものになるだろうね
素直にブラームスの近代性を認めてはどうかな
其の5
ピエール・ブーレーズ氏は2016年1月7日
ドイツのバーデン=バーデンで亡くなった
享年90歳
壮年期に「怒りのブーレーズ」とまでいわれた導火線短き作曲家が
かくも長生きするとはいったい誰が想像したろう
終焉の地は現代音楽の聖地でもある
其の6
ブラームスとオーデンは
ともにウィーンで逝去
あまり触れられてないが
ブーレーズはブラームスをスルーしていた