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A-10 ゴーレム造る

 オッス、俺ドラゴン。名前はコート。

 突然だがちょっと聞いてくれ。


 新居を建てたのは良いものの、何か物足りなさを感じる昨今(さっこん)である。

 もうちょっと、飾り気というか、賑やかしというか、活気が欲しいところである。

 そこでふと思いついた。

「ゴーレムでも造ろうかなぁ」

 屋敷の門番に。

 雑事をこなす使用人に。

 寂しい独り寝のお供に。

 簡素な部屋のインテリアに。

 大小様々なゴーレム達がよりどりみどり。


 数は力だ。

 多いことは良いことだ。

 よし、では造るか。


 ◆


 ゴーレムを造ると決めはしたが、俺はそっち方面の造詣が深いわけではない。

 イメージ敵には泥とか岩とかでできた巨大な人型って感じなんだが。せっかく造るなら無骨なデザインじゃなくて愛嬌のあるマスコット的なキャラクターを目指したい。


 いわゆる「ゆるキャラ」みたいなの。


 ふぅむ。デザイン…………以前、黒ドラゴンがウザいくらいに美術部アピールしていたが、奴に頼るのは非常に不快だな。すげぇドヤ顔してきそうだし。

 ちょっとシミュレーションしてみるか。


*********


「ゆるキャラのデザイン? いいよいいよ、やってやるよ!

 ほら、こういうのどうだ。アンニュイな感じがゆるいだろ。あとほら、こういうズングリムックリな奴とか。

 どう? どう?

 あ、そうだ。二頭身の奴とかあるよな。見ろよこのまぬけ面、あっははは、良い感じに描けてると思わないか?

 どれがいい? もっと描こうか?

 そうだ、城の皆にも描いてもらおうか。アイデアは多い方がいいもんな! コンクール開いて、採用されたキャラの作者には商品を出そう! どうだ、良い考えだろ! あっはっはっはっは!」


*********


 うん、死ね。


 すこぶるウザい。

 勝手な想像でなんなんだけど、死ね。

 周りでヨイショしてるエルフ美女と相まって二倍ウザいわ。


 やはりあんな黒光りに頼るのは無しだな。

 となると他の伝手は――人類帝国の王族連中か、神殿の関係者か、はたまたその辺の町や村をぶらついて有識者を見つけるか。

 おお、考えてみると俺の交友範囲って狭いんだな。ちょっとショックだ。これもうちょいなんとかした方がいいかもしれん。異界に引きこもってる場合じゃないぞ。


 ――お、そういえば最近、友達の多そうな知り合いが出来たんだったっけ。

 百年単位で放っておくつもりだったが、思い出したついでに挨拶しにいくか。顔も広そうだし、ゴーレムに詳しい知り合いなんか紹介してもらえるかもしれないし。


 ◆


 と、言う訳でやってきました、霊峰シエトラ。かつて竜王タナカ様と謁見するための聖域だった場所である。

 そして程なくお目当ての人物が姿を現す。霊峰の守護竜・ディクドゥースである。

「おお、我が主。ようこそおいで下さいました。ですが一声かけて頂ければこちらから出向きましたものを」

 本日は精悍なドラゴンの姿でご登場である。あれかな、目上の相手に対する正装みたいな感覚なのかな、ドラゴン形態ってのは。

「おっすおっす。まあ、そんなにかしこまらんと、楽にしたってや。俺、こんな感じだから」

 両手を広げてラフさとゆるさをアピールする。

「神の力をお持ちの貴女様にご無礼を働くなど滅相も御座いません」


 うーむ、伝わらんな。堅苦しいのは無しにしようやと言うとるのに。初対面の時はお嬢ちゃん呼ばわりだったんだから、そのままのスタンスを続けてくれればいいのに。

 あ、そうだ。

「ほら、前に言ったろ。目立っちゃダメなんだよ。あんたみたいな如何にもな相手がヘーコラしてたんじゃ、俺がどんなに頑張って気を緩めても、それなりの身の上に捉えられちゃって目立っちゃうのよ。

 むしろ最初と同じようにお嬢ちゃんとでも呼んでくれた方がいいんだ。俺もあんたのことおっちゃんって呼ぶから」

「おお、なんと恐れ多い――しかし、そうですな。御身は身分を隠さねばならぬのでしたな。うむ、うぉっほん。あー、お嬢ちゃん、今日は、なんの用事出来たのかな?」

 まだ硬いな。いや、でも言われて素直に対応しようとするのは好印象だ。黒ドラゴンならこうはいくまい。

「いやぁ、実はかくかくしかじかでおっちゃんに詳しい人を紹介して欲しくてね」

「かくかくしかじかってなんだ?」

 おっと、しまった。ジャパンの様式美が通じねえ。

「かくかくしかじかとは、『これこれこういう訳で』という説明を省略した言葉だよ」

「はぁ。いや、言葉の意味もそうなんですが、結局どういう訳でどなたを紹介すればよいので?」

 へーい。ボロが出てるぜおっちゃんよぅ。うっかりすると敬語が出ちまうな。

「話すと長いんだが、ゴーレム造りたいんで職人の当てはないかね」

「一言で終わりましたな。詳しい者に心当たりはあります。ただちょっと変わり者ですが」

「ですます口調は禁止な。んで、その変わり者っていうのは、やはりドラゴンだったりするのかな?」

「もちろんで――もちろんだとも。人種の伝手もありはするが、長く生きている分、奴の方が技術に長けている。腕は確かだよ。腕は」

 自分を納得させるように何度も頷くおっちゃん。

 腕の方は、まあ、スキル『全知全能』を使いさえすれば何の問題もない。初心者の俺でもベテラン並みの技術を使いこなすことが出来る。だから、むしろ必要なのはノウハウだ。何に注意すべきか、応用するならどういうやり方があるか、普通じゃ使わないような裏技テクニックはないか。そういうアドバイザーをこそ求めているのだよ。

「ああ、それこそ問題ありま――ないとも。経験を積んでいるだけあってそういった知識も十分だ。

 ところで、なんでまたゴーレムを?」

「新居のインテリアにしようと思って」

「――――ほぅ」

 意味深な顔で納得するおっちゃん。これは深読みして誤解している顔だな。

 まあ、いいか。俺は嘘吐いてないもんな。勘違いする方が悪いんだ。


 ◆


 人型になったおっちゃんを引き連れ、彼が指定した場所へと転移する。

「おっと」

 事前に聞いていた通り、そこは足下がぬかるんだ湿地帯であった。足を取られそうになり慌てて飛び上がる。(くだん)のドラゴンは好きこのんでこのじめついた場所に住んでいるのだという。

 粘土質の土が多いからゴーレム作りに適しているのだろうか? 職人のこだわりを感じる環境である。そしてその住まいはといえば、見た目はこんもり積み上げられた蟻塚のような土の山であった。

「さて、いつもは巣穴から地下に潜ってグータラしてる奴なんだが、居るかな。おーい、ザイドナックよ! 霊峰の守護者・ディクドゥースが訪ね参った! 急で悪いが頼みたいことがある。それに紹介したい者もいるので、顔を出してはもらえないか?」

 おっちゃんが泥塚の穴に向かって声を張り上げると、近くの沼がボコボコと泡立ち始めた。

 そっちから出るんかい。

「んー? お久しゅうゴザるな。それがしに頼みなど、何にゴザろうか」

 ゆっくりとした足取りで、ヌボーッとしたドラゴンが這い出て現れた。

 泥まみれで土気色、顔がでかいため四頭身で、全長は成竜形態の俺の三分の二程度といったところか。四つん這いで這って歩くためか、四肢は太くて短い。更に羽根は退化してお飾り程度だ。沼知専用ドラゴンだな。見事に環境適応している。

 だがそれより何より気になるのは、ゴザる口調。

 決して意訳ではない。こちらの言葉を使いつつ、語尾が「ゴザる」なのだ。一人称もそのままの発音で「それがし」。なんでやねん。凄い違和感ある。


 そのゴザるであるが、俺を目にした途端、「ん? ん?」と口にしながらためつすがめつこちらを観察してくる。


 な、なんスか? 俺から何かを感じ取ったのか? こちとらただの子供ドラゴンなんですが。


 ちょいと警戒しながらおっちゃんと二人で成り行きを見守っていると、今度は「おぉぉぉぉ」と、低音ボイスで唸り始めた。

「よ、よ、よ…………」

「よ?」

「幼女キタコレっ!!」

 ゴザるはひどく興奮した様子で転げ回り、呆れる僕らに湿地の泥をこれでもかと浴びせてくれた。

 おっちゃんは「な?」って目をして俺を見ている。確かにこいつは性格に難有りだ。


 ゴザるの野郎、こいつ、あれだな。侍じゃあねぇな。

 ゴザる口調のオタクだ、こいつ。

来週出張行くんで7/17(日)の更新はお休みするかもです。

でも続き物になっちゃったんで出来るだけ更新したいところでゴザる。

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