9話
若干の理想が含まれている?
そんなこと気にせず読みなさいよ(笑)
しまった。
馴染み過ぎて忘れてしまっていたのだ、ここが紅魔館だということに。
紅魔館の主は、レミリア・スカーレット。そのレミリアには、唯一の血の繋がった妹がいる。それが、今俺の目の前にいる「フランドール・スカーレット」だ。
破壊衝動を抑えきれず地下におよそ500年間幽閉され、紅霧異変をきっかけに外へ出ることが許されたはず。
そう、ここが俺の知っている紅魔館だとしたならば、俺は命の危機に瀕している。
どうしてだろう…、ただただ図書館を目指してたはずなのに、なぜここで死ななければならないのだろうか。
「ねえ、貴方はだれ?」
金髪の髪を揺らし、フランは首をかしげる。
「え、えっと、俺の名前は神崎夕月。レミリアさんに雇われてここで働いてる…」
「私の名前はフランドール、レミリアは私のお姉様なの。フランって呼んでね」
にこにこと笑うフランに対して、俺は苦笑いしかできなかった。
緊張からかはたまた恐怖心からか、体中が震えている。
「お姉様が雇ったんだ。じゃあさ、私のお願い聞いてくれる?」
「はい…大丈夫です」
多分と小さく付け足す。
聞こえなったであろうフランは「やったー」、と飛び跳ねながら喜んでいる。
ここで死んでしまうのか、と考えると無性に後悔ばかり浮かんでくる。
こんなことなら、歴史なんて考えずに色んな所へ行けばよかったとか、自機組に会いに行けばよかったとか…etc。
でも、もうそんな後悔をしても遅いのだ。どうせここで死ぬのだからな…。
にこにこと微笑んだまま、フランは口を開いた。
「その本読んで!」
「 」
フランが指をさしていたのは右手に抱えていた本。
傍から見たらずいぶん間抜けな顔をしていただろう。予想を反したお願いだった。きっと殺されるとか思っていた自分が恥ずかしくもなる。
本のタイトルはまるで狙っていたかのように、童話集。
偶然が重なるって怖い。まさにそう実感させられた。
「いいですよ、フランさん」
「わーい、やったー!」
子供の様に、いや、吸血鬼の中じゃまだまだ子供なのだろう。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら腕を引っ張り、ベッドまで連れてくる。
フランはベッドに腰を掛け、ここに座れと言わんばかりに自身の隣をポンポンと叩く。
「じゃあ、まずは桃太郎の始まり――――――」
―――
―――――
―――――――
神崎夕月がいない。
いつもなら部屋にいるのにどこに行ったのだろうか。
パチェの居る図書館にも神崎はいなく、小悪魔が本を落として慌てていたぐらいのことしか、変わったことはなかった。
ん?小悪魔が落とした本…?
いや、まさか。
まさかそんなことがあるはずがない。
私は咲夜とともに地下のとある場所へと急ぐ。予想通りの場所にいるのなら神崎の命が危ない。そう思っていた。
「妹様、開けますよ」
咲夜は、フランの部屋の扉を開け、固まった。
何故固まったのだろうか。若干鼻から赤いものが垂れている気がするのだが、今日のところは見逃しておこう。
しかし、私が見た光景もまた、驚きを隠せなかった。
あのフランが、神崎夕月に膝枕をされ、しかも頭を撫でられながら寝ていたのだ。
ん?レミリアのキャラがぶれまくってるって?
そんなもん気にするなよjk




