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東方陰影記  作者: 凛
9/70

9話

若干の理想が含まれている?

そんなこと気にせず読みなさいよ(笑)

しまった。

馴染み過ぎて忘れてしまっていたのだ、ここが紅魔館だということに。

紅魔館の主は、レミリア・スカーレット。そのレミリアには、唯一の血の繋がった妹がいる。それが、今俺の目の前にいる「フランドール・スカーレット」だ。

破壊衝動を抑えきれず地下におよそ500年間幽閉され、紅霧異変をきっかけに外へ出ることが許されたはず。

そう、ここが俺の知っている紅魔館だとしたならば、俺は命の危機に瀕している。

どうしてだろう…、ただただ図書館を目指してたはずなのに、なぜここで死ななければならないのだろうか。


「ねえ、貴方はだれ?」


金髪の髪を揺らし、フランは首をかしげる。

「え、えっと、俺の名前は神崎夕月。レミリアさんに雇われてここで働いてる…」

「私の名前はフランドール、レミリアは私のお姉様なの。フランって呼んでね」

にこにこと笑うフランに対して、俺は苦笑いしかできなかった。

緊張からかはたまた恐怖心からか、体中が震えている。

「お姉様が雇ったんだ。じゃあさ、私のお願い聞いてくれる?」

「はい…大丈夫です」

多分と小さく付け足す。

聞こえなったであろうフランは「やったー」、と飛び跳ねながら喜んでいる。

ここで死んでしまうのか、と考えると無性に後悔ばかり浮かんでくる。

こんなことなら、歴史なんて考えずに色んな所へ行けばよかったとか、自機組に会いに行けばよかったとか…etc。

でも、もうそんな後悔をしても遅いのだ。どうせここで死ぬのだからな…。

にこにこと微笑んだまま、フランは口を開いた。

「その本読んで!」

「   」

フランが指をさしていたのは右手に抱えていた本。

傍から見たらずいぶん間抜けな顔をしていただろう。予想を反したお願いだった。きっと殺されるとか思っていた自分が恥ずかしくもなる。

本のタイトルはまるで狙っていたかのように、童話集。

偶然が重なるって怖い。まさにそう実感させられた。

「いいですよ、フランさん」

「わーい、やったー!」

子供の様に、いや、吸血鬼の中じゃまだまだ子供なのだろう。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら腕を引っ張り、ベッドまで連れてくる。

フランはベッドに腰を掛け、ここに座れと言わんばかりに自身の隣をポンポンと叩く。

「じゃあ、まずは桃太郎の始まり――――――」



―――

―――――

―――――――


神崎夕月がいない。

いつもなら部屋にいるのにどこに行ったのだろうか。

パチェの居る図書館にも神崎はいなく、小悪魔が本を落として慌てていたぐらいのことしか、変わったことはなかった。

ん?小悪魔が落とした本…?

いや、まさか。

まさかそんなことがあるはずがない。

私は咲夜とともに地下のとある場所へと急ぐ。予想通りの場所にいるのなら神崎の命が危ない。そう思っていた。

「妹様、開けますよ」

咲夜は、フランの部屋の扉を開け、固まった。

何故固まったのだろうか。若干鼻から赤いものが垂れている気がするのだが、今日のところは見逃しておこう。

しかし、私が見た光景もまた、驚きを隠せなかった。





あのフランが、神崎夕月に膝枕をされ、しかも頭を撫でられながら寝ていたのだ。

ん?レミリアのキャラがぶれまくってるって?

そんなもん気にするなよjk

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