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東方陰影記  作者: 凛
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おまけ。

最後に抗いたかった……

紅魔館地下室。

フランが眠るベッドの上には愛すべき姉が読んでいた絵本が数冊積んであり、その近くにはフランの寝顔を眺める当主がベッドに腰をかけていた。

「……それにしてもいつの間に絵本なんて好きになったのかしらね」

ふと、レミリアは呟いた。誰かに問いかけるわけでもなく、答えが返ってくる事を望むことも無く。ただ疑問をそのまま口から発した。

「こんな可愛い寝顔で……。起きてる時は鬱陶しいぐらい元気なのに」

「それ程までに妹様はお嬢様の事がお好きなのですよ」

「ふふ。本当に可愛い子ね」

いつの間にか姿を現したメイド長に驚く事はなく。レミリアはフランの頬をそっと撫でた。

「……ぅう……ん……」

小さく呻きながらフランは頬に添えられた手を握りしめた。起きてはいないらしく、手を握ったまま、フランは幸せそうに眠っている。

「お嬢様。動かないでください、写真を撮りますから」

「…鼻から出ているものを拭いてから撮りなさい」

「これは失礼しました」

「…吸血鬼って写真に写れたのかしら……?」

鼻から忠誠心を吹き出す咲夜に呆れながらレミリアはそんなことを呟いた。

「写る、と思えば写りますよ。写真というのは記憶を残す一つの手段なのですから」


***


博麗神社境内。

箒で地に落ちる葉を片付ける巫女はふと、自らの腹部を抑え落胆した様にため息をついた。

「お腹……空いたわ……」

「そう思って私が来たんだぜ」

にぱー、と笑みを浮かべながら普通の魔法使いは空から箒に乗って降りてきた。お土産を後部に乗せて。

「あらアリス。また面倒くさいのに捕まったわね」

「否定はしないわ……」

「シャンハーイ」

肩を落とすアリスと相反する様に魔理沙は意気揚々と神社敷地内にある霊夢の家のえんがわに腰をかけた。

「ほら、客人なんだぜ。茶菓子を持ってくるがいい……なんってな」

「そんなにお茶が欲しいならお賽銭を入れなさいよ」

「最後にお賽銭入ったのいつかしらね……」

「……最近入ったような気がするんだけど」

珍しく博麗神社に賽銭が入る、といった一生一代並のイベントだったくせにそれを忘れる霊夢は一体何を考えているのだろうか。

「……やっぱり入ってねぇんじゃねぇのか?」

「いいえ、この五百円を入れた誰かがいるはずなのよ」

懐から「霊夢」と名前が書かれた硬貨を取り出し、白黒の魔法使いではなく、その隣に腰掛ける人形遣いに手渡した。

「わざわざ名前書いたの」

「……あげないわよ」

「いらないわよ……。まあ、これを入れた誰かがいたのは確かね」

綺麗な文字で書かれた「霊夢」の文字に呆れながらもアリスと魔理沙は不思議そうな顔を浮かべた。


***


黒い羽を広げ、少女は何かを忘れたがるかのように幻想の空を飛び回っていた。

幻想で見た自らの幻想だったのだと言い聞かせながら。


が、忘れられるはずも無く、少女の心にはポッカリと穴が空いたままであった。


彼女は願う。


いつかきっと再開することを。


そして、想いを伝える日が来る事を。

これで本当に東方陰影記は終わりです。

こんな文才ないものを読んでいただき、ありがとうございました。


もう書き始めてますが、つづき枠で東方白兎記、と言うものを書いています。

よければそちらも()

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