64話
どうも、萌え豚です
「ようこそ冥界の主。この紅の館へは八雲紫に言われて、だろう?」
「えぇ、貴方達は得意でしょ?こういう分野は」
「吸血鬼だからな」
ククク、と喉を震わせて笑うレミリア。こういう分野、とは風見幽香の腕を指して言ったことだろう。血生臭いことは吸血鬼なら、という安直な考えではあるが、この幻想郷において血生臭い事が得意な物は今の所紅魔館の住人の他は数える程度しかいないだろう。ましてや今の自機2人をルーミアのような人喰い妖怪に任せる訳には行かないだろう。
「まあ、いい。霊夢と魔理沙もかなりショックを受けているのだろうしな。あんな二人を見たのは初めてだよ」
「それはそうよねぇ。こんな事にならないためにも用意された弾幕ごっこよ。色々とショックは大きいでしょう、紫も、だけどね」
今ここにいない親友の名をあげ、幽々子は天井を見つめた。いつもなら名を呼べば待っていたが如くすぐにスキマを開き微笑みを見せてくれるのに、今日は紫は姿を見せてくれない。
「さて、と西行寺幽々子。本題に入ろうではないか。我々がここに集められたわけを、そしてこれから起こる運命に割り込んだ異変について、な」
「紫ですら予測がついていなかった事件が貴方にわかるのかしら?」
「ふん、死人に私の能力が分かってたまるものか。死人の運命など一体何があると言う?」
風見幽香の腕を持ち上げ、レミリアはもう一言。
「彼女の頭は本物なのか、な?」
「咲夜さん咲夜さん」
「なによ」
「レミリアさん、いつもと違いません?」
「.....やっぱりそう思うわよね。私もよ」
***
快楽。
欲望。
殺意。
その他諸々、負の感情として表される物の半分以上が何故か感じられなくなった。風見幽香が死んだ、と聞かされた時も驚くだけでそれ以外の感情は何故か全く感じられなくなっていた。
感情の共有、共感は問題なくできる。なのに、だ。悲しんだり寂しんだり、怯えたり。感じることができていたはずの感情が掴めなくなっている。
「夕…月…さん?」
「…ど、どうされましたか?」
「とても怖い顔をしてましたから」
「えっええ、考え事をしてましてね。彼女たちをどうやって立ち直らせてあげようかと…」
どうやら考えすぎて表情に出てしまっていたらしい。口だけの出任せではあるがとりあえずはこれで納得してくれた様だ。そう、自分で言って思い出したが目の前で落ち込んでいる少女二人も面倒も見ないといけないんだった。やること多すぎで死にそう…。てか俺よくよく考えるともうとっくに死んでましたね。
「夕月ー、お腹減ったー」
「そうだそうだーキノコ寄越せ―」
「ちょっと待てフラン。お前いつの間に部屋に入ってきた?てか魔理沙。お前落ち込んでたんじゃなかったのかよ」
「美鈴に通してもらった」
と、エヘンと胸を張る金髪の吸血鬼。
「いつまでも落ち込んでいられるかってんだよ。なあ霊夢。さっさと飯食って犯人探しに行くんだぜ」
「まったく、魔理沙はお昼ご飯を奢ってほしいだけじゃないのかしら?」
今の今まで落ち込んでいたとは思えないほど彼女たちは陽気に会話を始めた。こう、少しぐらい声をかけてあげれば立ち直るかな、って思ったんだけど…。立ち直るの早すぎませんかね。
「死んでたって夕月みたいにフラッと帰ってきそうだしな」
「煽ってんのかお前?」
「ねえー夕月。早くご飯ー」
「あーはいはいわーったよ。咲夜さん呼んでくるから少し待ってろ」
「フランも行く!」
部屋の扉のノブに手をかけた瞬間、フランが背中に飛び乗ってきた。空気が読めていないのか、空気が読めているのか。どちらにせよフランのおかげで二人が明るくなるきっかけができたのだと思う。
「そういえばお姉様からの伝言。咲夜に伝えられてないなあ」
「なんだ?そんなに大事な用事があったのか?」
「ううん。もう二~三ヶ月は前の話なんだけどね。時が来たら咲夜に「夕月が帰ってくる」って伝えてって。でももう帰ってきてるから伝えなくていいやってずっと言わなかったんだぁ」
「…ああ、そうだな」
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