63話
テスト期間何ですよねえ…。
何してるんですかね…。
―――太陽の畑。
名物のヒマワリを筆頭とし、四季折々の花々が力強く、そいて美しく咲いていた―――――――、
はずだった。
八雲紫は目の前の光景に愕然とした。スキマ越しに見たはずの光景ではあったが実際に見るとかなり酷い事が再確認を余儀なくされた。目の前に転がるこの亡骸が命を失って何日たったのかわからない、だがここ一帯には腐敗臭が漂っていた。この香りを肥料の香りととるか、はたまた死体の匂いととるかは嗅ぐ者の感覚次第だろう。
「 」
開いた口が塞がらない、と言う言葉がよく似合う表情を浮かべていた。悲しみや怒りが心の中に溢れてくることは無く、ただ目の前の光景を理解できずに呆然と立ち尽くすばかり。
そして彼女の中で何かが弾けるような感覚がした。
呼吸が段々と荒くなり、今まで誰にも見せたことがないような怒りの形相を浮かべて彼女の亡骸を見つめていた。一体誰が彼女を殺したのか、を八雲紫は知らない。知らないのだが、彼女は心の中で当に決めていたことがあった。
「風見幽香を殺したものをこの手で殺す」、と。
***
時を同じくして紅魔館。
魔理沙と霊夢はとある一室で膝を抱えて横並びに座っていた。普段勝気な少女がこんなことになるなんて誰も思ってはいなかっただろう。
「…何で幽香が」
ボソリ、と霊夢が彼女の名を呟いた。霊夢はいまだに幽香が死んだことを信じられてはいなかった。何故紫が彼女たちを紅魔館に避難させたかも理解できていない。が、紅魔館の主人と住人達には話は通っていたらしく、本来門番をしていたはずの美鈴が今彼女たちの部屋の外で部屋の番をしている。なお、がら空きとなった門には小悪魔ズが番の役目を代行している。
「そう…ですか。あの風見幽香さんが」
人里から帰ってきた神崎と射命丸はレミリアと咲夜から今起こっている異変ないし事件の概要を聞いていた、が神崎はどこか落ち着いたようにその話を聞いていた。
「あら、案外驚かないのね。隣の天狗は驚きすぎて二の句も告げないって感じだけど」
「何ででしょうかね、逆に驚かない自分に驚いてる次第です。まるでこうなることをあらかじめ知っていたような、妙な感覚です」
神崎に問いかけたレミリアは実に微妙な表情を浮かべた。
(まるで風見幽香の運命を知っていた、と言わんばかりね。でも、知っていた、というよりもこれはまるで――――――――)
「…あ、あや…あややや。お二人ともご冗談がお上手で…。あの風見幽香さんがそう簡単に誰かに命を奪われることがあるのでしょうか…?」
「エセ新聞記者。こいつを見てみるといいさ。咲夜、アレを」
いまだ状況が呑み込めていない射命丸はただの冗談だ、と。彼女が死んだなど信じられない。そう訴えたのだ。しかしレミリアに指示された咲夜が持ってきたとあるものを見て、彼女は目の前が歪んだ。
「この腕が身に着ける衣服は彼女の物、でしょう?」
「……いっ」
「この傘の血はどちらのかわかっているのですか?」
恐怖に顔を歪める射命丸とは正反対に神崎は傘に付着する血に興味を向けた。傘を持ち上げ、香りを嗅ぐレミリアは大きくため息をついた。
「残念だが風見幽香の物だろう。彼女の香りがこの傘に着いた血から漂ってくる」
「しかしお嬢様。風見幽香ともあろう大妖怪がこうも簡単に、しかも誰に葬られたのですか?」
「それは…、私ではわからない。私が見れる運命は所詮これから起こる未来だけさ」
自らの能力を蔑むようにレミリアはしかめっ面を浮かべた。
「すみません、お嬢様。西行寺家の者が到着した模様です」
窓の外に映る門を見た咲夜はとある二人組が門の前の小悪魔ズと会話をしている光景を目にした。迎えに行ってくる、と言い残し咲夜は部屋から姿を消した。
「夕月、貴方には霊夢と魔理沙の相手をお願いするわね」
こう言い残して。
神崎、と表すか
夕月、と表すか。
それは如何せん拘るところなので




