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東方陰影記  作者: 凛
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62話

幽香は違和感を感じた。


あえて言うならば彼―――――――神崎夕月に、だ。


以前どこぞの天狗から搾り取った情報では自らがいた世界に帰りたがっている、と。


なのに、だ。今の彼からはそんな感情を感じ取ることはできなかった。まるで帰らなくてはいけない理由を忘れているが如く。


そして、自らがここから立ち退くことさえ拒否し始めているのではないか、と。


「終わりか?風見幽香よ」

そんな物思いにふけっている幽香の耳に光線に飲まれたはずの夕月の声が響いた。

「な…っ!?あり…えない…」

確かに殺さぬように手加減したはずだったが、並大抵の人間なら気を失うはずの威力の光線を正面から受けた彼が今、無傷で幽香の目の前に立っていたのだ。

「ああ、神は常に望んでいない方へと物語を進める。いつだってそうだ、望んではいないものばかり自分は手に入れ、そして失う。―――――さよならだ、風見幽香」


そう言った夕月は一閃、徐に刀を振り払った。



胴体から離れたナニカは空に自らの血液をまき散らしながらヒマワリの中に落下し、ナニカがついていたはずの胴は力なく倒れた。

***


「風見幽香が死んだ」、とすぐに博麗の巫女と幻想郷の賢者の耳に届いた。人里で当に話題に上がっていたその噂が霧雨魔理沙の口によって彼女たちに伝えられたのだ。

幽香がそんな簡単に死ぬものなのか、と霊夢は鼻で笑った。無論紫もきっと何かの冗談なのだろう、と「四月四日はまだまだ先よ」、と扇子を口の前に広げ小刻みに肩を揺らした。――――――が、魔理沙が持ってきたものが彼女たちの表情を一変させた。血だらけに染まった傘―――――――――――――――と、それを握る女性の腕であった。

彼女ともあろう大妖怪の腕がそこらに転がっているはずがない。そう思っていた霊夢の顔は次第に恐怖に歪んでいった。

「な、何よ…、コレ…。なんでこんなものが…ここに」

「魔理沙、貴方これ何処で拾ってきたのかしら?」

嘔吐感に耐え切れず口から吐瀉物を吐きかける霊夢を尻目に紫は魔理沙に冷たい声で問いかけた。

「…太陽の畑に落ちてた。それと…それと…―――――っ」

何かを言おうとして魔理沙は口を開き、何かを思い出し霊夢と同様に嘔吐感に口を抑えた。

あえてこれ以上問いかけなかったのは紫なりのやさしさだったのかもしれない。がしかし、その紫も怒りに握った手を震わせていた。スキマを開き、紫はその太陽の畑ある、と言われた何かを見て、扇子を床に落とした。

「…ありえない」


ありえない。彼女ともあろう妖怪が。

ありえない。なぜこんな風に

ありえない。何故ヒマワリに包まれるようにして







頭だけが転がっているのか。


………ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。







ありえない。



「魔理沙、今すぐ紅魔館に霊夢と一緒に避難しなさい!幽々子もそこに行かせるわ!絶対にそこから動かないで!私は…太陽の畑に行ってくるから」

「まっ!!」


「待って」と最後までいえることなく紫はスキマの中へと入って行ってしまった。


「ねえ…魔理沙ぁ…、紫も、紫まで死なないよ…ね?

「………」

涙を流しながら問われたことに肯定できず、魔理沙はただただ霊夢の背中をさすっていた

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