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東方陰影記  作者: 凛
63/70

60話

テスト期間ェ…

時は同じくして彼岸。

いつも通り忙しく死者の魂の判決に携わる彼女は疲労からか、はたまた部下のさぼり癖からか大きなため息をついていた。

「映姫様―、ちょっとお時間いただけますかー?」

「…何ですか小町。仕事はサボってて良いのですか?」

「いやあ…」

申し訳なさそうに頭を掻く小町は思い出したように話を続けようと口を開いた。

「そうそう、聞いてくださいよ映姫様。ちょっとだけ疑問に思ったことがあるんですよ」

「まったく、何の話ですか…?」

「神崎夕月のことです」

その名を聞いた瞬間、映姫は肩をピクリと動かし、訝しげに小町の顔を見つめた。面倒そうだった顔が疑問の表情へと変わり小町の次の言葉を待っている。

「いえ…気のせいかもしれないのですが…神崎夕月は死んでいないのかもしれません」

ポカン、と口を開けたまま映姫は間抜けな顔をさらした。それもそうだろう。自らの部下が言った言葉は確実に過去がなかったことにされかねないからである。

「とうとうトチ狂ってしまったのですか…?」

「なんでそうなるんですか!…映姫様。今はまじめな話をしているのです。おとなしく聞いてはくれませんか?」

「し、仕方ありませんね…」

いつになくまじめな顔を浮かべる小町に戸惑いながらも映姫は相槌を打った。

「ふと思った疑問なんですがね魂が破片みたいな状態、彼でいう目玉の状態で魂が送られてくること自体ありえないことなんじゃないかな、と思いまして。だってそうじゃないですか今までそんなやつを見たことがないんですよ」

「確かにそうね」

「ですから、いきてる、というのは少し語弊がありましたが彼の一部しかここに送られてない、ということは考えられないでしょうか?」

そうれもそうだ、魂が欠片で来ることがあるなら腕の一部や、足そのもの、あまり考えたくはないが生首なんかもこの場に来かねない。

「彼の魂の一部は今、能力の一部を使うことができ、かつ、人格を二つ持っています。もしそのもう一つの人格が自我を持ち、彼の体を離れることをしてしまったら」

「それも大変ですが、彼の残りの魂は一体…?」

「夕、と同じようにもう一つの人格を作り上げ自分の身を守る行動をとっていることでしょう。ですが、それより心配なことは残りが能力を使える場合です。もし、能力がつかえた場合は…」

ガタリ、と音を立てて四季映姫は立ち上がり、机の上の資料を急いで漁り始めた。

「……もし、その可能性があったとしても、私達が立ち入ったことのない場所なのかも知れません」


そう呟いた映姫の手には白い、目玉だけの写真が乗った神崎夕月の資料があった。

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