56話
今更ですが、私はこぁ、ここぁ派ですから。
「あや、慧音先生じゃありませんか」
「新聞勧誘だったらお断りだぞ」
「何でそうなりますかね……」
人里を一人歩く上白沢慧音を見つけた射命丸。案の定新聞勧誘と考えた慧音は適当にあしらおうと追い払う様に手を振った。
「……そういえばだ、射命丸」
何かを思い出したかのように射命丸に話を振る。
「あのー、あれだ。妖怪の山にいるあの白狼天狗の……名前なんだっけ……?」
「あぁ……椛のことですか」
「そうそう、思い出した。犬走椛にこないだ人里で会ったんだよ」
へぇー、と興味が無いように射命丸は適当に相槌を付く。周知の事実らしいのだが、どうも彼女達烏天狗と白狼天狗は仲が悪いらしく特に今名前を出した犬走椛は射命丸に顔を合わせる度によく噛み付いているらしいのだ。
「その時、隣にはたてもいたんだよ」
「あのはたてが外に居たのですか……?」
同業の名前に反応した様に射命丸は慧音の顔を見つめる。姫海棠はたて、射命丸と同じく文屋を営んでいるのだが、念写できる程度の能力を持ち合わせているために外を出歩く必要が無い、言わばニートのような天狗なのだ。よって彼女が外に出ていること自体が珍しいのだ。
「その時丁度昼時でな、私ももこたんと歩きながら団子を食していたのだよ。まあ軽く会釈をして別れただけだが、あのはたてが外に出るなどという珍しいことらしくて、もこたんは『蓬莱ニートの仲間か』、って言ってたんだが…。ネタにはなったかね?」
いたずらっ子の様に笑みを浮かべ、慧音はそのまま射命丸の横を通り抜け、里の中へと消えていった。
「はたてが外に…ですか。……それに蓬莱ニートって誰の事でしょうか……?」
***
俺、神崎夕月は今意味のわからない状況に陥っています。
なぜこうなったのか理解出来ない状況が目の前に広がり、頭の上にはきっと疑問符が浮かんでいることでしょう。
目の前にはお初にお目にかかります3人の方がいらっしゃるのですが、1人は犬走椛、もう1人は姫海棠はたて。最後の1人は……いまは紹介しなくてもいいでしょう。
「文が最近あんたの事を話に来るもんだから見に来たけど、普通の人間ジャマイカ?」
「いや、なんでそのネタが使えるんですか?」
「阿求に教えてもらったのよ」
若干のドヤ顔をしながらはたてさんは椛さんを俺の目の前へと突き出す。
「と、言う事でこの子の事任せたから」
「えっ……え?」
そう言うとはたてさんは空へと飛び立ち、後ろにいたもう1人が殺意に満ちた笑みをこちらに向け、言葉を発した。
「あの娘が帰ってくるまで私もいて平気かしら?」
日傘を畳み、風見幽花は有無を言わさず、紅魔館の中へと入っていった。
ゆうかりん。
Σ(゜Д゜)へぇ




