55.5話
短めなので短編扱いを…。
「珍しいものだな」、と上白沢慧音は呟いた。彼女が見た光景とは、小さな二頭身程の上海人形を肩の上に乗せた、アリス・マーガトロイドが人里を訪れていたのだ。目的は、在庫が少なくなってきた紅茶の茶葉を仕入れるためである。
手に幾つかの袋を抱え、嬉しそうな笑みを浮かべて歩くアリスの背後からふと、幼い声が彼女の名を呼んだ。
「あれ?アリスだー」
「…フランじゃない。人里にいるなんて珍しいわね」
「それはアリスもでしょっ」
人里を歩くアリスに声をかけたのは、日傘をさしたフランだった。
「で、フランは何しに?」
「今日はねー、夕月とお散歩してるの」
先ほどのアリスの様な嬉しそうな笑みを浮かべ、フランは隣に構える団子屋を指さした。そこには冥界の主を彷彿とさせんばかり、幸せそうに団子を頬張る夕月の姿があった。
「うまぁ……」
「アリスも一緒に食べる?」
皿に積まれた団子の一つをアリスに差し出す。少しだけ困ったような顔をしながらも、アリスは薄らと笑みを浮かべた。
「じゃあ、私もいただこうかしら?」
***
妖怪の山のとある川の近くに射命丸と大きめのリュックを背負った少女がカメラを手に何かを話し込んでいた。
「しっかし珍しいこともあるもんだね、天下の天狗様が自分の大事なものを壊すだなんて」
「どこか嫌味の含んだ言い方ですねえ…。確かにちょっとしたアクシデントだったのは事実ですがね」
新品同様に輝くカメラを掲げ、射命丸は静かにため息をついた。因みにちょっとしたアクシデント、というのは先日行った紅魔館へのダイナミック入館のことである。
「まあ、傷のほうはある程度直しておいたし…」
「その点に関しては感謝しています」
小さく頭を下げると、射命丸は空へ飛びあがりすぐさま何処かへ飛んで行ってしまった。
「まったく…文があそこまで執着する外来人ってどんな人間なんだろうねぇ?」
不思議そうに首をかしげながら少女は自らの住居を目指して歩を進めた。
また守矢か…




