53話
弾幕ごっこくると思った?ねぇねえ今どんな気持ち?
「おはよう、夕月」
「……え?」
夕月は随分と間抜けな顔をしていた。何故か、と問うならば答えは単純だ。意識を取り戻した時、神崎夕月は白玉楼で咲夜に膝枕をされていたのだった。
そして、「夕月」と呼ばれたことでもある。記憶を取り戻して日は浅いが、気づかれない様に門の前で戦闘したはずなのだ。だのに彼女は、十六夜咲夜は彼が神崎夕月の記憶を取り戻している事に気づいた。
「……何でわかったんですか……?」
観念した様に脱力する夕月。その言葉を聞き、咲夜は当然のように微笑んだ。
「当たり前でしょう?夕の一人称は"自分"、あなたの一人称は"俺"、でしょ?」
「戦闘に夢中で気づかなかったぜ」
「あんたはマスパ撃ってた張本人でしょうが……。まぁ、それだけで分かった咲夜も咲夜よね」
呆れ顔で魔理沙にツッコミをいれる霊夢と、それを微笑みながら眺める幽々子と紫。咲夜の膝の上見ていた夕月は何かがこみ上げてくるのを感じ、隠すように腕を目の辺りに置いた。
「ったくよぉ……、もうちょっとだったと思ったんだけどなぁ……」
「私が招いた客人をそう簡単に帰すと思うかしら?」
華やかな色をした扇子で口元を隠しながら紫はわざとらしく大きく笑った。彼女の笑顔を見て夕月はとある仮説に行き着いた。
例えあの場でバレていなくとも、彼女ならば教えてしまうのではないか、と。
「……で、夕月?」
多少の怒気を孕んだ口調で咲夜は口を開いた。
「幻想郷から出ていこうだなんてどういうつもりかしら?」
「……えっ?」
何故それを知っているのか、そう言いたげなほどに間抜けな顔を浮かべる。
「私達、紫から聞いたのよ。どういうつもりですかって聞いてるのよ」
「……クソババアめ……」
小さな声で悪態を付く。諦めがついたらしく、彼は少しだけ微笑んで口を開いた……。
***
同時刻、紅魔館ではドタバタと小悪魔とレミリアが走り回っていた。
「まったく……、咲夜が居ないだけでこんなに忙しいとはね……!」
何かを用意しているらしく、広間の机の上を急ピッチで片付けているレミリア。
「フラン様やパチュリー様、美鈴様にもお手伝い願いましょうか?」
と、レミリアを心配する様に小悪魔は困った様な表情を浮かべた。
「……いいのよ、咲夜がいない今だからこそ私が動かないとね」
満更でもない、と言うように微笑む。そして思い立ったように口を開いた。
「まぁ……そうね、フラン達には出迎えを頼もうかしら?」
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