5話
神崎夕月が倒れる少し前の話+α
「咲夜―いるー?」
「何でしょうか、お嬢様」
お嬢様が私を呼ぶ。いつも通りに紅茶を飲んで、たわいもない話をして一日を過ごす。そう思っていた。
「今日、昼の十二時頃美鈴の所へ行きなさい。面白いことが待ってるから」
そう言い残すと、お嬢様は部屋へと戻った。一体何なのだろう。
いつもなら「うー☆」と、カリスマをアピールしているお嬢様が珍しく真面目なお顔をしているなんて。
まさか、博麗の巫女が攻めてくるんじゃないでしょうね。いや、何もしていないのに博麗の巫女がやってくるはずないわね。じゃあなにかしら…。
「確か十二時頃、だったわね」
メイド服のポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認する。
10時15分。約二時間後に何かが起こる、またはやってくる、ということであるのは間違いない。もしもの時に備えて今のうちに仕事を終わらせておくべきかしらね。
「あれ?咲夜さんじゃないですか。どうしました?」
「あら、珍しく寝てなかったのね」
こうも珍しいことが続くと嫌な予感しかしないの何故だろう。杞憂だといいんだけどね。
「私だってたまには起きてますよ」
「たまに、じゃ門番として役に立たないでしょうが…」
ハァ、と大きくため息をつく。何故門番が寝るのか私には不思議でしかない。しかも、この駄門番が稀にくる妹様のお怒りを鎮めている、と考えるとさらに違和感を生むだけね。
「あれ?あそこに誰か倒れてませんか?」
「え?どこかしら」
美鈴の指す方向を凝視する。なんとそこには男の人が倒れているではないか。
まさか、これがお嬢様の言っていた面白いことなの…?相変わらずたちの悪い冗談というべきか、なんというべきか…。
「お、拾ってきたようね、咲夜」
「お嬢様の仰せのままですよ」
苦笑いしかできなかった。これのどこが面白いのかと、不思議でしかなかった。
「まぁ、いいわ。空いてる部屋に運んどきなさい。どうせ夕方ごろにはめをさますから」
クスクス、と肩を揺らしながらお嬢様は男の顔を嘗め回すように眺めてから再びお部屋へと戻っていった。
「と、いうわけで美鈴。運んどいてね」
「えー…、わかりましたよぅ…」
どうせ私は雑用にしか…などと呟きながら美鈴は彼を抱えなおし、部屋の中へと入っていった。
「と、いうわけだが、まさかお前の倒れている理由が空腹だったとは滑稽だな」
「笑わないでくださいよ…」
にんまりと笑いながらレミリアは夕月を嘗め回すように見る。
「まったく、私の能力がなかったら今頃お前はのたれ死んでいたぞ」
呆れながら笑う姿は一体どっちの意味なのだろうか。
「で、俺はどうなるんですか?まさか食べられるんですか?」
「ククク…まさかここまで面白いやつだとは。まったく、お前を食べなくては生活ができなくなるような館ではないわ」
「じ、じゃあ俺は…」
「んー、そうだな。それじゃあ…」
小さく唸りながら首をかしげるレミリア。悩むぐらいなら帰らせていただきたい夕月であったが、約数分後思いついた様にレミリアは声を上げた。
「うちで働いてもらおうかな」
と、レミリアは再びにんまりと微笑んだ。
咲夜さん(*´Д`)
あれ?レミリアの口調が前後まったく違うぞ?




