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東方陰影記  作者: 凛
49/70

47話

後は後半のツキミライダーさえ引ければ……

「おやすみー」

「はいはいおやすみなさい」

盃を片手に手を振る幽々子を尻目に襖を閉める。ふぅ、と小さくため息をついた夕月は静かに自室へと入った。

既に妖夢が布団を敷いていてくれたらしく青い布団が部屋の中心に敷かれていた。

「………」

俯いたまま布団の上に腰をかけ、安堵したかのように大きく息を吐いた。

「……まだ、か…」

左の掌を顔の前に持ち上げる。その手は震えていた。



怖いのだ。

妖怪が、あの日自分を食したルーミアだけではなく妖怪すべてにトラウマの様なものを脳内に刷り込まれてしまったのだ。

恩人の幽々子にさえも心のどこかで恐怖心を持ってしまっている。

きっとこの状態で射命丸達にあっても怯えて何も出来ないだろう。先日のルーミアの件でもかなり無理をしていたのだ。

「情けねぇな……」

涙がこみ上げてくるのを感じた。ここまで死が自身を蝕んでいるとはまったく予想外の出来事である。正直に言ってこのままでは当分復帰はできそうにない。


「あらあら、起きてたのね夕月」

「……なんだ紫か」

後ろから聞き覚えのある声がした。夕月として久しぶりに聞く声。

「覚えててもらえてよかったわー」

白々しそうにわざとらしい声が聞こえた。きっと今八雲紫は笑みを浮かべているのだろう。

「何の用だ?」

「顔を見に来ただけよ、安心なさい。食べる気なんてないから」

案の定、彼女は夕月に何が起きているのかわかっていた。だからこそ頃合を図って今出てきたのだ。

「……」

「そんなに警戒しないで欲しいわね。あなたを襲って私にどんな得があるのかしら?」

駄々をこねた子供をあやすように彼女はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「それとも私も怖いのかしら?」

「……!」

「確かにあなたには妖怪を恐れるに相応しい記憶が刷り込まれたわ。でもーーーーーー」

紫はここで言葉を切った。背から声をかけるのではなく、正面から声をかけるために目の前まで移動してきた。正面まで歩を進めると彼女は腰を下ろしニッコリと微笑み話を続けた。

「あなたを好意を持っている人だっているのよ?」

「…………」



***


とある日の朝、誰かがアリス邸のトビラを叩いていた。

「シャンハーイ」

「こんな朝早くから誰か来たの」

少し迷惑そうに顔を歪めながらアリスは玄関の扉を開いた。

「こんなあさはやくからすまない、もこたんをみなかったか?」

「み、見てないわよ……?」

「そうか……」

若干片言になりながら客人は気落ちしたようにため息をついた。

「とりあえず……、お茶でもいかが?」

「あ、ああ。お言葉に甘えさせていただこう」

客人を椅子に座らせ、アリスはお湯を沸かし始めた。

「で、慧音先生は何で妹紅

を探してるのかしら?」

「実はな、昨日の夜キノコを取りに行く、と突然でかけてまだ帰ってきてないんだよ」

「私のところより魔理沙の家に行った方が良かったんじゃないかしら?」

キノコ、と聞いて真っ先に脳裏に浮かんだ者の名前を上げる。

「君の家に来る前に行っては見たんだが昨日は訪れてはいないらしくてね。この森に詳しそうな人を訪ねている次第だよ」

「そう……」

キノコの1人者として扱われている魔理沙のところに行かないとなると一体妹紅はどこに行ったのだろうか、と首をかしげるアリス。と、思いついたようにある者の名を口に出す。

「あ、香霖の所にでも行ってみたらどうかしら?」

「ああ、香霖堂の主人か」

ふむ、と小さく呟き、アリスの入れた紅茶を口に含む。

「もし妹紅に手を出してたらまずは陰部を切り取って、生まれたことを後悔するぐらいひどい目に合わせて……」

「ちょっと待って待って待って、香霖がそんなことできると思う?」

「すまない、みっともないところを見せてしまったようだな」

残っていた紅茶を飲み干し、勢いよく椅子から立ち上がった慧音は扉に手をかけ、アリスの方へと振り返った。

「お茶、ありがとう。私はこのまま香霖堂に向かう」

「えっ?ちょっと、私も行くわ!」

黒いオーラを身にまとった慧音を1人きりにすることが危険だと察したアリスは慧音について行くことを決断した。


***


「んっ、痛い……っ!」

「少し我慢すればすぐに気持ちよくなる」

「……でもっ……んっ、いっ……」


アリスは全身から血の気が引くのを感じた。香霖堂から聞こえてくる声がどう考えてもアレなのだ。恐る恐るとなりの慧音の顔を見てみるが、香霖を殺しかねないほどに怒りを露わにし、血涙を流していた。と、何かが吹っ切れたように思い切り扉を開き、慧音は叫んだ。

「おのれぇぇ香霖んんんん!!貴様もこたんにナニをしているぅぅう!!」



扉を開いた先にいたのは、面倒くさそうに妹紅の腰を揉む香霖の姿であった。

「何って……香霖に腰を揉んでもらっているんだが……?」

「へ?」

空いた口が塞がることはなく、怒りの表情はそのまま羞恥に耐えきれず赤く染まっていった。

「まったく、慧音。君は一体何をしていると思ったんだ?」

理解の追いつかない当事者ふたりは頭の上に疑問符を浮かべたまま恥ずかしがる慧音を見つめていた……。


次回50目なんで番外編かな(白目)

まあ、リクエストがあったら取りたいんですよ。

できれば3月が終わるまでには。。。。。

「このあとめちゃくちゃ」

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