46話
おなか減った…
「あら夕じゃない。おはよう」
「あ、ああ。おはよう」
記憶を取り戻したのにも拘らず、彼、神崎夕月は夕として白玉楼に滞在していた。
理由は至極単純だ。例えば今の今まで暗い性格でともに生活をしていた人が突然正反対の明るい性格に変わったら周りの人がどう思うか、を考えたうえでの決断である。
「夕…月さんでしたっけ?」
「夕で構わないし、今まで通りに接してくれて構わないから」
少し戸惑ったように夕月に話しかける妖夢ではあるが、それも少しすれば慣れるだろうと少しも気にしない夕月であった。
***
一方紅魔館にて。
「で、お姉様。あれはどういうことなの?」
「あれって……一体どうしたのよ?」
何も知らないレミリアはフランの問いにただただ首をかしげるばかりである。そもそもレミリアの能力で視れたものは博麗霊夢と四季映姫が弾幕ごっこをし、それを霧雨魔理沙と射命丸文が遠目で見ている、という景色だけであったのだ。
「咲夜や美鈴に話を聞いたところによるとどうも神崎夕月がらみの話らしわね」
「あら、パチェ。最近動いていることが多いけど大丈夫なのかしら?」
「あなたに用があるからこうやって来てあげているのよ」
動かない大図書館としての通称はどこに行ってしまったのだろうか、と不思議になってしまうほど最近活発になっているパチュリーではあるが、持病の喘息が心配になってしまうレミリアであった。
「話を戻すけど、神崎夕月ってどういうことかしら?」
「どうも先日博麗神社に行ったもの全員が神崎夕月と瓜二つの霊体を目撃しているらしいのよ。閻魔様がその霊体のことを神崎夕月、と呼んでいたらしいからほぼほぼ確定事項な気もするのだけれどね」
ふむ、と何かに納得したかのようにレミリアは頷いた。あらかた最近の咲夜や美鈴の機嫌や今さっきのフランの問いの理由が今ようやくわかったというところだろう。
「お姉様―?もしかして私のこと忘れてるー?」
「そんなに心配しなくても…。大丈夫、忘れてないわよ。フラン、伝言を頼めるかしら?」
「いいけど…誰に?」
「咲夜に伝言よ。時が来たら―――――――って伝えて」
こう言い終わるとニヤリと口を歪めた。外に降り積もる雪を眺めて何度か指を折り曲げてもう一度こう呟いた。
「あと少ししたらすぐ来そうだけどね」
***
「あら、咲夜じゃない」
「珍しいわね、あなたが人里で一人なんて」
「たまには散歩もいいかなってね」
行く当てもなくフラフラと歩く紅白は里の中では随分と目立っていた。博麗霊夢には羞恥心というものはないのだろうか、と苦笑している十六夜咲夜であった。
「久しぶりにやる気を出した射命丸が新聞を売り歩いてたからその様子を見てようとも思ってね」
気恥ずかしそうに頬を掻く霊夢。その様子を見て納得したように咲夜は嬉しそうに微笑んだ。人里の人間がどう思っているかは知らないがきっと、博麗神社に訪れる妖怪たちは彼女のこういうとことに惚れたのだろう、と。
「お団子でも奢ろうかしら?」
「じゃあ落ち込んだ射命丸が帰った来る頃にお願い」
きっと売れ残りを抱えて、肩を落として帰ってくることを予想しているのだろう。あらかたそれが正しいのだろうが。
「霊夢さぁーん…、売れ残っちゃいましたぁ…」
「ほらね?」
「ふふ、じゃあ行きましょうか?」
今更感あるけど、私の話って題名が意味を成してないのだよね。
いっそのこと一話二話にかえようかしら…(´・ω・`)




