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東方陰影記  作者: 凛
45/70

43話

遅れて申し訳ございません。

卒業式に卒業生以外出る必要ないって……。

ノアもネモもでないし、

フロストキマイラも勝てないし。

そんな感じで遅れました。

「……咲夜遅いわね」

「あら?レミィが博麗神社に送った筈じゃなかったかしら?」

「博麗神社で霊夢と閻魔様が弾幕ごっこをしてるのが視えてね」

星が瞬く夜空を見上げながらレミリアは従者の帰りが遅いことを心配していた。

「珍しいわね、レミィが咲夜を心配するなんて」

「咲夜なら大丈夫だとは思うのだけどね。あの日もこんな夜に起きた事だからね……」

あの日、とは神崎夕月がルーミアに食べられた日のことである。レミリアの隣に腰掛けるパチュリーには言わずもがな意味は伝わっていた。

「この運命を操る程度の能力を持っているくせに重要な時に限って発動しないんだから……」

レミリアは自身の手を握っては開いてを繰り返し幾度目かでため息をついてその行動を止めた。

「心配なら迎えに行ったらどうかしら?」

「咲夜がそんな事望むとでも思うのかしら?」

「……咲夜なら喜ぶわよ」

レミリアには聞こえないほどの声でパチュリーは呟いた。咲夜はレミリアが迎えに来たら色々な意味で喜ぶだろう。

そう、色々な意味で。

「そういえば咲夜が居ないとなると美鈴は寝たままじゃないかしら?」

「ああ、それなら大丈夫よ」

門番は居眠りをしていない、と暗に言い切った館主にパチュリーは首をかしげた。

「……?」

「あら?私の言う事が信じられないのかしら?

あなたの大事な小悪魔2人ぐらい信じてあげなさいな」


***


一方そのころ

「フラン様ー、どこまで行くのですかー?」

「んー、昨夜のお迎えー」

門番の仕事を小悪魔2人と一時的に交代された美鈴はフランとともに散歩をしていた。

「咲夜さんって確か博麗神社にでかけてましたよね」

「じゃあ博麗神社に行こー」

ピョンピョンと飛び跳ねるフランと夜道を進む。

「咲夜さん返ってこないとご飯を私が作るハメになりますからねー」

「なら美鈴の作ったマーボーどーふ?だっけ、あれ食べたい」

「むっふっふっふ、激辛ですよぉ?」

「っ!!?」

激辛、という単語を聞きフランは何故か目を輝かせた。好奇心は身を滅ぼすともいうが、それが好奇心なのかはたまた、ただ単にフランは辛いものが得意なのかは疑問なところである。

「あれ?博麗神社ってどっちでしたっけ?」

「もう、美鈴ったらこっちだよ!」

相変わらずの方向音痴(2人目)を発動するところは流石としか言いかねない。フランも呆れたような目で美鈴を見つめていた。

「しかし珍しいですね。夜とはいえここまで静かなのも」

「ミスチーの屋台が来てるとか?」

「それなら霊夢さんや魔理沙さんもこの辺にいそうですがね」

何時もなら昼夜問わず妖精たちが騒いでいたりするこの道も今日に限っては静かであった。

「……不吉なことの前触れじゃ無ければいいんですけどね」

「どうしたの?」

「いえいえなんでもないですよ。ほら早く咲夜さんのところへ行きましょうか」

違和感が心に引っかかる美鈴は少し首をかしげながらも博麗神社へと足を進める。

「どれぐらいかかりますかね?」

「んー。あと10分ぐらいかなー?」

両の指を折り曲げながら考えるフラン。案外近くまで来ていることに美鈴は目を丸くしていた。

「じゃあ急ぎましょうか?」

「うん!早く咲夜迎えに行くー!」


***


「……痛い」

「自分から見てお前が主犯格にしか見えなくてな」

と、魔理沙の頭を蹂躙した拳を振る夕。頭を抑えて悶え苦しむ魔理沙の姿はどこか滑稽であった。

「まったく、あんたらが騒ぐから今日もお賽銭入らなかったじゃない」

「いつも入ってないくせに何を言ってるのかしら?」

「シャンハーイ」と何故か上海人形まで咲夜の意見に賛成したかのように声を上げる。

「あらら、上海にまで言われちゃってるじゃない」

「アリスまで……」

咲夜とアリスの意見は至極真っ当であるからこそ、霊夢は歯がゆさを覚えた。

「いつも入ってなくても今日はいるかもしれないじゃない……」

「そんな事を言ってるから参拝客も来ないんだぜ?」

いつの間にか痛みから復活した魔理沙までもが憎まれ口を叩く。 と、空の賽銭箱に金属が入ったような冷たい音が響いた。

「……これでいいだろ?」

不満そうに顔をしかめ、懐に財布をしまいながら夕が戻ってきた。夕が席を外していたことに誰も気付いていなかったことも驚くべきところなのだろうか……。

「ったく、余計な出費を妖夢になんて説明すればいいかのだろうか……」

静かに漏らした言葉は霊夢の言葉ですぐにかき消された。

「うひょーーっ!ごごごご500円うひょーーっ!」

「あ、壊れた」

奇声を発しながら踊る巫女を見てその場にいるものは口を揃えてこう言った。たった500円でここまで喜べる霊夢は10000円ぐらいの金が入っていたら死ぬのではないのだろうか、そう思えるほどの発狂ぶりである。と、誰かが階段を駆け上がる音が境内にいる者の耳へと届いた。

「さっくやさーん!迎えに来まし……たよ??」

「……なんで霊夢は発狂してるの??」

咲夜を迎えに来た2人はまず賽銭箱の前で発狂している霊夢を見て不思議そうに首をかしげた。

「あら、美鈴。門番の仕事はいいのかしら?」

「ええ、お嬢様からフラン様の面倒を任されましてね。門番はこあさんとここあさんに任せてます」

納得した様にうなずきながら咲夜はフランへと視線を落とす。

「咲夜ー、お腹減ったー」

「はい妹様。早く帰って夕食にしましょうか?」

咲夜のスカートを引っ張るフランはどこから見ても見た目相応の幼女にしか見えなかった。

「……あれ?あの男の人は誰ですか?」

美鈴はふと、こちらに背を向けて立つ夕の存在に気づいた。先程までアリスの膝の上にいたはずの上海人形と何故か見つめあっていた。

「シャンハーイ?」

「……手先が器用って羨ましい事だな、自分は不器用なんだよ」

「シャンハーイ!」

「……練習しろと?」

「いやいや、なんで会話できるんだぜ?」

「あら?魔理沙は出来ないの?」

まるで人形と話せることが当然のように首をかしげるアリス。そして、呆れたようにため息をつく魔理沙はフランと目があった。

「お、フランじゃないか。こっち来いよ」

「魔理沙ー!」

咲夜を迎えに来たはずなのだが何故かなかなか帰らない2人は境内に入ってきた。

「咲夜さん、この人誰ですかね?」

「え、えっ……と……」

美鈴の問に参った様に言葉を濁す咲夜。更に不思議に思った美鈴は夕の顔を覗きに行き、止まった。

「…………え?」

「む、チャイナガールか?何の用だ」

一瞬、されど一瞬時が止まった。ここにいる少女達(若干一名を除く)が触れまいとしてきた話題に美鈴は触れかけていた。

「え、え?ど、どういう……?」

「何故自分の顔を見て驚いている?また神崎夕月うんぬんかんぬんの話題か?」

ピクリ、とフランの頭が動いた。夕に気もくれずに魔理沙と会話をしていたフランはその名を出した夕の顔をみて、目を見開いた。





「例え自分が本当に神崎夕月だったとしてもだ、今の自分には"夕"という名がある。記憶がない以上は神崎夕月である、という扱いは控えてもらいたいな」

夕自ら禁句とも言えるセリフを吐き捨て不機嫌そうに境内から出ていった。

その後、美鈴とフランへの事情説明に小一時間ほど費やしたらしい……。

え?言い訳になってないって?

…………ごめんなさい

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