41話
待たせたくせに短い?
え?
待ってすらない…だと
暗い。
また夢を見ているような、夢ではなく現実のような。
そんな曖昧な感覚の中に、自分と自分の姿をしたダレカがそこにはいた。
「よお、また来たのか」
「…来たくて来たわけではない」
蔑む様に笑うダレカ。
「なんだその不満そうな眼は」
「気づいてないのか?お前がここに来る条件には…よ」
条件なんてあるのだろうか、と首をかしげる。そもそも気づいたときにはもう
ここにいるわけであるからして条件に気付くもありゃしないのだ。
「くっ、くはははははっ、そりゃそうだな」
腹を抱えて小刻みに揺れる。が、笑ってはいなかった。無理矢理笑おうとして失敗した。そんな感じ。
「まあ―――、一つヒントをくれてやろう。お前が忘れていることについて、だ」
仕方ない、と言わんばかりに大きなため息を吐きつつこんなことを言う。
「お前は俺だが、俺はお前ではない。お前は俺を忘れていて、お前は思い出すつもりなど一切ない。気づけばここにいる、というわけだ」
「まったくもって理解しがたいのだが?」
「理解などしなくていい。理解できなくて当然のことだ」
矛盾が矛盾を語るような、意味が通じていない話が意味を通じてない話をつづける様な。
理解が乏しいのか、はたまたダレカの思考が一個上を超えているのかのどちらかだ。
「理解は後にしろ、どうせする前にお前はいなくなるからな」
「どういう意味だ…?」
綺麗な曲線へと目を歪めて微笑んだ。凶気に満ちたその眼が、変わらぬテンポで繰り返す呼吸が、その体全体が違和感そのものを体に纏わせていた。
***
「起きないわね…」
「お前どうやってここまで運んできたんだよ…」
力なく倒れる夕の体の周りを取り囲む少女たち。一人は頬を突き、一人は頭を撫で、一人は意味も無くカメラのシャッターを切り続けていた。
「射命丸?」
「久しぶりの夕月さん…久しぶりの夕月さん…久しぶりの夕月さん…グヘヘ」
これぞまさにトリップ、というものではないだろうか。と、ここにいるものの全員の気持ちが珍しく一致した。
「で、そこでしょげてる映姫様はどうするつもりなの?」
「…仕方ないから今回は見送りますよ…」
なぜしょげているのかは後日触れるとして、肩を落としながら階段を下っていく閻魔の姿はどこか滑稽で小さく静かな笑いを呼んでいた…。
…ごめんなさい




