40話
今回はなんか適当く…
振り下ろされた鎌は、神崎夕月の体を切り裂き―――――はしなかった。
「殺す、と宣言してる奴の攻撃を受けると思うか?」
「貴方にしろ、あそこの博麗の巫女にしろ、つくづく私の勘に触るのは狙っているのですかね…?」
鎌を持ち上げ、再度狙いを定め鎌を構える映姫。当然の如く夕は回避行動の待機をする。
振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。振り下ろし、避ける。
幾度となく繰り返される同じ状況に、映姫は焦りを感じていた。
(…何故、何故私の攻撃がかすりもしないの…!?)
実の所、映姫の攻撃は寸分の狂いもなく、夕のもとへと振り下ろされ体を切断しているはずなのだが、何故か夕はその攻撃を紙一重で避け続けている。映姫がほぼほぼ全力で振り下ろしているはずの鎌は、武道の心得もない夕に避けられるはずのないものであることは傍から見ているものには明白にわかる答えであった。
「なあ…夕月って紅魔館にいるときに美鈴にでも拳法でも習ってたのか?」
「…いいえ、私の記憶の中ではそんなことをしていたことはないはずよ。射命丸は?」
「あややややや、実に情けない話ですがそんなことは全く」
下の縁側でも、不思議そうに少女たちは首をかしげていた。
「神崎夕月、あなた…何故私の攻撃がよけられるのですか…っ!?」
疑問に耐え切れなくなったのであろう。ついに彼女はこう質問を投げかけた。
「…何で、か。…妖夢の剣速に比べたらずいぶんと遅いからか…?」
と不思議そうな顔で逆に映姫を見つめる夕。よくよく思い出してみるが、夕もさほど妖夢の演習を眺めていたわけではない。
「んー…なんでだろうな…?」
***
考えてみる。
何故自分が閻魔の攻撃をここまで避けられるのかを。
特に何もやってはいない。
ただ、鎌の攻撃を受けたくないと思っただけ。
そう。
思っただけ。
これ以上怪我をしたくないと思っただけ。
…?
これ以上…って何だ?
怪我は死んでから一度も負ってないはず。
そもそも、霊体なのに怪我なんて負うのか…?
何でこの鎌を…いや、他人の攻撃を受けたくないと思うことができたのか。
ここが一番の問題だ。
自身の考えが正しいのならば怪我を負うことはなかったはず。
だけど、他人の攻撃は受けたくない。
―――――何故?
怖い。
怖い。
怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
何かが怖い。
他人が怖い。
お前が怖い。
自分が怖い。
―――――――一体、自分は何者なんだ…?
***
「…?」
神崎夕月の動きが止まった?
ぶつぶつと何かを呟き続ける神崎に違和感を覚えた私は構えていた鎌をおろし、彼を見る。
不意に彼は顔をあげ、驚いたように声を上げた。
「四季映姫……!」
私の名を口走り、周りを見る。
自身が宙に浮いていることに気付くと、急に地に落下した。
何かに怯えたような目でガタガタと震え、彼は一心不乱に神社から飛び出していった。
私を含め、この場にいるもの全員がその光景を呆然と眺めていた。
意識がはっきりとしたのは、彼が気絶した状態でアリスが神社に連れ戻されたおよそ五分後のことであった。
ごめんなさい。
ただただごめんなさい。




