34話
朝雪が積もってて驚きましたよ。
「おや、咲夜さんではありませんか」
「あら射命丸じゃないの」
日が暮れ始めて少し。暇つぶしに空を飛んでいた射命丸は1人でトボトボと歩くへんた…メイド長を見つけた。
「レミリアさんはいないみたいですね」
「実はアリスと先に紅魔館に帰ったのよ」
珍しいですね、と射命丸は目を丸くした。このメイド長が他者にお嬢様を送らせることなどしないと思っていた故のこと。
が、それならば彼女が嫉妬の炎に燃えていてもおかしくはないのだが、そのような素振りはほとんど見せず、若干の落ち込みだけを背に見せていた。
「……あの事、後悔してますか?」
何かを察したかのように射命丸はこう咲夜に問いかけた。驚いたように目を広げ、咲夜は一呼吸おいて、
「してないと言ったら嘘になるわね」
と答えた。
「でもね、いつまでもクヨクヨしてたって夕月は帰ってこないし、お嬢様や皆にも迷惑をかけちゃうからね…」
紅く染まる空を見上げ咲夜は呟いた。
「そうですか…。しかし、いなくなったらなったで寂しいものですよ」
「そうね、少し前の紅魔館に戻っただけなのになにか物足りないのよね。そういえば射命丸。貴方にしては粘着気味じゃないかしら?」
ふと疑問に思った事を口に出す。長い寿命を持つ天狗ならばこのような別れも幾度かはあったのではないか、と咲夜は首をかしげた。
「あややや、そう見えてしまっていますかねぇ?」
「敢えて言うなら傍目恋する少女ってところかしらね」
からかう様に冗談交じりで言う。が、
「い、いいえいえ!そんなことあるはずがごございません!!」
「あら?そんな必死だと図星ってとこなのかしら?」
頬を紅潮させ、ジタバタと手を振り回す射命丸に妖しく微笑む咲夜。
「でも、たしかに夕月さんと一緒にいた時は楽しかったですよ」
「いなくなってわかるってやつね」
秋風に揺れる木々の隙間に花咲かす少女2人。
***
「あれ?あなたは誰ですか?」
「……酷いな」
早朝、珍しく妖夢に顔を合わせた夕は開口一番こう聞かれた。
「その声…、夕さんですか…?」
「そうだが……?」
ありえない、と言わんばかりに人の顔をまじまじと見つめる。
見つめる……?と夕は違和感を覚え、フードを引っ張ろうとした。が、その手のひらは空を掴み、幾度か手を握ったり開いたりして、口を開いた。
「……着忘れた」
何故か肌身離さずきていたコートを着忘れる、という初歩的なミスを犯し、素顔を晒すという事態に陥ってしまった。
「着てくる」
「いいえ、そのままでいてください。そのままの方がいいですよ」
コートを着用することを拒否する妖夢。何がいいのだろうか、と悩む夕。と妖夢は服のポケットから刀のつばを取り出し、その両端に紐をくくりつけ、
「これ使ってください」
「あ、ああ。よくこんなものを持っていたな」
眼帯代わりに差し出した。
意外な程にしっくり来たことに驚きながらも夕は刀のつばを持っていたことを訪ねた。
「それは……たまたまです。これからも白玉楼のなかでコートを着ることは控えた方がいいですよ?」
「何故だ?」
「……」
黙ったまま、夕の後ろを指す妖夢。
「これが夕?案外若かったのねー」
寝ぼけ眼の幽々子がそこに立っていた。
その後、幽々子の命令によってコートが捨てられたのは言うまでもない。
番外編チックなものも書きたいので内容募集です。
ガチゆりとかガチホモは書けないんでご了承くださいませ☆




