33話
あー、眠い
夢を見た。
いや、夢を見ている。現在進行形で、だ。
夢の中で自身が夢を見ていると気付く、いわば白昼夢の様な状況になっている。
暗い闇の中で1人、訳も無く立ち尽くしている自分を眺めている自分がいる、こんな夢。何故こんな夢を見ているのかわからない。が、"夕"と名付けられたはずの自分を見ているはずなのに、自分と全く同じ顔、同じ服装、欠けた左腕と右目。ここまでそっくりな容姿をしているはずなのにどうも自分と同じには見えない。ましてや自分が見ている自分は何故かなにかに怯えていた。瞳から光は消え、無いはずの左腕をぼんやりと眺めては涙を流していた。
「…なんでこんな事になったんだろうな」
「記憶が無い人間にそれを聞くか?」
まさに自問自答。自分に問い、自分で答える。これが夢でなければ、目の前に『自分』がいなければただの痛い人だろう。が、これは違う意味での自問自答なのだろう。これは自分であって自分ではない、と夕は考えている。
「本当に記憶がないのか?」
記憶が無い、と言った夕に自分はこう問いかけてきた。
「当たり前だろう、覚えていたらもう少し人としてなっていただろうしな」
「まあ、今はそれでいいか」
自分は諦めの視線を夕に向けた。自分に呆れられていると思うとどうも腑に落ちない。
「だがこれだけは覚えておけよ、俺。俺はお前だ、そしてお前はーーーー」
***
「寝ている間までフード被ったままって息苦しくないの?」
「……何故人が寝ている所を見ている」
「だって唸ってたのよ?」
どんな夢を見ていたのかはよく覚えていないが、悪夢ではなかったはず、と夕は首をかしげた。
「そのフード取ってしまうかしらね」
「やめてくれ」
***
夕が去った後の博麗神社~
「珍しいわね、博麗神社に参拝客なんて」
「あらあら、色ボケメイドにカリスマ(笑)まで来るとは暇なのね」
肩をすくめ悪態をつく霊夢。
魔理沙とアリスに留まらずこの二人まで来ると騒ぎになりかねない、というよりも回避はできないに等しいだろう。
「霊夢?お嬢様と私に詫びなさい」
「はっ!?勝手に来た色ボケメイド共になんで頭を下げなきゃいけないのよ」
当の本人がこれではこのまま乱闘に発展しかねない、と魔理沙は二人の間に飛び込み、微笑んだ。
「まったく、喧嘩するならこれだろ?」
ミニ八卦路を右手に抱える。光がともり始めたミニ八卦路を見て、2人は空へと飛び上がった。
「魔理沙!あんた神社にむけてマスパぶちかましたら殺すわよ!?」
「だぁ~、うるせえんだよ!誰が好き好んでボロ神社なんぞにマスパ打ち込むかっての!こんなボロ神社なんかマスパ撃たなくてもすぐに潰れるっつーの!」
「お嬢様ー、危ないですからアリスの隣に行っててくださいねー」
「あ?咲夜危ないのはあんたよ!あー、面倒臭いいいい!二人まとめてぶっ飛ばしてあげるから魔理沙も上がってきなさい!」
「レミリア、あなたも大変ね」
「うー……」
空に描かれる幾何学模様の弾幕を呆れたように眺めながら、アリスはため息をついた。
あと五話ぐらい書いたら異変書こう。




