30話
題名が意味不明です。
(・ω<)★
「あら、文じゃない。そんなに暗い顔してどうしたのよ」
「……」
夕月かルーミアに食べられてから数日後、射命丸は博麗神社に訪れていた。無論霊夢も夕月がどうなったのかを知っていた。
「所詮は外来人ってところね」
縁側で煎餅を頬張り、茶を啜りながらこう言った。
「何故……助けに来てくれなかったのですか?」
「何故って、私は幻想郷の住民が危機にあったなら助けに行くけど、彼は所詮外来人。私が助けに行く義理は無いわ」
彼女は神崎を助ける気などさらさらない。目の前で襲われていたならば目覚めが悪い、と助けには行ったのではあろうが彼女はあくまでも博麗の巫女としての役目ではない、こう言ったのだ。
「確かに、確かに彼は外の人間ですが……少しぐらいは……っ」
「じゃあ何で貴女が助けに行かなかったの?」
「っ!」
膝元に抱えていた煎餅と湯呑を降ろし、霊夢は箒を持って立ち上がった。
「自称最速の貴女が間に合わなかったものが私に間に合うわけないでしょ」
射命丸の前に立ち、霊夢は冷めた瞳で彼女を見下ろした。
「し、しかし……っ!」
が、射命丸の二の句は口から出ることはなかった。霊夢が持っていた箒が喉元に当てられ、若干の殺気が彼女の口を閉ざしたのだ。
「いい加減にしなさい。過ぎたことを悔やんでいても何も変わらないの。さっさと立ち直るなりしていつものあんたに戻りなさい」
喉元の箒をどかし、霊夢は射命丸に背を向けこう続ける。
「まあ、お盆にでも帰ってくるんじゃないかしらね。気長に待ってなさいよ」
「…………はいっ!」
***
「起きたかい?」
「…………」
口を動かそうとしてみるが、自身に口がないことに気づいた。なぜ口がないのだろうか、と考えてみようとはするが酷い痛みに襲われるだけであった。
「しかし酷い体だねぇ。随分と酷い殺され方をしたらしいじゃないか。まさか三途の川を渡るのが自分の目玉だけなんて思いもしなかったろう」
目玉だけ、か。道理で口を動かそうにも口がない訳か、と納得することが出来た。しかし何故目玉だけでやり取り、というか思考判断が出来るのかかなり不思議なものである。
「まあ、魂ってやつがお前の遺された肉片をかたどってるって所じゃないのかな」
すなわち、自分は目玉だけが遺るような無残な殺され方をしたということか。自分が何をしたかよくわからないがそんな殺され方をされるほど憎まれていたのか心配になる。
「そのままの体じゃ不便だろうがもう少し待っててね。あたいは魂を閻魔様の所に連れていくだけの仕事だからね」
そう言い、赤髪の女性は苦笑いをした。
閻魔様、か。このまま地獄にでも落としてくれるのだろうか。何故かわからないがその方が助かる……きがする。
「さて、もう二度と会うことは望まないけど、あたいの名前を冥土の土産にしとくといいよ。あたいの名前は小野塚小町、しがない死神さ」
小町は船を停めると、目玉を持ち上げ机の上にそっと置いた。
どうやらここが閻魔の部屋らしい。無い記憶の中にもこんな感覚に襲われたことはないはずだ。
「……有罪、にしたいところですがこのまま冥界へ向かってください」
予想外の速さで判決が下った。しかし、有罪にしたいとは。やはり自分は犯罪者なのだろうかと不思議になる。
「ですが、そのままの体じゃ不便でしょう。記憶が無いらしいですが、貴方の記憶に残る最後の体で冥界に行けるよう工面しておきます」
閻魔様はそう言うと目玉を持ち上げ、放り投げた。
視界に映った閻魔様の容姿は…………幼女?
「おだまりなさいっ!まだ成長過程なだけです!」
あ、はい。
***
「妖夢ー、お腹がすいたわー」
「先ほど昼食をお召し上がったばかりでしょう」
妖夢、と呼ばれた少女はため息をついた。肩元に白い人玉のような半透明のものが浮いているところを見ると彼女もまた普通の人間ではないらしい。
「四季様から先ほどご連絡がありましたよ、幽々子様。冥界に一人の人間を送るからうちで預かって欲しいそうですよ」
「映姫ちゃんったらまた面倒なことを押し付けるんだから……。妖夢、エネルギー補給よ、ご飯を持ってきなさい!」
右手の人差し指を斜め上に上げ決めポーズのようなものをとる。どうしても食事がしたいらしい。妖夢は再びため息をついた。
「わかりました、幽々子様」
諦めたように立ち上がり襖の扉を開け、妖夢は驚き飛び跳ねた。
「ゆゆゆゆゆ幽々子様!!西行妖の前に何か変なコートと帽子の男が倒れています!」
「あらあらそれが映姫ちゃんの言ってた子じゃないかしら?……変なコートって面白い事言うわねー。顔見えないじゃない」
扇子で口元を隠す幽々子を見て、妖夢は落ち着きを取り戻した……多分。
「それではあの方を部屋に運びますからお食事は少々待ってて下さいね」
そう言い残すと、妖夢は倒れていた男を持ち上げ、奥へとよろめきながら歩いていった。
「で、紫。あの子は一体どうしてここに来たのかしら?」
「あら気づいていたのねー」
幽々子の声に反応したかのようにスキマが開き、中から八雲紫が出てくる。
「でもねー、幽々子。それは当分内緒よ」
ニッコリと微笑み、八雲紫はもう一つ隙間を開き、酒瓶を取り出した。
「少し早いけど、飲まない?」
「それならそうと早く連絡してよね。妖夢ー!おつまみ作ってねー!」
少し大きめの声を出し、酒のつまみを要求する。
いつの間にか汲まれた酒の入ったグラスを持ち、2人はグラスを合わせた。
***
「ここは何処だろうか」
先ほど部屋に運び込まれた男が目を覚ました開口一番であった。
自身の状態を理解しようと一時的にコートと帽子を取り、部屋に置かれた鏡を見る。
右目は欠落し、左腕は肩から先がない。閻魔様が言っていたがこれが記憶に残った最後の姿だと思うと気味が悪い。
しかし男の記憶は無く、何故こんな姿になったのかはわからないままであった…………。
次こそは、次こそは紅魔館を……(フラグ)




