女騎士
それから一年。
俺はほぼ毎日剣を作り販売してという事を繰り返していた。
変わったことと言えば剣だけではなく包丁も作るようになったということ。
またサハルーン(俺が召喚された街)だけでは供給過多になったため、主にほかの街へ行商をしている商人に卸してほかの街へも売っている。
もちろん売上金を現金で持っておくのは危ないので、商業ギルドに口座を作った。年間安くない会費がかかるが、これは必要経費だろう。盗賊にでも奪われてしまっては元も子もない。
俺の剣はこのサハルーンと周辺の町、村(小さいものも含めて8こある)にはほぼ流通したらしい。
元からあった鍛冶屋はおおよそ半分が潰れ、残り半分も景気は火の車だろう。鍛冶関係者には死ぬほど恨まれている気がする。いや恨まれている。
ちなみに、これだけ恨みを買っても刺されないのは、後ろに控えているゴンザレスくんとシューマッハくんのおかげだ。
冒険者ギルドを通して紹介してもらったのだが、名前からしてもう強い。そして見た目も超がつくほどマッチョだ。この世界の一般的な成人男性より頭2つ分は、飛び抜けている
まあそんな訳でこれまで無事生きてこられた。
宿のグレードもパワーアップして、この街一番のセキュリティを誇る所に変わっている。毎朝宿までゴンザレスくんとシューマッハくんが迎に来てくれて1日が始まる。
そ、し、て、
この一年での成果は....
なんと金貨1万枚に達しようとしている。
だがこの街で儲けるのはきつくなってきている。そろそろ潮時だろう。
剣の販売で儲けるのは今週でおしまいにしようと思う。ついに計画が第二phaseに移行する。
そんなことを考えながらいつもどおりゴンザレスくんとシューマッハくんを控えさせ、バザーの準備を始める。
すると突然剣を突きつけられた。
「おい、そこのお前」
目の前には全身鎧の騎士が立っている。だが以前街中で見た騎士に比べ線が細く、身長も低い
相手は兜越しで表情は伺えない。しかし透き通った声は相手が女性であることを確信させた。
「下がってくだせえ」
ゴンザレスくんが俺を庇うように前に出る。
それと同時にシューマッハくんも腰にさした剣を抜き臨戦態勢に入る。
「何か用ですか?騎士殿。」
俺は逃げ出したくなる心を抑えながら問う。
「その剣を売ってもらいたい。」
騎士はそう答えた。
....いやふつーに買えよ。なんで剣突きつけながら買おうとしてんの?完全に脅しにかかってるじゃん。俺はそう思いつつも気丈に振舞う。
「顔も見せないような奴には売れない」
そう言うと騎士はしばらく考えているのかじっとしている。しばらく経って何かを決めたのか剣をしまい兜を取った。
「悪かった。私はアメリアと言う。これで売って うひゃあああ」
ふわっと兜からサラサラの金髪が溢れる。
兜を取った女騎士はものすごい美人だった。
アイドル級だいやそれ以上かもしれない。
華麗な唇に、魅惑的な瞳。鼻筋はすっと通っており、全体的には欧州人のような西洋風の顔立ちをしている。
あまりの美しさと、ここ一年まともな女の子にあっていなかったせいでついに俺の理性の限界を超えた。
気づいたら俺はその女騎士の胸に飛び込んでいた。
もちろん鎧を着ているため、硬い。
急な出来事のせいでフリーズしている。よく見ると女騎士の顔は真っ赤に染まっていた。
「あわわわ」
もう少し堪能させてもらおう。
すりすり
「ぶ、ぶ無礼もの!早くはなさんか!!
一体なんなんだ貴様は!」
そう言って俺を、引きはがす。
俺は女騎士の顔を見る。微笑んでみる。
すごい睨まれた。視線だけて人を殺せそうだ。ドキドキしてきた(笑)
「え~と。剣が欲しいんでしたっけ?」
俺は何事もなかったかのように商売を再開する
「お、おい。その前に何かないのか?」
「何かって何です?(ニコッ)」
無論分かっているがやってしまったもんはしょうがない。ここは知らぬ存ぜぬで押し通そう。
「その....ほら、あれだ!謝罪とか....求婚とかあるだろ」
もじもじとしながら答える。
最後の方は声が小さくて聞き取れなかった。
「いったい何のことでしょうか?
実はここ数分の記憶が飛んでいまして....(笑)」
「そんなわけあるかーーーーーーーーー」
女騎士の叫び声が朝のバザー広場にこだました。
その後女騎士は剣を買って帰っていきましたとさ。