金稼ぎ1
金だ
金が必要だ
昨日一晩考えて出した結論だ。
俺の能力は鍛冶魔法。どう見ても戦闘向きではない。ならば力を手にするには金が必要だ。金があれば人を動かし、情報を集め、武器を購入することもできる。これを力と呼ばずしてなんと呼ぶのか
何にしてもまずは先立つ物が必要だ。そう思った俺はまず荷馬車を売り払った。
後々後悔するかもしれないなと一瞬思ったが良く考えたら俺馬乗れなかったよ。
馬は需要があるのか結構いい値段で売れた。馬車とセットで1200ルピ 金貨1枚と銀貨2枚だった。
俺はその金を持って鉱石屋に来た。
今日はちゃんと店番がいるようだ。おばちゃんが店の奥で金を数えている。
「すいません」
「....」
どうやら金勘定に夢中で気づいていないらしい。マジでめんどくさい。
「す・い・ま・せーん!」
「うわあああああ、て脅かすんじゃないよ!」
驚いたのはこっちだよ!
「この金貨で買えるだけ鉄鉱石が欲しいんだけど」
金貨を出した途端先ほどの憂鬱な表情は一気に消え去り、目を輝かせだした。よだれも垂れている。
俺が少しずつ後ずさるとカウンターから身を乗り出してきて....
落ちた。
なんだかちょろそうだ。完全に目が$マークになっている。
「交渉といこうか
この金貨一枚でどれだけの鉄塔石が買える?」
「....半分だ、この店にある量の半分買える」
「ほう?この鉄鉱石の含有量はどれだけだ?」
「さあ、あたしにゃ分からないね」
「おいおいそれじゃあ買えないな」
「...まった。60%だ」
「我この成分を知らんと欲す(小声)」
俺は修得したばかりの魔法を発動させる。
これは鉱石などの物質の構成要素を知ることができる鍛冶魔法だ。
===========================
鉄鉱石 : 品質低(含有量40%)
===========================
「おいおいそりゃ盛りすぎだろ
この店の鉱石はせいぜい30%ってところじゃないか」
実際より低く言ってやる。相手が先に仕掛けてきたのだ、文句はないだろう
「そんなことは....」
「品質盛ってんのはバレてんだよ」
「チッ 素人じゃなかったか
だが30は低すぎだ。少なくとも40はあるぞ」
「それは口止め料込みでか?」
「しゃーないね」
「おおそうか、わりぃな」
鉄鉱石大量にゲットだ。
「あ、あと後片付けも頼むわ」
俺はそう言って鉄鉱石から鉄を取り出していく。最終的に1tほどの鉄を手に入れた。かなりお買い得だった。
重過ぎて一回では運べないため金塊の形にして何回かに分けて宿屋に運ぶ。これが金塊だったらいいのに....
さて、敵情視察といきますか
帰りに鍛冶屋に寄っていく。
もちろん見本の剣を買うためだ。
鍛冶屋に入った瞬間もわっとした熱気が俺を襲った。暑い。サウナみたいだ。
「すいませーん。剣が欲しいんですが」
「おう坊主いくら持ってんだ?」
所持金を聞いてくる。お金を持っていないと思われているのだろうか。
心外だ。今の俺は銀貨2枚も持ってんだぞ。
なめんじゃねぇ
「銀貨2枚だ(ドヤッ)」
「おいおい、そんなんじゃナイフくらいしか売れないぜ」
な、なんだと…
「えっと....いくらくらいするのでしょうか?」
「まあ最低銀貨5枚は必要だな。まあこれは鋳造品の値段だがな。鍛造品だと金貨4枚はする。」
高い。だがこれはこれでオーケーだ。なんてったって俺のスキルは鍛冶魔法なんだからな。
「そ、そうですか。またきます」
そう言って俺は店を出た。
来るわけないけどね!!
店に入った時にだいたいの剣の長さや、厚さは記憶している。
俺は早速宿に帰り増産を開始する事にした。
帰る途中で木炭を買うことも忘れない。
この世界の剣は主に二種類の方法で作られている。ひとつはお馴染み鍛造である。鍛造とは、 金属をハンマー等で叩いて圧力をかけ、金属内部の空隙をつぶし、結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度を高めると共に目的の形状に成形する方法である。この作業の間に焼入れを行う事によって鉄に微量の炭素が混じり鋼に変化する。よってかなりの強度がある
もう一つは鋳造である。鉄を型に流し込んで整形するため大量生産が可能だが焼入れを行っていないため、材質はただの鉄であり、あまり強度がない。
この世界では焼入れを行うことによって強度がますということは、広く知られているがそれがどのような原因で強度がますのかは分かっていない。鉄に炭素を加えることによって鋼になるということは知られていないのだ。
俺の魔法、鍛冶魔法の一つにはには材料の合成がある。これさえ使えば鉄を鋼に変えることなんて訳ない。
確か鋼の炭素含有量は0.86%くらいだったはずだ。木炭と鉄塊を用意して呪文を唱える。
「我、魔力を糧としこれらを一つになさん」
すると鉄塊が淡く光だし炭素が消えたそして光が収まると....
見た目の変化はなかった。
本当に鋼になっているのかは謎だ。
心配なので分析の魔法を唱える
「我、この成分を知らんと欲す」
====================
構成要素 : 鋼
====================
頭の中に直接浮かんでくる。
どうやら鋼で間違いないようだ。
「我、魔力捧げ形状を変化させん」
形状変化の魔法で剣の形に整形していく。
やがてひと振りの剣が完成した。
窓から差し込む光を反射して輝いている。
装飾はなくシンプルな一品ではあるものの、切断できないものはないと言いたげな見事な姿だ。ちなみ持ち手は普通、木で作るものだが、無論俺にはそんな技術はないので全て鋼でできている。
剣に分析の魔法を掛けてみる。
「我、この成分を知らんと欲す」
================================
名称 : 鋼の剣(良質)
================================
問題なさそうだ。
俺はその後同じものを20本ほど製作した。