表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/35

プロローグ

こちらは以前投稿した『最弱テイマー』のリメイク版となります。

 ――冷たい。


 地べたに這いつくばったまま、容赦なく打ち付けてくる大粒の雨を全身で感じている。

 ぬかるんだ土は顔の半分を覆い、地を掻いた指先、爪の間にいやらしく入り込んできた。

 耳に溜まる雨水。それをどうにかしようとする気力も見当たらず、しかし、口に入り込んだそれは、久しぶりの水分として甘く身体に染み渡っていく。


(今更、多少の水を飲んだところで……)


 もう、どれくらい食事らしい食事を取っていなかったか。この幼い身体では、出来ることが限られ過ぎていて。

 いくら『知識』があったところで、所詮はただの子供の身体。

 むしろ、危険だらけの街の外でよくまぁここまで生き延びてきたものだ。最後が餓死なら、まだ幸せな方ではないだろうか。

 空腹からくる吐き気も、腹に穴が空くような飢餓感も、とうの昔に通り過ぎていった。今は、ただひたすらに溶けていくような脱力が全身を支配しているだけ。


 涙は出ない。


 何故こんな目にあってしまったのかなんて、考えるだけ無駄だと思考から弾き出す。


(あぁー……短い人生だったぜ)


 この世への捨て台詞。

 口に出したはずのそれは、口が動いただけで音にはならなかった。

 やがて、瞼が静かに降りてくる。それに逆らう気も今更起きず、僕はもう一度この世へのさようならを頭の中で済ませると、暗闇へと意識を投げ出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ