表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/45

9)家族 知人


 『クララが立った!』くらいの衝撃です。

 ところでクララって誰ですか。動物? 人名ですか。それともペットの??

 いえ、そもそもクララではなくウララだったのかもしれません。

 記憶喪失ってたちが悪いです。だってそんな言葉や知識が出てきても、なぜなのか自分で理解できませんから。


(私がブレたんじゃなく、少女が動いた!!!)

 それにしても、びっくりです。皆さんNEWSです。少女が反応したんですよ。

 あの声に! お知り合いですか。もしかして?

 誰も私の問いに答えてくれるはずもなく。只今、傍観中なんです。



 ところでここでこれまでのことに訂正及び、追加情報があります。

 まずはこの二人部屋で少女と同室の女性ですが、なんと少女のお母さんでした。

 そうですよね。こんなことがあったのに、少女の身内を見かけなかった理由がわかりました。

 警備上の事情とかではなく、すでにココにいたからだったんです。

 そして彼女の夫(=少女の父)は海外出張ではなく海外赴任中でした。


 もともとは家族三人でお父さんの赴任先である国にいっしょに暮らしていたそうなんです。二年近くになるようですよ。

 そんな中、日本へみんなで一時帰還したときに妻(=少女の母)の妊娠がわかり。彼はそのまま妻と娘を日本において単身、任地に戻っていたそうです。

 ですが今回、こんな事件ことに妻子が遭い。何とか仕事との折り合いをつけ、会社の協力もあり帰国のめどが立ったようでもうすぐ日本へ!

 ああ、でも次の転勤先は日本ではなくヨーロッパのどこか治安のいいところになるそうです。その次こそは日本へ帰国できそうとのことですが・・・・・・。

 サラリーマンも大変ですね。本当。

 それでも、よかった。と私だって思いました。




 病室の中で静かに過ごす少女の姿はとても痛々しかった。

 幼い身体を白い包帯が覆い。機械的な電子音が満ちる空間。

 まるで、誰もいないようなさびしい空間だった。

 同じ部屋にいるのに私には誰も気が付かない。

 同じ身体の中にいるはずなのに少女さえ、私に気が付いているかもわからない。

 幽霊という意思ものも儚い幻のようで。私がここにいることすら、誰も知らず。すべてが気のせいだというように。

 感情の消えた顔。動くことなくただ佇む少女の様子は変わらない。時間が流れていることすら疑いたくなるほど。無機質な空間だった。


 身体が欲しているのか、ともに入院している女性(母)も今は微睡の中だ。

 表情はみえないが、やはり心細いのか少女は母の片割れから動かない。

 呼吸音も寝息すら、機械音に紛れ聞こえない。

 生き物の気配がそがれた部屋。

 香りを控えるためなのか、花も飾られず色彩も消えた病室。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ