8)鍛錬と特訓
でもこれじゃせっかくの目撃者とコンタクトが取れません。
さて、どうすれば???
ここは幽霊な私が手を振ってみるべきでしょうか?
でも少女の中にいる以上。多少ダブっていても基本、動けませんよ。
とりあえず。ぴらぴらと半透明な手を振ってみました。
『悪意はないので、退治しないでね』
というメッセージを込めてみたんですが、伝わったでしょうか。
こちらをジッと見ていた彼?は、一度少女と私を別々に確認するように視線を流し、立ち去ってしまいました。ああっ、また会えますかね。
せめて、彼なのか彼女なのか知りたかったなぁー。なんて思いますが、のんきすぎますか。
だって。追いかけたり、声をかけるなんて直接的行動はできません。
少女は動いてくれませんから。はい。
でももし私だけでも動け、後を単身で追いかけたとしても。幽霊が自分を、もしくは誰かをゆらり、ふらり。と追いかけてたら怖くありませんか。そんなの目撃者がいなくてもリアルホラーですよ。
いくら場所が病院だったって、出来過ぎです。お化け屋敷に涼みに行く必要なんてありせん。
私だったらそんなこと嫌です。怖いですもん!
よし、まずはレッスンの続きを再開します!
くっくくく。
きっつつつ。
暫くそんなことをしていると何か音、というか声が聞こえた気がしました。
はい。病室の入り口から誰かの声がします。が、こんなところに知り合いはいません。
それに病室は他人さまの監視下です。
「さっちゃん!」
どうやら誰かを呼んでいるみたいです。
と言っても記憶喪失ですから私。幽霊も記憶喪失になるなんて面白い事実ですよ。
つまり私を呼んでいるわけじゃではありません。気のせいですから、まだまだ鍛錬を続けなければ!
「さっちゃん。サツキちゃん!」
お~い。呼ばれたら返事が必要ですよ~。
なんて完全に他人事としての~んと聞き流してたら、病室の外が急に騒がしくなりました。
おや、捕り物でも始まりますか。
チャンバラ最高!
時代劇は結構好きです。記憶にはありませんが、生前?から好きだったんだじゃないかなと思います。
しつこいようですが、この病室は絶賛警戒態勢で警護中です。
関係者でも近寄ったりするとチェックされますし、それ以外には厳戒態勢かと。
近くで騒いだら例え子供でも猫のように首根っこを摘ままれます。
ん。あれっ? でも子供の声ですよ。
特訓に夢中で気が付かなかったのですが、
「さっちゃんに会いに来ただけだよ!!」
という声は間違いなくお子さまのモノです。
ピクンっ。
ふえ?
あにゃッ!?
うぉ?? ず、ズレた!