38)挨拶は礼儀
幽霊が希うなんて烏滸がましいですか? でも、幽霊が祈ったっていいじゃないですか。誰にも迷惑なんてかけないと思うんです。
まぁ、誰にも祈りも届かないだけかも・・・・・・って、ちょっとだけ泣いていいですか。
ぐすん。うううっ。
なんて、涙も出ません。ほら、私幽霊ですから。
そんな馬鹿なことを思っていると、サツキちゃんが身じろくのを感じました。
サツキちゃんは何かを訴えるようにパパさんを覗き込んでいるようです。が、上手くその思いは伝わりません。
中に入っている私にだって伝わりませんから当然かもしれませんが。
愛娘に顔を見つめられたパパさんはおもいっきり照れっとしちゃってます。この場合、デレッではなく“照れっ”なのがパパさんのポイントですね。
きゅっと腕にしがみつくようにサツキちゃんの手がパパさんのシャツにしわを作っていて、それが何だかいい。すごくいい。本当にかわいい!
何か言いたげなサツキちゃんが気にはなりますが。今は照れっとしちゃうパパさんに同意☆
これもそれもパパさんがサツキちゃん母娘のところに帰ってきたおかげ。
『パパさん。本当にありがとう』
聞こえないのは解っていますが何度でも感謝を伝えたいんです。挨拶は幽霊にだって必要だと思うのです。
ああ、かわいいサツキちゃんをもっと堪能。もとい観察!
サツキちゃんはパパさんの膝の上に乗り、その服の端をはしっと握りしめたまま。そんな様子も、か・わ・い・い♪
まぁ、事故から多分ずっと不安だったところにパパさんが帰ってきてくれたからうれしいんだと思うんですよね。皆さん。
サツキちゃんの表情にはまだ出ていないのが残念ですけれど。
で、もう片方の手はママさんのベッドの上掛けに手を置いてます。サツキちゃんはたぶんママさんの手を握りたいんじゃないかな。でも、ママさんはベッドの中で安静中だし。遠慮しちゃっているみたいです。
ほのぼのと私が観察していると――。
『・・・・・・』
ん? 何か、聞こえた。
『・・・・・・』
んん?? 聞こえ、ない。というか、声が小さすぎて聞こえない。というのが正しいような。
『・・・・・・』
一所懸命、私は耳を澄ました。
と言っても幽霊が耳を澄ますことに一抹の不安。
その時――。
「あああっ、ちがう。たすけて! だれか!!」
ぱぱーぁっ。
悲痛な声が耳を打つ。




