29)増えたのは?
しかも結構な暴風ですよこれは。
ええ、この分じゃ一方的に巻き込まれ、翻弄されてしまうばかりです。はい。
美しさとはやはり“罪”なのかもしれません。
そんなことを想っていると、
「――ユキと言います。彼は須賀原郁人」
ああっ。私、聞き逃してしまいました!!
しまったどうしましょう。彼女ですか彼だったんですか!!!
ココ重要です。
おっちゃん! マキ夫人、教えて下さいな。
今はユキと名乗った人物の名字より、性別を知ることの方が大切です。
そうでしょう皆さん。知りたいですよね!?
私が必死なのにおっちゃんはにやにやと、マキ夫人は困ったような表情をしています。
うん? ええっと、何かありましたか??
はい。・・・・・・逆に何もなかったみたいです。
つまり、ユキなる人物の性別は今もって不明ってことです。
まぁ、いっか。それはそれで想像の余地が広がるというものですよ。ね♪ 皆さん。
前向きに考えてみるほうがいいですし、幽霊にだって楽しみは必要ですよ。
私はサツキちゃんの中から包帯があろうと美麗なユキちゃんと、なんだかんだと育ちのよさそうなぽっちゃんの二人を見つめました。
おっとりとした感じも、そこはかとなく郁ぽっちゃんの育ちの良さを表しているようですし、まぁ、あれだけ警護の人を引き連れているだけで一般人とは違いますよね? こう滲み出ているものがあります。
ただし、幽霊に怯えていなければ。という但し書きが付きますが。
今の事態を引き起こしたそもそものきっかけはおっちゃんです。一寸ぐらい責任感じてほしいんですけど。
でも、彼、郁少年が怯えたのはおっちゃんを始めとした『優美な幽霊』集団である私たちですし、今さらおっちゃんにだけ責任を取らせるわけにもいきませんか。
そして、あらためて言う必要もないのでしょうがユキちゃんは綺麗です。例え包帯でぐるぐる巻きにされていてもその美しさは損なわれません。いいえ、逆に増して見えるかもしれません。
別に私、包帯萌え属性!?なんてないと思うんですが。
ああ、記憶のない私ですから、当然知識はおっちゃんからですよ。過去を思い出せない分、空っぽだったせいかなぜか余計な知識は増えています。はい。おっちゃんと知り合ってからです。別におっちゃんの所為とは言いませんが、面白そうにこちらを見ているおっちゃんに“あっかんべ~”くらいしても許されるとは思います。やりませんけれど・・・・・・。