27)中性的
その顔は悪戯成功☆ ってな表情です。バチンという音とともにウインクしている様子まで見える気がしました。ただし、こちらからはおっちゃんの後姿しか見えませんが。
正直、ぽっちゃんが気の毒で。
おっちゃん、メっ! って感じですよ。フォローのしようがありませんし、ああ迷惑。
病室警備の方及び、ぽっちゃんの警護の皆さんに病室内には患者のサツキちゃん母娘。さらにお医者さまと看護師さん。もちろん飛び込んできたぽっちゃん。
ただでさえ人が多いところに幽霊な私たち。
人口過密状態です。
幽霊に人口の過密が当てはまるかどうかは解りませんが。
なんとなく妙な緊張感が漂い、誰も動けません。
その金縛りを解いたのは、
「郁」
凛とした涼やかな一声だった。
誰もが一瞬聞き惚れ、それから視線を声の主へ注いだ。
中性的なきれいな顔立ちをした少年?がそこに立っていた。
ただし、きれいなその顔は、今は包帯で半分くらいが隠されている。
本来さらっとしているだろう髪は包帯と網状のネットで覆われており、痛々しい。
さらに片手を固定しているのか、肩から包帯で吊るされたままだった。
その場の大人たちの視線が少年?の姿の惨状さを目にし、顔を顰め、視線を惑わせる。あれこれ事情を考えているようだ。
ええと、ところでこの美少年?ですが・・・・・・。
(あれ?? どこか見覚えが。アレっ?)
その表情は包帯で隠され、せっかくの美貌より先に痛々しさが目立つ。
しかし、それゆえに際立つのは雰囲気だ。
清浄さというべきか。いや、独特の存在感というべきなのかもしれない。
まだお子さまなのに、どこか大人びた感じとか。その年齢だけじゃなく、その性別すら不詳っぽいとこなんて私の記憶に触れます。
いえ、ほら私、記憶喪失しているんで『記憶力』に自信はありません。
が、妙に引っかかります。
う~ん。あれ?
もしかしてだけど。この包帯だらけの彼??って、あの時の彼ですか。
いや、まさか!?
でも、私の記憶内からだとほぼ、サツキちゃんに入っちゃって(出られない)この病院からはじまっていますから、はい。
「すみません。皆さん郁が、友人が騒がせました。
どうやらお見舞いに来てくれたようなんですが、彼が想っていた以上にその、怪我がひどかったので驚いてしまったようで・・・・・・」
恐縮したように話す美少年??の言葉にそれまだに在った警戒と緊張を大人たちは互いを見つめながらですが、ゆっくり解いていきました。
そんな周囲の様子にお子さまたちもほっとしたみたいです。