10)保護 仮名
――そこはどこか物悲しく、殺風景で寂しい場所でした。
そんな空虚な場所を切り開く、少年の声。
少女の反応とともに、さっと病室が明るくなった気がしました。まぁ、気のせいでしょうけど。
私には、きっと少女も自分自身の中でもがいているんだと、思えました。
あっ、そうだ皆さん。ご報告が遅くなりましたが私『仮名』が出来ました。
拍手~パチパチパチ♪
えっと、説明すると。ただいま入ったままで出られずにいる『他人さまのモノ』な(取り憑いたわけじゃありませんから!)少女の名前がなんと「サツキ」ちゃんなんです。と言ってもさっきから少年が呼んでいるみたいですが。
そうです。皆さん。すでにお気づきでしょうが、某有名アニメ作品の主人公である女の子と同じ名です。ご存知でしょう!
きっとご両親がファンなのでしょうね。それとも単純に生まれ月とかからでしょうか?
ですが、以上の理由から私、仮名を付けてもらいました。やったぁ!
そうです「メイ」です。ご想像のとおりでしょうか。
皆さん。よければこれから私を、
「メイ(仮名)とか、メイちゃん(仮名)」
なんて、できたら呼んでくださいな。キラーン☆
もちろん。執事も羊もいませんが。
あれっ? 私、なんでこんなことを?
「執事と羊」なんて勝手に浮かんできた言葉ですが、やっぱり自分じゃわかりません。何かあるのでしょうか。
のんびりと。はてな、なんて考えていましたら、引っ張られました。サツキちゃんに。
クンっ、と。
これは声のする方へ行きたいのでしょうか?
でも、サツキちゃんは顔を扉の方に向けたまま。固まってしまいました。
動きません。微動だにしません! って、あれ~??
まるでさっきの反応は気のせいだったと思うほど、無反応です。
でも待ってください。ちょっぴりですが、いつもの無表情とは違う気がします。気のせいですか?
これじゃ、私じゃどうしょうもできませんが。
どうすれば・・・・・・。とか考えてはみますが、何も思いつきません。しかも幽霊の身!?ではできることって、何かありますか?
病室前は賑わってきました。
ただし、いい意味じゃないと思うのです。
ここは監禁、監視、された場所。じゃなかった。ええと、そう『保護』されているのですから。ねぇ?
よくはわかりませんが、わやわやっと声が漏れ聞こえてきます。
病室の扉は閉まっていますから、微妙ですが。
幽霊だからって誰も?が、地獄耳ってわけじゃないみたいです。
その時、カランコロンと足音高く入ってきた存在がありました。