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勇者パーティーを追放された“総務担当”ですが、世界最強の無駄遣いでした  作者: 風見セイ


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12/18

第12話「総務は世界を軽視しない」

 和平共同声明から一週間。


 王都と魔王領の交易路には、ゆっくりと荷馬車が行き交い始めていた。


 完全な信頼ではない。

 だが、剣ではなく契約書が交わされている。


 王都の市場では魔王領産の鉱石が並び、

 魔王領では王都製の加工品が売られている。


 数字は、確実に上向いていた。


 ◆


 グレイヴン役所。


「税収、前期比一五%増」


 町長が報告書を読み上げる。


「戦争が起きなかっただけで、これほど違うとは……」


「想定内です」


 レオンはペンを走らせる。


 だが、その視界は以前と違う。


 線は視える。

 だが絶対ではない。


 揺らぎを含んだ線。


「次の課題は?」


 受付嬢が尋ねる。


「交易量増加に伴う価格変動対策」


「もう次ですか!?」


「問題は先回りするものです」


 淡々とした声。

 だがその瞳には、確かな色がある。


 ◆


 そのとき、王都から急報が届く。


《魔王軍内、第二派閥の動きあり》


 セレネが目を細める。


「想定より早い」


「揺らぎです」


 レオンは書簡を読み、静かに息を吐く。


「完全均衡は存在しません」


「ええ」


「ですが、破綻もさせません」


 線が走る。


 だが今回は、一本ではない。


 複数の可能性。


「最短は?」


 セレネが問う。


「武力制圧」


「却下です」


「承知しています」


 わずかな間。


「交渉と内部監査の併用」


「時間がかかります」


「揺らぎ許容範囲内です」


 セレネが小さく笑う。


「変わりましたね」


「誤差です」


 だがその誤差が、世界を保っている。


 ◆


 夜。


 レオンは丘に立つ。


 グレイヴンの灯り。

 遠くに見える交易路の光。


 世界はまだ揺れている。

 だが、色は失われていない。


「……総務を軽視すると、世界は壊れる」


 小さく呟く。


 それは勇者への皮肉ではない。


 自分自身への戒め。


 合理は必要だ。

 だが合理だけでは続かない。


 揺らぎを軽視すれば、世界は均質化し、物語は終わる。


 セレネが隣に立つ。


「第一章、完了ですね」


「章?」


「あなたが“最短だけを選ばない”と決めた章」


 レオンは空を見上げる。


 星は白点ではない。

 淡いが、確かな光。


「業務は続きます」


「ええ」


「世界は軽視しません」


 その言葉は、以前よりも少しだけ温度を持っていた。


 合理で救い、

 揺らぎで守る。


 総務の仕事は終わらない。


 世界が続く限り、

 線と色の均衡を探しながら。


 次の案件が、静かに動き始めている。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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