02話 後編 再び異世界へ
冒険者の名を大木吉塚といった。彼の用意したキャンプで朝を迎え、さっそく2人は近くの町の冒険者ギルドへと向かった。きっと元の世界では奏楽は行方不明扱いとなっているはずだ。異世界から元の世界に戻る方法を知らないのが問題だ。戻るためにはあのエクスマキナの少女に頼むしかないが、そんなことをすれば次はないかもしれない。もう異世界に行けなくされるかもしれない。
異世界の経験は貴重だ。警察にマーキングされて異世界を経験できないように日々の行動を監視され止められかねないだろう。
冒険者ギルドへ着くなり窓口で冒険者の登録をしようとするも「転生者ではない」この事実により厳しい顔をされることとなる。転生者でないということは魔法も使えない。剣士になることも難しい。吉塚のように剣士としてのスキルを身に着けることも困難だからだ。
結局転生しなければ魔法もスキルも身につけられない。
それでも奏楽はギルドの登録を受けたいと下がらなかった。
〇
ギルドで登録が終わるとすぐさま吉塚と次のクエストの受注へ。掲示板に張り付けてある。依頼書はモンスターの討伐もあれば植物の採取などの依頼まである。
奏楽にできることは空が飛べること。つまり空が飛べることで役に立つ依頼を得ることが好ましい。だが……。
「空が飛べるからこそ有利な仕事、ないな」
崖の上に生える植物などあればよいかもしれないが、そんな仕事はなかった。
吉塚は「やっぱりモンスター討伐だな」と意気揚々に張り紙を手にして窓口へと持って行った。依頼内容は牛頭の巨人の討伐であった。
恐ろしいモンスターに襲われた経験があり奏楽は少しの不安があった。だが今は自らの意思でこの異世界に存在している。きっと自分にもできることがあるはずだからここに来たのだ。
〇
モンスターの討伐依頼を受けた2人は霧の発生している町へと向かった。町の名はミーズガモルド。ここに牛頭の巨人が発生したと依頼書には書かれていた。町のほとんどの住人は別の町に避難していて町の中はシーンと静まり返っている。
町にたどり着いた吉塚と奏楽は霧に包まれた町の探索から始めた。
町のほとんどがレンガ造りの家で町の中心には時計塔がそびえ立っている。町の様子は霧に包まれていてそれでいて人が一人もいない。怪物改めモンスターがいるからこその異世界の異様な光景がそこにはあった。
奏楽は呟く。
「ここがモンスターが発生した町か。どこにいるんだ。前は逃げてもあっちから遭遇してきたのにな」
鎧を纏った吉塚も鎧の擦れる音をガシャガシャ鳴らしながら町の様子を見ながらモンスターを探していた。
ここから始まる冒険。奏楽は自らの力や役割が分からない状態でもこれから起こるであろう戦いにわくわくを感じていた。
「いたぞ」
吉塚は遠くの時計塔の下に斧を持った巨人がいるのを発見した。角が生えている。霧でよく見えないが顔が牛になっているはずだ。
奏楽に「いくぞ」と言い、あらゆるスキルの詠唱を始めた。
「――今身体の耐久値を上げよ、エクスタフネス! ――今身体のスピードを上げよ、スピードソルジャー! ――今我が剣の威力を上げよ、スラッシュナイフ!」
ゆっくり歩いていく転生勇者の大木吉塚。その背中に頼もしさを感じる奏楽。
奏楽もウイングをリュックから取り出し空を飛ぶための準備を始める。
〇
クラウチングスタートの姿勢を取り助走をつけ、機械の翼で空へ羽ばたいていく奏楽。
牛頭の巨人の斧と吉塚の剣がぶつかり合い火花を散らしている。
――ウボオオオオオ!
声を上げながら斧を振るう牛頭の巨人。奏楽はこの戦いに入っていくことに困難を感じていた。まず武器がない。空から奇襲するにも武器が必要だ。これには準備不足を感じずにはいられなかった。
「でも、注意をそらすことはできる」
奏楽は思いっきり急降下し牛頭の巨人の背後に回り込むと飛び降りる速度で蹴った。牛頭の巨人は一瞬後ろを向くとその一瞬で奏楽の足を掴み、そのまま地面にたたき落とした。
思いっきり地面に仰向けに叩きつけられあまりの痛みに身動きが取れなくなる奏楽。
「あっ、……あ……ああ」
声も出せない。
「奏楽! 大丈夫か奏楽!」
心配する吉塚の声が聞こえてくる。
奏楽は思った。俺、ここで死ぬかもしれない。
そんな時、とある聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「保護対象確認。任務了解。これより保護活動に入る」
エクスマキナの少女が戦闘に介入し牛頭の巨人と戦闘を始めたのだった。




