帰還と弟
「キミ、まさか初めてこの世界に来たの?!」
「あぁ…うん、そうだけど」
そこまで驚くことはないだろう。
「じゃあまさか…学校の鏡を使ってこの世界に?」
あ…と思った。そうだ、元の世界の自分はどうなっているのだろう。
「ねぇ打音さん…元の世界の俺ってどうなっ――」
「元の世界のキミはいま床に倒れてるわよ。」
打音さんが俺の声を遮って言う。
まずい。トイレの床に倒れているなんて気持ち悪いにもほどがある。
「まずいよ打音さん!」
「はぁ…どこの鏡から入ったの?」
目が覚めると保健室にいた。
「加賀美?大丈夫か?」
そこには担任や友人が集まっていた。
あぁ…一足遅かった。トイレの床に倒れている所を見つかってしまった。
「すみません。ちょっとクラっとしちゃって」
それにしても打音さん、なんであんな鏡の世界の事知ってたんだ?
それに今日の朝のカイの言葉…カイも鏡の世界に行ったのか?帰ったら聞いてみよう。
「それにしても、トイレで爆睡してるなんてなぁ。先生びっくりしたぞ?」
「え…?」
打音さん、ぶっ倒れてるって言ってたよな?爆睡してた?嘘だろ?
「しっかり家で寝てなかったんだろ?あまり夜ふかしするなよ」
トイレで爆睡していたなんて…俺は恥ずかしさで顔が赤くなった。
家に帰ると母親が声をかけてきた。
「あんた、今日トイレで寝てたんだって?あぁ恥ずかしい」
誰から聞いたんだよ。それよりもカイだ、あいつに鏡の世界のことを話さなければ。
俺はカイの部屋のドアをノックした。
「誰〜?」
相変わらず間の抜けた返事が返ってくる。
「俺だ、入っていいか?話したいことがある」
「あぁ兄ちゃんか、どうぞ〜」
俺はカイの部屋に入るなり謝罪した。
「ごめん!」
「え?なんのこと?」
カイは何のことかさっぱりわかっていないようだ。
「いや鏡の世界の話だよ。ないとか言ってごめんな」
弟に謝罪するなんて少し照れくさいが、あったものはあったのだ。謝らなければならない。
「あ〜兄ちゃんも入れたんだ」
カイは全く気にしていないようだ。
「いや〜クラスメイトに聞いてみたけど全員にそんなわけ無いだろって言われてさ。ボクの幻覚かなって思ってたよ、良かった〜」
そういえば、忘れていたが打音さんに放課後に体育館裏って告白イベントみたいな事言われたんだった。カイも連れて行くか」
「そいえば、鏡の世界に打音さんいたんだけど――」
「うぇっ?!打音先輩が?!」
また遮られた。まぁいい、この食いつき具合なら付いてくるだろう。
「打音さんに放課後に体育館裏集合って言われたんだけど、来る?」
「行くっ!!」




