鏡の世界
「兄ちゃんは鏡の中の世界って知ってる?」
弟のカイがいきなり尋ねてくる。
「なに言ってんだよ?あるわけ無いだろ」
そうだ、あるわけがない。
鏡の世界なんて、子供の夢かよ、バカバカしい。
そんなことを思い出しながら、休み時間に、学校のトイレの鏡を見つめる。
「鏡の世界…か」
そう意識していると、途端に何やら意識が抜けるような感覚がし、目がくらんだ。
「は?」
目が覚めると同時に俺は思わず声を出してしまった。
目の前に広がるのはもといた学校のトイレだ、だが何かが違う。
色の薄い、というか殆どがモノクロなのだ。
「何処だ…ここ…」
まさか、カイの言っていた鏡の世界なのだろうか。
いやいやそんなことはないだろう。
だが、その場合元の世界の俺はどうなっているのだろうか。
そんなことを思いながらトイレから出てみる。
「おかしい…」
いままで騒がしかった廊下はしんとしており、人の気配一つない。
この世界には俺しかいないのかなどと考えている間に、
いつの間にやら自分の教室に到着していた。
この教室にも誰もいないのだろう、そう思いドアを開ける。
「あら、今の時間帯にシュピーゲルがいるなんて、珍しい。」
声の方を見ると、白髪の少女が窓際の席に座っていた。
俺がボケっとしていると、白髪の少女が尋ねてくる。
「キミはえぇと…加賀美レイトくんだっけ?キミもこの世界に来れるんだね」
なんで俺の名前を知っているんだ?てかシュピーゲルってなんだ?
いや、そんなことよりもまず。
「ええと…ごめん、誰?」
白髪の少女なんて見覚えがない、誰だ?
「あぁ、シュピーゲルの髪が白いから分かりづらいか。打音ナズナ、知ってるでしょ?」
『打音ナズナ』この名を知らない生徒はこの学校にはいないだろう。
一言で言うなら「天才」だ。
学力調査一位は当たり前、そのもの静かな性格と合理的な判断をする様子から、彼女は生徒から「冷徹の天才姫」と呼ばれている。
無論、男子人気はかなり高い。
そういえばカイも好きだって言ってたな。
だがおかしい、打音ナズナは黒髪でメガネをかけていたはずだ。
しかも今日は学校を休んでいた。ここにいるわけがない。
「いや違うでしょ、打音さんは黒髪だしメガネかけてるし、今日学校休んでるし。」
「黒髪メガネって…私のイメージそれ?まぁいいわ。今日の放課後、体育館裏に来て。もう授業始まるでしょ?」
なんだ、告白イベントか?なんて思ったがそれよりも大きな問題がある。
「元の世界への戻り方、知らないんだけど…」
「はぁ?!」




