表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/17

第十五章

中間テストも終わり、季節は完全に夏モード。

部屋の中には、じっとりとした蒸し暑さが漂っていた。


俺――魔宮辰巳は、扇風機の前でゴロゴロしながらため息をつく。

「……暑すぎる。もう動きたくねぇ……」


騒がしかった学校生活もしばらくは休憩だ。

ようやく、静かな時間が戻ってくる――はずだった。


「辰巳、学校生活はどうだい?」

ふいに、背後から魔宮正義こと、じいちゃんの声が飛んでくる。


「んー、まあまあ楽しいよ。今は“聖心部”って部活で、人助けとかしてる」


その瞬間――親父の目がギラッと光った。


「貴様……まさか“キリストの道”に染まったんじゃあるまいなッ!」


「親父! 落ち着いてください! 辰巳坊っちゃんはまだ仏門の血が流れております!」

若頭がすかさず親父を羽交い締めにする。


「ち、違うって! ただ普通に、人助けしてるだけだよ!」

「“普通に”って言葉ほど信用ならん!」

「いやほんとに! 別に十字架に祈ったりしてねーし!」


「……ほんとか? お前、“アーメン”とか言い出したら勘当だぞ」


「言わねぇよ!!」


ようやく落ち着いた親父は、ふぅと煙を吐きながら言った。 「いいか、辰巳。信仰なんざどうでもいい。宗派が違おうと、考え方が違おうと関係ねぇ。困ってる奴、泣いてる奴がいたら助けろ。どんなにボロボロでも、最後まで手を伸ばせ――それが、魔宮家の流儀だ。」


「はーい」

魔宮は素直に返事をした。親父が昔から口酸っぱく言い続けてきたこの言葉は、もう完璧に頭に染み付いている。


扇風機の風を顔に当て、ひと息ついたそのとき――スマホが震えた。

画面を覗くと、神崎からのメールだった。件名が目に入る。


「緊急!みんなでワイワイせよ~♪」


嫌な予感がした魔宮は、そっとスマホを閉じた。

するとすぐに、次のメール通知が鳴る。今度は黒崎からだった。件名を見て、魔宮は思わず眉をひそめた。


「運命の糸は、我らに試練を課す――」


厨二病全開のその件名に、魔宮は小さく息を吐いた。

「……やっぱり来たか、黒崎のヤツ。」好奇心には勝てず、魔宮は画面をタップしてメールを開いた。


――そこに書かれていたのは、意味深な文面だった。


「孤影の館にて、我ら聖心部の力を試す時が来たり。

己が信念を貫き、迷える魂を導け――ただし、道は平穏ならず。

準備せよ、試練の幕開けを。」


「……こいつ、何を言ってやがるんだ?」魔宮が眉をひそめてスルーした瞬間、スマホが再び震えた。

今度は天城先生からだった。件名は至ってシンプル――「聖心部・夏合宿の案内」。


本文を開くと、文字の端々に先生らしい熱量が滲んでいた。


「夏休みになると生徒たちの喧嘩事件が年々増えておりましてね……。

魔宮くんが喧嘩で人を殺してしまうんじゃないかと考えると、夜も眠れません!

ですから……魔宮くん、夏合宿、来ますよね?ね!?絶対ですよ、絶対!」


魔宮は思わず画面を押さえ、ため息をついた。

「……なんで俺ばっかり対象になるんだよ……」


ため息をつきながらスマホを置こうとしたその瞬間、さらに新着メールが届いた。


画面には――綾瀬からだった。件名は柔らかくて、少しはにかんだ雰囲気だ。件名「夏合宿、魔宮くん来るよね?」

魔宮くん……夏合宿、やっぱり来てくれるよね?

みんなで一緒に過ごせたら嬉しいな、って思って……


魔宮は思わず唇を緩め、画面を見つめる。


スマホを放り出し、魔宮は床にゴロリと寝転がった。

「あーあ……今年の夏は、忙しくなりそうだなぁ!」


扇風機の風が顔をかすめ、じっとりとした夏の空気が部屋に漂う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ