第六十九話 花火大会でのデートも終わり……
「ふふ、キレイな花火ね」
由乃さんに腕を組まれながら、三人で打ち上げ花火を見上げる。
ああ、確かに花火も綺麗だが、由乃さんの方がもっと綺麗に見える。
さっき奈々子を見た時も思ってしまったが、やっぱり由乃さんの方が……。
「どうしたの陸翔? こっち見て?」
「いえ。由乃さんは花火より綺麗だなーって」
「んもう、変な事、言わないの。くす。お世辞でもそういう事を言う様になったんだ」
お世辞ではなく本当にそう思っていたんだが、由乃さんも嬉しそうに俺の腕に顔を預けてきてくれた。
さっき、奈々子に気の迷いみたいなのを見せてしまったのは申し訳なかったが……由乃さん、本当に気にしてないのかな?
「ほら、奈々子。今の綺麗だったでしょ」
「そうね」
「んもう、もっと楽しそうにしなさいよ」
由乃さんの横に居た奈々子は俺と由乃さんがイチャついているのが面白くないのか、ぶぜんとした顔をして花火を眺めていた。
ふふ、まあそこで歯がゆい思いをしているがいいさ。
「三人でこうしている時が一番楽しいわねえ」
「えー、俺と一緒の時じゃないんですか?」
「もう、どっちも同じくらいよ。陸翔もそのくらい察しなさい」
まだ奈々子より大事とはならないみたいだが、まあ由乃さんから見たら、可愛い妹だしな。
どっちが好きかなんて選べないだろうし、そんな二択を迫ることに意味はない。
「…………」
「どうしたの?」
「ゴメン、ちょっと席を外すね」
「トイレか?」
「うるさい。どうでもいいでしょう」
なんて由乃さんと花火を眺めていると、奈々子が突然、俺たちの前から立ち去ってしまった。
「あら、気を遣わせちゃったのかしらね?」
「そりゃ、そうですよ。やっぱり、気まずいと思いますよ。二人きりの方が良いですよ」
「うーん……奈々子と一緒の方が良いんだけどなあ。早く戻ってきてほしいわね」
むしろ、そのまま家に帰ってほしいんだけどなー。
まあ、少しでも由乃さんと二人きりになれる時間が出来たなら、良しとするか。
「由乃さん。あのさっきはすみませんでした」
「え? 何?」
「いえ、奈々子の手を繋ごうとしちゃって……」
「あら、まだ気にしていたの?」
「怒ってないんですか? すみません、奈々子に未練があったつもりはなかったんですけど、つい見とれちゃって……」
由乃さんはあんまり気にしてなさそうだったが、元カノとの浮気と取られかねないので、やっぱり謝っておかないといけない。
「やっぱり、奈々子は可愛いわよね。未練が全くないなんて言われたら、私も逆に傷ついちゃうなあ。あの子、本当に良い子でしょう?」
「あー、性格はちょっと……」
良い子とはお世辞でも言い難いが、由乃さんにとっては可愛い妹なんだと思っておこう。
俺を振ったことはまだモヤモヤするけど、今は由乃さんが一番好きなんだ。
「よしよし。陸翔も良い子よ」
「あんまり、子ども扱いしないでくださいよ」
「だったら、もっと男らしくならないとね。陸翔はちょっと子供っぽいのよ。奈々子と同じで」
「そりゃあいつとは同い年ですし」
妹と同じ年なんだから、子供扱いされるのは多少は仕方ないかもしれないけどさ。
まあ、子供っぽいところも好きっていうなら、まだ今のままでもいいか。
「んもう、拗ねないの。これで機嫌治して。ちゅっ♡」
「へへ……じゃあ、俺の方からも」
「きゃっ! こら、お尻触らないの。花火見なさいよね」
ふふ、頬にキスをしてくれたお礼にさりげなく、由乃さんのお尻にタッチしてやる。
良い雰囲気になってきたなあ……奈々子の時はここまでやったことはなかったけど、由乃さん相手だとこういうエロイ事も積極的にできちゃうんだよなー。
「…………」
遠目でイチャついている二人を見つめる。
お姉ちゃんがあんな奴の何処が良いのかいまだにわからない。
陸翔の事を馬鹿呼ばわりしたから、少し期待したけど……もう、無理なのかもしれない。
「う……」
悔しい
「人がいるんだから、自重なさい」
「はーい。あ、すごいのが来ましたね」
流石に人目があるので、これ以上は止めておき、手を離すと、特大の花火が打ちあがり、辺りを照らしていく。
やっぱり花火は綺麗だなあ。
「奈々子、まだ戻ってこないわねえ……あ、そこに居たんだ。こっちよ、こっち」
トイレにしては遅いなと思ったが、俺たちのちょっと後ろでこっちを見ていたので、由乃さんが手招きをする。
「もう花火大会終わっちゃうよ」
「そこで見ていたから大丈夫」
「そう。奈々子は可愛いから、変な男にナンパされないか心配なのよね」
「別にナンパなんか怖くないし」
「んもう、今まで何度トラブルに遭ったと思っているの?」
そうだそうだ。少しは男を怖がれっていうの。
「あーあ、終わっちゃったね。帰ろうか」
「送りますよ」
「くす、ありがとう」
何て話している間に花火大会も終わってしまい、ひとまず奈々子と由乃さんの二人を家に送ることにした。
美人姉妹が夜中に二人で歩いているなんて、何も起きないわけは……ないと良いんだけど、彼氏なら変な男から守らないとな。
「じゃあ、これで」
「あ、由乃さん。ちょっといいですか?」
「なに?」
「ちょっと二人で話したいことがあって。奈々子、今日は付き合ってくれてサンキュー」
「別に礼なんか……お姉ちゃん、早く家に……」
「ゴメンね、すぐに戻るから」
「あ……」
引き留めようとした奈々子の手を優しく払い、由乃さんは俺の手を握ってくれた。
おお、これは奈々子より俺を選んでくれたって事かな?
「それで、どうしたの?」
「あー、はは……二人きりになりたくて。えっと、キスしていいですか?」
「え? ふふ、いいよ」
「ん…………」
近くにあった小さな公園に由乃さんを連れていき、キスをせがむと、由乃さんも笑顔で応じてくれたので、遠慮なく口づけをする。
「ん、ちゅ……あっ、こら、胸まで触らない……」
「へへ、外でしませんか?」
「そんな趣味ないわよ。誰か来たら、どうするのよ、もう。それに、外でしたら、蚊に刺されちゃうしい」
「ですよねー。由乃さん、やっぱり俺、デートするときは二人きりの方が良いですよ。こうやって、遠慮なくイチャつけますし」
「そうよね……でも、流石に駄目よ」
外でやるのはやっぱり駄目そうだったので、あきらめる。
今からホテル行くのもあれだし、今日はここで終わりか。
「由乃さん、来年も一緒に花火大会行きしょうね」
「うん」
「約束ですよ。もう、由乃さんの彼氏として毎年行けるように頑張りますから」
「くす、約束破っちゃ駄目よ。破ったら、タダじゃおかないんだから」
奈々子とも同じ約束をした気がするが、今度は破る気はない。
「陸翔……好きよ」
「俺もです」
と言って、もう一度キスをする。
そして、




