第五十六話 美人姉妹とまとめてデート
「あのー、意味がわからないんですけど……何で、奈々子が一緒じゃなきゃ駄目なんですか?」
『陸翔こそ、何で奈々子と一緒じゃ嫌なの? もう仲直りしたんだよね? だったら良いじゃない』
「いや、俺は由乃さんと二人が……」
そもそも仲直りなんかしてないし、由乃さんと二人のデートに何であいつを……しかも俺の元カノだぞ。
仲直りしてようが、何だろうが嫌に決まっているじゃんか……。
『奈々子にフラれたから、しばらくは陸翔が引きずるのも仕方ないと思っていたけど、奈々子と仲直りしてるなら、問題ないじゃない? それともまだあの子を嫌っているの? 何で? あんなに可愛くて良い子なのに!』
か、可愛くて良い子って……そりゃ、由乃さんの妹だから、可愛いのはまだわかるけど、良い子って本気で言っているのか?
しかもかなり声を荒げているし、めちゃくちゃ怒ってる。
『奈々子は私の可愛い妹なの。元カノだろうがだろうが、将来陸翔の妹になるかもしれないでしょ。その奈々子を嫌うような人とは私、付き合えないから』
「あの、だから……」
駄目だ。由乃さんとまるっきり話が噛み合わない。
とにかく奈々子と一緒じゃないと駄目らしいので、
翌日――
「よう奈々子。おはよ」
「陸翔! な、何しに来たのよっ!」
朝になり、奈々子と由乃さんの家の前で待ち伏せし、奈々子が家から出てきた所で奈々子に声をかける。
「由乃さん、居る?」
「お、お姉ちゃんに何の用よ! まさか、ストーカー!? だったら、すぐに警察に……」
「あ、いないなら良いや。取り敢えず、お前でいいや。一緒に学校行こうぜ」
「ちょっ、離しなさいよっ!」
嫌がる奈々子の手を引いて、強引に連れ出し、学校へと向かう。
奈々子に話があって来たので、今は由乃さんが居ようがいまいが、関係ない。
「離しなさいって言っているでしょっ!」
「ああ、悪い。実は由乃さんのことで話があってな。」
「だから、何で私に話すのよっ! 都合の良い時だけ、私を頼りやがって! どんだけ自分勝手なのよ!」
まあ、勝手だとは思うが、今は奈々子しか頼れる……というより、話が出来るのいないんだって。
大体、お前が俺をフったのが原因なんだから、少しは罪悪感を持てよな。
「まあ、良いじゃん。元カレの我侭を少しは聞いてくれよ」
「もう散々、嫌って言うほど聞いたつもりなんだけど」
「そうかもしれないけど、聞いてくれって。今度、由乃さんとプール行くんだけどさ。お前も来るんだって」
「うん。お姉ちゃんに誘われたから」
「俺、二人きりで行きたいんだよ。今回は遠慮してくれない?」
「は? あんた、本気で言ってるの?」
手を合わせてそう頼むと、奈々子はあからさまに嫌そうな顔をする。
「何か勘違いしているようだけど、誘われたのは私の方が先だからね。私が行くって言ったら、じゃあ陸翔も誘うからってお姉ちゃんが言ってきたんだけど」
「そうなの? じゃあさ……」
「遠慮するなら、あんたが遠慮しなさいよ。私とお姉ちゃんで行く予定だったんだから」
「う……で、でもさ……」
奈々子の方を先に誘ったとは初耳だったが、だったら、俺が行くと聞いた時、お前が遠慮して彼氏と二人きりにさせてくれよ。
と思ったけど、これも奈々子の嫌がらせの一環か?
「お前、俺と一緒でも良いの?」
「嫌に決まっているじゃない。でも、あんたを拒絶してお姉ちゃんを怒らせたくないから、今回は我慢するってだけ。陸翔こそ、可愛い元カノに気を使って、姉妹で水入らずの休日を過ごしてもらおうとは思わないの?」
思う訳ねえだろ、そんなの。
しかし、奈々子は案の定引かないので……。
「ああ、もうわかったよ。そのかわり、俺が来ても絶対に文句を言うなよ」
「さあね。陸翔次第としか言えないわ」
ちっ、とことん性格が悪い女だな。
しかし、俺も由乃さんを怒らせて、こんな事で関係を終わらせたくはないので、ここは我慢しておく。
はあ……由乃さんとの関係、このままで良いのかな……悩んではいるけど、
「あ、陸翔。ヤッホー」
由乃さんと奈々子とプールに行く日になり、待ち合わせ場所の駅前に行くと、由乃さんが奈々子と一緒にやってきた。
「きゃー、本当に来てくれたんだ。ゴメンね、私の我侭を聞いてくれて」
「いえ……」
俺に会うや由乃さんは一応、奈々子を同行させたことを謝るが、そんな取ってつけたような謝罪を笑顔でされても釈然としない。
案の定、奈々子も露骨に嫌そうな顔をしているしさ……。
「ふふ、でも嬉しいわ。今日は彼氏と可愛い妹に推しの配信者も一緒だから」
「お前まだ配信しているの?」
「悪い?」
姉にバレた後も、配信を続けているとは随分と物好きだな。
「ちょっと、陸翔はナナちゃんの配信見てないの?」
「い、いえ……すみません」
俺が奈々子の配信を見てないとわかると、露骨に由乃さんが不満そうな顔をして迫ってきた。
「んもう、どうして見てくれないの? すっごく可愛くて面白いのに。私なんかもう二万円以上投げ銭しているんだから、陸翔もそのくらいしなさいよ。投げ銭しなくても再生すればナナちゃんには広告料入るんだから、少しは貢献して上げて」
二万円って……自分の妹の配信にそこまで入れ込むって、由乃さんもおかしいって。
奈々子も姉に見られているって嫌じゃないのかね?
「あ、もう行くわよ」
「はい……」
もう由乃さんが一人で勝手に盛り上がっちゃっており、俺も奈々子も滅茶苦茶微妙な顔をしながら、電車に乗り込む。
「ほら、陸翔はこっち」
電車の中では俺と奈々子は由乃さんを挟むように座り、由乃さんもご満悦な顔をしていた。
ああ、由乃さんにとっては両手に花状態なんかな。
俺にとってはちっとも嬉しくないけどな。
「あら、陸翔。もしかして、奈々子の隣が良かった?」
「いえ……これで良いです」
「そう。別に遠慮しなくてもいいのよ。奈々子とも仲良い所を存分に見せつけてくれて」
「ちょっと、お姉ちゃん……」
堪らず奈々子も
「うーん、やっぱり混んでいるな」
電車とバスを乗り継いで目的地の水上公園、プールに到着し、一足先に水着に着替えて、プールサイドに出るが流石に混んでいるなあ。
由乃さんも奈々子も可愛いからナンパにも気を付けないと……いや、いざとなれば奈々子を差し出してやれば良いか。
あいつならチャラ男に声をかけられても、喜んで付いていくだろうしな。もう付き合っていないから、助ける義務もないし、由乃さんと二人きりになれて一石二鳥じゃん。
「あ、陸翔。もう来てたんだ」
「由乃さん……奈々子も」
暑い日差しを浴びながら、二人を待っていると、由乃さんと奈々子が水着に着替えてやってきた。
って、二人とも水着の上に白のTシャツを着て、下はパレオを巻いてやがるのか。
これはこれで似合っているけど、出来れば二人の水着を見たかったなー。
「ふふ、水着見たかった? 後で奈々子のも合わせてちゃんと見せてあげるから♪」
「あ、はい」
俺の意図を察したのか、由乃さんは小声でそう言ってくれたが、奈々子のは別にどうでも良いわ。
ま、写真を撮ってやれば、高値で誰かに売れるかな。
その位はしても罰は当たるまいて。
「こいつ……お姉ちゃん、行こう」
「あ、うん。えへへ、




