第四十話 今カノに強引に迫るが……
「はあ……結局、由乃さんと二人きりになれないままだったな……」
奈々子にデートを妨害されて、成す術もないまま家にトボトボと帰り、自室でうなだれる。
由乃さんもちょっと奈々子に甘すぎるよ……しかも、奈々子みたいな娘が欲しいってさあ……なんかあの人も色々おかしい気がしてきた。
おっとりとした優しいお姉さんかと思っていたんだが……なんて言うか、天然過ぎて、付いて行けない。
俺に甘いのは良いんだけど、奈々子をあそこまで溺愛してるのを見せられたら、やっぱり複雑な気分になるよ。
「あ、由乃さんからか……はい」
『陸翔君? 今日はゴメンね。奈々子がまさかあそこまでしてくるとは思わなくて』
「いえ、元はと言えば、俺があいつに変な事を言っちゃったのが悪いんですし」
『そう……あの子にもちゃんと、めって、きつく言っておいたからね』
「は、はあ……」
今の話を聞いて、こりゃ駄目だと確信してしまった。
由乃さんは妹には怒れない人なんだな……もしかしたら、本人は厳しくしているつもりなんだろうけど、奈々子から見たら、由乃さんに叱れても痛くも痒くもないんだろう。
この調子で子供が出来たら、本当に奈々子みたいな娘を育てかねない気がしてきた。
男の子の方がまだ良いのかな……まあ、今はそんなことはどうでもいいか。
『それででね。実は、明日、夕方なら会えそうなんだけど……』
「明日ですか? なら、会いたいですね。放課後、会いましょうか」
『うん。奈々子には内緒にしておくね』
と、小声でそう言ってくれたので、安堵しながら電話を切る。
ああ、やっと二人きりになれる。放課後だから、そんな長く一緒には居られそうにないけど、とにかく由乃さんと二人になりたかったので、
翌朝――
「陸翔、今日はお父さんもお母さんもちょっと帰りが遅くなるから」
「え? ああ、わかった」
朝飯を食べている最中にお袋がそう言ってきたので、ふーんと思ったが、待てよ。
(だったら、今日は由乃さんを俺の家に……)
そうだよ、またとないチャンスだ。
ふふ、昨日は奈々子の馬鹿のせいで、邪魔されてしまったが、一気に由乃さんとの仲を縮めるチャンスが来たぞ。
「お待たせ。早かったね」
「もう、ホームルーム終わったら、ダッシュで来ましたし」
放課後、はやる気持ちを抑えきれず、由乃さんとの待ち合わせ場所である、駅の近くにあるコンビニで彼女と会う。
「それじゃ、今日は何処に行こうか?」
「俺の家に行きましょう」
「え? 陸翔君の……うん、良いけど……親御さんは……」
「今日は帰りが遅くなるって言ったので、大丈夫です。もう、俺と由乃さんの二人きりで、誰にも邪魔は入らないですよ」
「ええ? ちょっ、ちょっと……もう、わかった。じゃあ、行こうか」
俺の家に行こうと言った途端、困惑の表情を浮かべた由乃さんであったが、そんな彼女の手を引いて、俺の家へと連れて行く。
もう、今日を逃したら、しばらくこんなチャンスはないと思う。
奈々子の妨害もどんどん酷くなってきているし、そのくらい貴重な日なので、しっかり物にしないとな。
「ささ、どうぞ、どうぞ」
「お、お邪魔します……」
由乃さんを俺の家に招き、彼女と一緒に二階にある俺の部屋に連れて行く。
「あ、お茶を淹れてきますね」
「うん……あの、陸翔君……何で、これをテーブルの上に……」
「え? あー、はは……いやいや、ちょっとポケットにあって邪魔だなって思って」
「そ、そう……あの、このティッシュの箱は?」
「ちょっと風邪気味で……ああ、緑茶で良いですか?」
「うう……露骨すぎるよ、陸翔君」
くくく、彼氏の家で二人きりなんてすることは一つじゃないか。
ま、流石の由乃さんもそれくらいは覚悟して来ているんだろうが、後はいかに本番まで持っていくかだな。
「どうぞ」
「ありがとう。うーん、良い香りね」
ティーバッグの緑茶があったので、マグカップに入れて、由乃さんと一緒に飲む。
「昨日は本当にゴメンね。折角のデートだったのに」
「いえいえ。悪いの奈々子ですし、その分、今日は……」
「きゃん。こら、もういきなり……」
お茶を一口飲んだ後、由乃さんの体に密着し、背後から胸を揉んでやる。
もう慣れてしまったのか、由乃さんも大して抵抗もせずに、ちょっといやらしい声も出していた。
「へへ、由乃さん~~……ね、おっぱい見せてください」
「直球過ぎるよ……いくら二人きりでももう少し、恥じらいを持って欲しいなあ……」
そんな事を言っても、今日は蒸し暑く、由乃さんも薄着でノースリーブのブラウスを着ていたので、ついついムラっと来ちゃうんだよな。
「埋め合わせしたいっていうなら、もう一線を越えましょうよ。ほら、ゴムも用意していますし、安心ですよ」
「や、やっぱり、そういう事……もう、これくらいで我慢できない? んっ……」
背後から胸や太腿をお触りしていると、由乃さんも俺にキスをしてきた。
「ん……ね、今日はこれで……きゃっ!」
そんな事をされたら、余計に我慢できなくなってしまい、その場で由乃さんを押し倒す。
やるぞやるぞやるぞ……今日こそは由乃さんと……。
もうそんな事で頭がいっぱいになってしまい、息も荒くなって、すっかり発情してしまった。
「ま、待って!」
「何でですか? もう、我慢できないです」
「きょ、今日はその……心の準備が……」
そんな時間は十分に与えたつもりだったが、あまり強引にやっても、嫌われそうだったので、胸を揉んだあと、一旦彼女から離れる。
「ゴメンね。求められるのは嫌じゃないんだけど、その……万が一を考えるとね……」
「奈々子みたいな娘は嫌ですけど、由乃さんみたいな娘は欲しいですね。あ、男の子ならどうですか?」
「嫌? どうして、奈々子みたいな子は嫌なの?」
「え? い、いや、だってあいつは俺の……」
そんな事を言うと、由乃さんも表情を一瞬強張らせそう言ってきたので、思わずそう言うが、由乃さんはカップのお茶をまた一口飲み、
「子供がそんなに欲しいなら、奈々子みたいな子なら産んでも良いよ。あの子、可愛いし、凄くしっかりしているから、絶対良い子になるのに」
「あの、奈々子に似た子が出来るのは良いんですけど、性格まであいつに似ちゃうのは……」
「奈々子は性格だって、悪くないでしょう。可愛くてしっかりしているじゃない。男遊びが過ぎるのは良くないけど、それが治れば完璧な女の子でしょう。陸翔くんだって、あの子のこと、好きだったのよね? 気持ちはわかるよ。私が男子だったら、好きになっているし」
は? い、いや何を言っているのこの人?
前から奈々子には甘いなと思っていたけど、何で今日はここまで執着しているの?
「ちょっと、今の幻滅しちゃったな……あの子のこと、そこまで嫌う事はないんじゃない? ましてや、私達の娘がそうなったら、嫌なんて……」
「そ、それはその……別に顔は良いですけど、性格まで似せる事は……」
「そうね。ちょっとワガママだったかな。でも、私は娘が出来たら、奈々子みたいな子が良いってずっと思っているの。あの子にフラれたから、わだかまりがあるのはわかるけど、今の陸翔君はちょっとおかしいかな」
ええっ!? 俺がおかしいのか?
何か怒らせちゃったみたいだけど、