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第四話 新しい彼女は元カノのお姉さん

「え、えーっと……その付き合うってのは……」

『は、恥ずかしいから、何度も言いたくないんだけどなあ……その、陸翔君が想像している通りの意味だよ』

 何処かに行くから付き合ってくれって意味かと念の為、問い質そうとしたが、由乃さんは照れくさそうな口調でそう言ってきたので、どうやら本当に恋人同士になってくれという意味で間違いないようだ。


「はは……いや、それは本気ですか?」

『陸翔君が良ければだけど……君とデートして、凄く楽しかったし、奈々子の事、完全に吹っ切れたっていうなら、その……』

 マジなのか?

 いや、それなら凄く嬉しいんだけど、由乃さんみたいな美人のお姉さんが俺みたいなガキの高校生と付き合うなんて……。


(ど、どうしよう?)

 即、OKしても良いと思ったが、突然の事過ぎて、動揺してしまい、ちょっと軽々しく返事を出せそうにない。

 由乃さんの事は好きだし、奈々子の事に未練はないつもりだが……でも、別れたばかりなのに、元カノのお姉さんと付き合うってどうなのって思ってしまう。

「えっと……少し考えさせてくれませんか? ちょっと急すぎて、頭の整理が付かないって言うか」

『う、うん。ゴメンね、急に……それじゃ、もう遅いから切るね。おやすみなさい』

 やっぱり、少し気持ち整理をする時間が欲しかったので、この場では返事が出来ず、一先ず保留させてもらう。


「…………」

 お、おい……どうするんだよ、これ?

 由乃さんに告白されたなんて、信じられない。

 夢だったら覚めないで欲しいくらいだが、今になって、さっさとOKの返事をしなかったことを後悔し始めた。

 でも、問題は奈々子なんだよな……もうあいつとは別れているので、別に誰と付き合おうが俺の勝手ではあるんだけど、由乃さんと付き合うとなると、どうしても奈々子の事を思い出してしまいそうだ。

 そんな事を考えながら、ベッドに潜り込み、悶々と眠れぬ夜を過ごしていったのであった。


 翌日――

「よし、今夜にでも返事しよう」

 由乃さんと付き合う事を決心し、今夜、彼女にその事を告げようと心に決める。

 ああ、でもあんな美人で優しいお姉さんが俺の彼女で良いんだろうか……何だか夢みたいな気がするし、騙されているんじゃないかと思っちゃうが、


「緊張するなあ……あ……」

「あはは、そうなんだ」

「ああ、それでさ」

 どう由乃さんに伝えようか、考えながら通学路を歩いていると、校門の近くで一組のカップルが仲良さそうに歩いているのが目に入る。


(あ、あれは……)

 奈々子じゃないか! しかも、男子と一緒に……あいつが、奈々子の新しい彼氏か!?

 本当に他の男と付き合ってやがる……手まで繋ぎやがって、クソ……!

 もう吹っ切れたと思ったが、奈々子が俺以外の男と仲良くしているのを目の当たりにして、改めて嫉妬心が湧き出て来た。


 少し前まで、あいつの隣にいたのは俺だったのに……うう、今頃になって涙が出て来た。

 遠目ではあったが、あんな幸せそうな笑顔、俺にも見せていただろうか?

 何人目の彼氏だか知らないが、俺をフってまだそんなに日にちも経ってないのに、よくもまあ他の男と何食わぬ顔をして付き合えるものだ。

 だったら、俺も遠慮する事はないな。由乃さんと付き合っても……そんな、当てつけみたいな気持ちで付き合うのは失礼か。


 でも、由乃さんとは本気で恋人同士になりたい。

 俺で釣り合いが取れるかどうかわからないけど、彼女とデートしていて奈々子と付き合っていた時よりも、楽しかったし、由乃さんにリードされるのも悪くないと思った。

 奈々子はどうせすぐに今の彼氏とも別れるんだろうが……俺を振った事を後悔させてやるくらい、由乃さんとラブラブになってやるぜ。

 元カレが自分の姉と付き合うなんて知ったら、どう思うか、


 そして、放課後――

「じゃあな」

「ああ、またな」

 友達と途中まで一緒に帰り、駅の近くで別れて、一人で家路に着く。

 奈々子と別れた日常にもだいぶ慣れてきたが、あいつは今の彼氏と一緒に放課後デートでもしてやがるんだろうか。

 まあ、今更どうでも良いけど、由乃さんには何時ごろ告げようかな……。


「陸翔君」

「え? ゆ、由乃さん?」

 夜中の何時ごろに由乃さんに電話するか考えていると、背後から由乃さんにポンと肩を叩かれて、彼女に声をかけられ、ビックリして引っくり返りそうになった。

「えへへ、やっぱりそうだった。今日、午後、休講……授業が休みになっちゃってね。それで、もしかしたら、ここに来れば陸翔君にも会えるかなって思って……」

「あ、ああ……そうだったんですね。ビックリしましたよ」

「うん、ゴメンね」

 まさか、本人から直接出向いてくるなんて思いもしなかったので、動揺してしまい、声が上ずってしまう。


(由乃さん、今日も綺麗だな……)

 大学の帰りみたいだが、デートの時と同じような服装をしていて、大人っぽくていかにも女子大生って感じのお姉さんだ。

「あの、昨日の事ですけど……」

「え? ああ、返事ならいつでも……」

「いえ。あの、俺で良かったら、その……つ、付き合ってくださいませんでしょうか」

「え……?」

 思い切って、昨日の返事をここでし、由乃さんも面食らった顔をして、しばらく黙り込む。


 まさか、ここで告白の返事をしてくるとは思わなかったんだろう。

 ど、どうだ……? 実は昨日の事は冗談とか言ってこないか、心配になってしまい、しばらく由乃さんを見つめていると、

「ぷっ……もう、ビックリしたじゃない」

「え、はは……すみません、早い方が良いかなって思って」

「うん。陸翔君も私で良いんだね?」

「そ、それはもちろん!」

 むしりそれはこっちのセリフだったんだが、どうやら昨夜の事は冗談ではないらしく、それを確認できただけでもホッとした。


「くす、よろしくね、陸翔君」

「はい、こちらこそ……ああ、何か緊張しちゃいますね」

「んもう、陸翔君の方が経験者でしょう。私なんて、今まで付き合った人もいないんだから……」

「マジですか?」

 未だに信じられないんだが、世の中の男どもはこんな美人を放っておいたのか?

 いや、俺も最初会った時は、綺麗なお姉さんくらいしか思ってなかったけど、告白されても全部断っていたって事?


「何か男の人と付き合うってのよくわからなくて……奈々子はよく何人もの男子と付き合えるなって感心していたの」

「あー、そうですよね。早くも新しい男、作っていましたし。俺もそれで吹っ切れました」

「ゴメンね、妹が迷惑かけて」

「由乃さんは何も悪くないですって。あはは、じゃあ一緒に帰りましょうか。送りますよ」

「うん」

 早速、手を繋いで、由乃さんと一緒に彼女の家まで帰っていく。

 前の彼女のお姉さんってのが複雑な気持ちにもなるけど、奈々子の百万倍は大事にしてやろうと決心しながら、由乃さんの手を握ったのであった。

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