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彼女をNTRれたら、彼女のお姉さんと付き合うことになって、それ以上にラブラブになりました  作者: beru


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第三十三話 今カノに言いつけるが……

「くそ、奈々子の奴、結局練習もサボりやがって」

 保健室に行ったきり、奈々子はグランドには戻って来ず、残りの時間は一人で校庭を適当に走るしかなかった。

 男子の友達に付き合ってもらおうかと思ったけど、奈々子とは体格が違うから、あんまり練習にならないと思い、十分に二人の息を合わせられないまま本番を迎える事になってしまった。


「ちっ、やっぱりあいつと仲直りとか絶対に無理だって」

 由乃さんは俺に奈々子と仲良くして、おまけに男癖の悪さも直してほしいと思っているんだろうが、とても俺の手に負えるような女じゃないし、そこまで面倒見切れない。

 しかも、嫌味を言ってくるだけじゃなく、手まで上げて来やがって、こっちも我慢ならなくなってきた。

 今日のことは由乃さんに全部言いつけてやろうっと。

 俺は何も悪いことしてないし、あいつが一方的に足踏むわ、イチャモン付けてくるわで、やりたい放題だ。

 一回、あいつの顔面にストレートパンチをお見舞いしてやりたいが、本当にやったら、由乃さんとの関係が終わりそうなので、自重しなければな。


『あ、陸翔君。こんばんは』

「こんばんはです」

 夜中になり、いつもの様に由乃さんに電話をかけると、

『くす、明日は体育祭なんでしょう。奈々子との二人三脚、がんばってね』

「はい。あの、奈々子のことで話があるんですけど、いいですか?」

『何? あの子、また何かやったの?』

 今日の体育祭の練習のこと、由乃さんに全部話してやる。

 いざ話すとなると、少し躊躇が出てきたが、俺が何を言っても聞かない以上は、由乃さんに頼るしかない。


『まあ、あの子が陸翔君にそんな事を……』

「そ、そうなんですよ。由乃さんの方からも何とか言ってくれませんか?」

 若干オブラートに包みはしたが、奈々子に練習中に足を踏まれて、練習を途中で逃げ出したことも伝える。

 二人の仲が嫌悪になるのは俺もちょっとだけ気が引けるけど、俺の身も持たなくなるので、由乃さんに何とかしてもらわないと。

「俺達が交際するのそんなに嫌なんですかね?」

『う、うーん……そうかもしれないけど、元はあの子も悪いわけだし……』

 おっ、由乃さんも奈々子が俺を振った事が元凶なのはわかってくれているのか。

 大体、奈々子に文句を言う資格なんかないんだよ……お前の方から振った以上、俺が誰と付き合おうが、もはや俺の勝手だ。

 ましてや、自分だって、好き放題男遊びしている分際で、どの口が言えるのかと感心してしまう。


「正直、あんまりあいつにイビられると、俺も限界に来ちゃうかもしれないんですよ。どうすれば、あいつ俺達の交際認めてくれますかね?」

『うーん……陸翔君の事、もうよく思ってないみたいだから、難しいけど……わかった。私の方からも言っておくね』

「本当ですか?」

『うん。もう、陸翔君に手を挙げるような事をしちゃ、めって言っておくからね』

「…………」

 と、由乃さんは力強い口調で言ったつもりなんだろうが、今のを聞いて、俺は確信してしまった。


(この人、やっぱり駄目かも……)

 駄目ってのは、由乃さんは自分の妹に甘くて、強く叱るような事はないと今ので確信してしまったのだ。

 奈々子も、『お姉ちゃんは私に甘々だし』とか言っていたから、普段から由乃さんに何か言われても、気にもしてないんだろう。

「よ、よろしくお願いします」

『うん。私だってね。言う時は、結構キツく言っているんだからね。陸翔君は私の彼氏なんだから、もうそんな事はしちゃ駄目だよってちゃんと注意するから』

 おっ、由乃さんも俺を彼氏だとちゃんと言ってくれたか。

 奈々子の事はともかく今のは地味に嬉しいなあ。

 不安はあったが、今の言葉を聞いて、舞い上がってしまい、今夜はウキウキした気分のまま、床に就いてたのであった。


 翌日――

「そろそろ、二人三脚か……」

 体育祭当日になり、クラスの応援席を立ち、もうすぐ始まる二人三脚に向けて準備をする。

 奈々子は何処に行るんだ……あ、いた。

「おい。そろそろだぞ」

「わかっているわよ。あんまり、馴れ馴れしくしないで」

「一緒にやるんだから、しょうがないだろ。ましてや、二人三脚だろう。馴れ馴れしくせざる得ないじゃん」

「うるさい。あんたが勝手に立候補してきたくせに」

 そりゃそうだが、お前のお守りを由乃さんに頼まれているからだっての。


「陸翔さ。昨日、お姉ちゃんにチクったでしょう」

「あ? うん、言ったよ。お前が俺の足を踏んだこともな」

「性格悪いよね、やっぱり。私とお姉ちゃんの仲がぎくしゃくしないかとか、考えなかったんだ」

 二人三脚の集合場所に向かう途中で、奈々子が昨日の事を聞いてきた。

 少しは考えたけど、由乃さんしかお前の暴行を止められるのがいないから、仕方なくだよ。

 というか、お前が全面的に悪いのに、何で被害者ぶっている訳?

「由乃さんに叱られたんだろう。いい気味だな」

「ふん。陸翔は私の彼氏だから、そういう事しないでねってね。あー、本当気分悪い。あんたみたいなクズを『彼氏』だって。陸翔さ、お姉ちゃんに何か弱味握って脅したりしてないでしょうね?」

「する訳ねえだろ。お前じゃないんだからさ」

 いくら何でも、そこまでして彼女が欲しいとは思わない。


 まあ、奈々子に熱を上げていた時は、どうやって振り向かせようか考えていたけどさ。

「由乃さんに叱られるのが嫌なら、俺と由乃さんの交際をせめて黙って見てるんだな。大体、お前だって……いでっ! 何しやがるっ!」

「偉そうに説教するんじゃないわよ! あんたなんかに、ウチのお姉ちゃん、傷物にされて、本当許せない!」

 いきなり、俺の膝の裏に蹴りを入れてきて、一方的にそう捲し立ててきたが、何が傷物だよ。

 散々、俺の心に傷をつけてきたのはお前じゃないか。

 心だけじゃ飽き足らず、体にまで怪我させようとしやがって……マジで堪忍袋の緒が切れそうだった。


『これより、二人三脚を始めます。出場する人は位置についてください』

「ちっ……おい、やる以上は足を引っ張るなよ」

「ふん」

 こいつと不毛な言い争いをしている間に、時間になったので、足をひもで縛り、スタート位置に着く。

 あー、もうストレスが溜まりまくって仕方ない。


「ヨーイ……ドン」

 合図と同時に、一斉に走者が走りだし、俺も奈々子も肩を組みながら、走っていく。

 意外にもスタートダッシュに成功したようで、一番と二番を争う位置に付いていた。

「いち、に、いち、に……」

 奈々子と呼吸を合わせながら、ゴールを目掛けて走っていき、他の走者とデッドヒートを繰り返していく。

 このまま一番に……。


 パアンっ!

『一位、七組。二位、四組……』

「はあ、はあ……くそ、二位か……」

 僅差で一位に及ばず、ちょっと悔しい気持ちになる。

 思った以上に、良い順位ではあったが、どうせなら一位になりたかったな。

 由乃さんとも特訓した甲斐があったな。


「惜しかったな……って、おい」

「早く離れてよ。もう終わったでしょう」

「はいはい」

 一位になれなかったのが不満だったのか、奈々子は憮然とした顔をしながら、足のヒモを解いて、さっさと俺の元から去っていった。


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