第二十七話 今カノの密着個人授業
「ふふ、明日はいよいよ由乃さんが家に来るぞ」
もう楽しみ過ぎて、今からそわそわして仕方ない。気合いを入れて、部屋の掃除をしないとな。
もしかしたら、由乃さんとそんな雰囲気になるかもしれないけど、まああくまで勉強を見てもらうって建前なので、それは忘れないようにしないとな。
後は邪魔が入らなければいいんだが……まさか、奈々子が付いてきたりしないよな?
由乃さんが心配だから来たなんて事態も有り得なくはないので、その時は奈々子だけ叩き出さないとな。
「あ、陸翔君。こんにちは」
「どうも」
そして次の日になり、由乃さんと待ち合わせ場所である駅前で彼女と落ち合う。
今日は陽射しが強いからか、ノースリーブのブラウスとジーンズという格好で来たが、その格好だと由乃さんのスタイルの良さがよくわかるなあ。
「じゃあ、今日はよろしくお願いしますね」
「うん。って、どうしたのキョロキョロして?」
「いえ、由乃さん一人ですよね?」
「え? うん、そうだけど、どうして?」
「はは、すみません。奈々子が心配だから、付いて来たなんて事があるかなとか、何とか」
「くす、大丈夫よ。奈々子、今日は友達と約束があるって言ってたから」
ならよかった。
もしかして、俺に気を遣ってくれたのか……そんな訳はないか。
「じゃあ、行きましょうか」
「うん」
早速、由乃さんを俺の家に案内していく。
楽しみ過ぎて、ワクワクが止まらないわ。
「へえ、ここが陸翔君の家なんだ」
「そうなんです。さ、上がってください」
「お邪魔します」
何事もなく俺の家に到着し、由乃さんを俺の家に上げる。
よし、親父もお袋も居ないな。万が一、帰ってきていたらどうしようかと思ったが、最悪の事態は回避できたようだ。
「ここが俺の部屋です。ささ、どうぞ由乃先生」
「もう、何、先生って?」
「実際、今日は勉強を教えてくれるんですよね?」
「ちゃんと真面目にやるのよ」
「努力します。あ、飲み物用意してきますね」
「こ、こら。断言しなさいよ、そこは」
まあ、勉強はすると思うけど、出来れば保健体育の勉強でもしたいなーって思ったりしながら、台所に行き、冷たい飲み物を二人分、用意していったのであった。
「麦茶しかなかったんですけど、いいですか?」
「うん。さて、早速、始めましょうか……って、ちょっと近いよ」
「えへへ……由乃先生に密着授業して欲しくて」
冷たい麦茶の入ったコップを二つ置いた後、由乃さんの隣に座り、これでもかというくらい体を密着させて、彼女の腕を組む。
これじゃ、勉強できないなーなんてね。
「んもう、真面目にやらないと駄目よ」
「うーん、由乃先生が美人過ぎて集中できないですね」
「何、変な事を言っているのよー……あん、変な所、触らない」
「へへ……よいではないか、よいではないか」
由乃さんも口では嫌がっている物の、本気で抵抗している様子はなく、むしろ楽しんでいるような笑顔をしているので、こっちも遠慮はしないで、彼女の肩に手をやったら、腰の辺りを触ったりして、イチャイチャしまくる。
ふん、奈々子が見たら発狂物だろうな。カメラで送りつけてやろうかな。
「ほら、いい加減に……んっ!」
由乃さんの顔を引き寄せて、強引にキスをする。
ふふ、ちょっと強引すぎるかな?
でも我慢できなかったので、許してほしいなーって。
「んっ、もう……真面目にやろうよ……」
「我慢できなかったので……わかりました、そろそろやりましょうか」
「もう、本当よ」
顔を離すと、由乃さんも頬を紅潮させながらも困った顔をしていたので、そろそろ勉強を始める事にする。
「えっと、試験の範囲は……」
「ここからここまでです。由乃さん、得意科目なんですか?」
「私? えーっと、国語とかかな……あと、音楽は好きだったけど、今回は試験科目にはないんでしょう」
「音楽! 素晴らしいですね」
「え、ええ……ピアノ習っていたし……」
ああ、由乃さんも習っていたのか。確か、奈々子も昔、やっていたと言っていたな。
教科書と参考書を並べて、試験範囲の確認をするが、結構広いなあ……あんま、遊んでいる暇はないかも。
「塾では何教えているんですか?」
「国語と算数かな」
「なるほど……俺ももう少し、若ければ由乃先生の塾に通えたのにな」
「ちょっと、変な事言わないの。いくらなんでも、小学生と付き合えないよ。今だって、結構危ないのに……」
流石に小学生と交際するのは犯罪なのはわかるが、高校生と付き合うのはそんなにいかんのか。
でも、由乃先生みたいな美人の先生がいたら、勉強どころじゃないな。
「取り敢えず、英語と国語お願いしますね」
「うん。それなら、見れるかな」
文学部とか言っていたので、文系科目なら見れると思い、英語の教科書と問題集を並べて、勉強を始める。
もう少しイチャイチャしたいけど、中間試験も近いので、少しは真面目にやっておこう。
「…………うーん、ここの訳し方、どうするんでしたっけ?」
「え? どれどれ……ああ、この文は……」
英語の長文問題の訳し方がわからず、由乃さんに密着して教えてもらう。
真剣な顔つきで、教えてくれるので、俺もちょっとは応えないとな。
「わかった?」
「はい。やっぱり、教え方上手ですね」
「そうでもないけどね」
いや、実際に教え方は上手いと思う。
まあそれ以上に、密着授業って時点で、それ以上に意識しちゃうんだけどね。
「ちょっと、休憩にしません」
「うん」
疲れてしまったので、少し休憩にすることにし、麦茶を飲んで一服する。
「ふふ、真面目にやってくれて嬉しいわ」
「そりゃ、由乃さんが見てくれるんですから。あのー、ちょっとお願いがあるんですけど、いいですか?」
「何?」
「おっぱい揉んでいいですか?」
「ぶっ! な、何言いだすのよ!」
唐突に俺が変なお願いをしてきたので、由乃さんも思わず吹き出す。
「いえ、何かムラムラ来ちゃって。お願いします、このままじゃ勉強できないです」
「も、もう……エッチ過ぎるよ……」
由乃さんも呆れているようだが、ちょっとソワソワしており、少しは悩みながら、
「じゃ、じゃあちょっと触るだけなら……」
「あ、ありがとうございます! じゃあ、早速……」
「ひゃああっ! ちょ、ちょっとだけって言ったじゃない!」
渋々ながら、了承してくれたので、後ろから思いっきり両手で揉むと、由乃さんは悲鳴を上げてしまった。
「ああん、もう……陸翔君にはこれを渡しておきます!」
「え? なんですかこれ?」
由乃さんは顔を真赤にしながら、バッグから何かを取り出し、俺に手渡す。
なんだこれ?
四角くてアルミに包装されて束になっているが、これ何だろう?
「開けて良いですか?」
と言うと、由乃さんも頷いたので、一個切り取って開けると、
「ん? ぶっ! これって……」
初めて見たが、コンドームって奴か?
なんでこんなのを……
「陸翔君は私と会うときはこれを持ってなさい。でないと、危なかっしいわ」
「は、はい」
流石に警戒されたのか、ちょっと反省し、その後は真面目に勉強する事にした。




