アスファルトのちいさなはな
あるひのしごとがえり
ほどうのまんなかのアスファルトに
ほそいひびがはいってて
そのひびのすきまに
いちりんのはながさいていた
さいているといっても
はなはまださいていない
まだまだつぼみだ
でも
つぼみのじょうたいでもわかる
さいたらきっと
このはなはとてもきれいな
はなをさかせるだろう
そのはなのことをみつけていらい
わたしはしごとのいきかえりに
そのはなをなんとはなしにみるようになった
まいにちまいにち
そのはなをみていると
だんだんだんだん
つぼみがほどけてきてて
だんだんだんだん
わたしはそのはなが
はなひらくのを
こころからまつようになっていた
しごとはつかれるしいやだけど
このはなにであって
このはなをまいにちかんさつするようになって
しごとにいくのがたのしみになっていた
しごとにいくのがたのしみというより
このはなにあうのがたのしみになっていた
あるあさのこと
そろそろきれいにはなひらいてるかなと
うきうきしながら
あのはなのもとにいそぐと
はなが
なくなっていた
わたしはあわててまわりをさがした
けど
あのはなはどこにもなくて
わたしはおちこみながらしごとへむかった
すると
そのはながさいていたちかくのおうち
そのおうちのまえに
そのはながさいていた
まっかなはなびらをぴぴんっとひらいて
さいていた
そのはなをみつめていると
そのいえのひとなのか
きひんあふれるおばさまがでてきた
きょとんとしたかおでわたしのことをみて
わたしがはなをみていることにきづくと
「ああ」
といって
そのひとはほほえんだ
「そこのアスファルトのすきまにさいていたおはながきれいで。でも、そんなみちのまんなかだといつかだれかにふまれてしまったりしそうだったから、おうちにつれてきたのよ。きれいなおはなよね」
と
きひんあふれるおばさまはいった
「ほんと、きれいですね」
ちいさなはちにさく
あかいはな
なまえもしらないまっかなはな
わたしはじかんをわすれて
うつくしくさくはなを
いつまでもいつまでもみつめた