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第1話

突然小説家になろうに現れた者です、カクヨムでも同じ作品を投稿しています。




 僕達の出会いは偶然だった。けど、今思えば…



「危ない!」


「きゃ!?」


「ふぅ…大丈夫?」


「う、うん」


 ヒーローに憧れる僕に神様がくれた最高のプレゼントだったかもしれない。


「いよいよ明日が本番…なんか緊張してきた」


 僕の名前は野原大輔(のはらだいすけ)、なんの取り柄も良いところもない高校1年生で成績も運動神経も上の下といったところだ。


 趣味は体作りのための筋トレとゲーム、そして…


「頑張ってお小遣い貯めて作った甲斐があったな、自分のヒーロになるためのコスプレ衣装!」


 特撮ヒーロー、つまり特撮作品が一番の趣味だ。


 実際、自分の部屋を見渡して見ると棚の中にはかなりの変身アイテムのおもちゃやヒーローのロボット玩具やアクションフィギュア、DVDやblue-rayBOX、主題歌CDなどで溢れかえっている。


 ちなみに特撮ジャンルは等身大ヒーローはもちろん、巨大ヒーロー、戦隊ヒーローとジャンルは幅広い方だと自分では思っている方だ。


「制作期間約半年、始めて作ったコスプレ衣装」


 そして今、僕は部屋のハンガーに掛けている自作のヒーロースーツを眺めていた。なぜこんな物を作ったかって?


「これで僕も…ヒーローになれるんだ!」


 理由は単純、僕が特撮ヒーローに憧れているからだ。


 僕は昔からカリスマ性が高く、皆の頼りになるまさにリーダーのような特撮ヒーローの主人公が格好良くて好きでいつの間にか憧れていた。


 そんな憧れに少しでも近づきたい、そんな思いで制作したのがこの自作コスプレ衣装だ。


 これがあれば見た目だけでもその主人公になりきれる、そんな気がしたからだ。


「今回始めて作った奴はありがたい事に装飾が少なめだから少し助かったけど、それでも大変だったなぁ」


 今回僕が作った衣装は長い歴史のある戦隊ヒーロー37作品に出てくる恐竜モチーフの戦隊のレッドの衣装だった。


 こだわりとして何度も何度も作品を見直したり、イベントで実物のスーツを確認しながら作った質感で、できるだけ本物に近づけられるように頑張った。


「明日は早いし、そろそろ寝よう」


 そう思った僕は特撮番組を流していたテレビを消してから照明の明かりを落とし、ベッドに入って眠りにつくことにした。


 翌日、僕はいつもより早く起きて準備を済ませてからコスプレのイベント会場である公園に向かっていた。


「これがコスプレイベントの会場かぁ、予想はしてたけどやっぱり凄い人集りだなぁ…」


 僕は公園に着いた瞬間、その人の多さに驚いた。


 この公園はかなり広く、例えるなら札幌にある大通り公園と変わらない大きさの場所に遠目から見てもわかるぐらいの人集りができていたのだ。


「よーし、頑張るぞ!」


 僕は少しだけ不安な気持ちが生まれたけどそれを気にしない事にし、持ってきた衣装に着替えるために仮設された更衣室に向かって着替えることにした。



「はい、オッケーです!」


「ありがとうございます」


 それから数十分後、僕は衣装に着替えて同じ作品に出てくるヒーローのコスプレをした人やその作品が好きな人達、小さな子供などと写真撮影をしていた。


 正直言って最初は不安な気持ちもかなりあったが元ネタとなった作品は特撮ファンからしてもかなり人気の高い作品だったためありがとう事にそこそこの人と関わる事ができた。


「にしても暑いな〜、時間的にもそろそろ休憩するとしようかな」


この日は5月下旬でまだ夏ではなかったがそこそこ気温の高い日だ、なんせこの衣装は見栄えはいいが熱が籠もって暑くなりやすい、さすがに熱中症になったら不味いので僕は一度休憩を挟む事に決めた。


「ぷはぁ!生き返る〜。やっぱ水分と休憩は大事だな」


 それから僕は自販機で500mlぐらいの水が入ったペットボトルを購入し、ベンチに座りながら頭に被っていたマスクを外して水分補給をしていた。


 かなり汗を掻いていた影響だからかいつもより水が美味しく感じる。


 そんな時僕はある人物を見かけた。


「あの人って…霧山凛子(きりやまりんこ)さん?」 


 僕はなんとなく辺りを見渡していると綺麗な栗色の髪でロングヘアーの女子で同じクラスの霧山有里子さんを見つけた。


 クラスメイトと言ってもほとんど関わりはなく、霧山さんはいわゆるギャル系の女子で人当たりも良く、誰に対して優しくて友達も多くて皆から好かれているような天使のような存在でよくモテている。


 実際に彼女に告白した男子は沢山いるらしいが残念な事に皆玉砕しているようだ。


 当然興味がないわなくではないが、現実的に人気者の彼女と陰キャオタクの僕が釣り合う訳がなく、学校でもほとんど話したことはないし、霧山さんは僕の事を知っているかすらも怪しい。


 つまり僕にとって彼女は手が届かない高嶺の華、と言ったところだ。 


「凛子〜」


「待って〜今、そっち行くから〜」


なんとなく霧山さんの周りを見てみると彼女は横断歩道で赤信号を待っていて、その先に彼女とよく一緒にいる友人らしき人物達が待っていた。


「霧山さん、友達と遊ぶ約束でもしてたのかな?」


 僕はそんな事を考えていると青信号になった。凛子さんはそのまま横断歩道を渡ろうとしたその時、僕はあることに気が付いた。


「まずい!」


僕は凛子さんが横断歩道を渡り始めたその瞬間、彼女の近くにタイヤがパンクして火花を散らしながら迫ってくるトラックがいるのを発見した。


「凛子!」


「えっ?」


 このままじゃ、彼女が危ない。


 そう思った僕は咄嗟にマスクを被り彼女の元に全速力で駆け寄った。


「危ない!」


「きゃ!?」


 僕は急いで彼女を抱き上げ、間一髪のところでトラックとの衝突を防いだ。


 コントロールを失ったトラックはフラフラ揺れながらそのまま近くにあった電柱柱にぶつかった事によって止まった。


「ふぅ…大丈夫?」


「う、うん」


 ひとまず安心した僕は息を一回吐いてから有里子さんを降ろした。


 とりあえず怪我がなかった事が何よりも良かった。


「凛子!」


 それからすぐ霧山さんの友人と思われる人物が彼女に駆け寄って来た、彼女もまた霧山さんに怪我がない事を安心し、彼女を優しく抱き締めた。


 邪魔したら悪い、そう思った僕は何も言わずにその場から離れようとしたその時…


「待って!」


 霧山さんが僕を呼び止めた、僕は足を一度止めて彼女の方に振り返った。

 

「助けてくれてありがとう、君、名前は?」


「ぼ、僕は…名乗る程の人じゃないですから。そ、それじゃあ」


 霧山さんは僕の事を誰か聞いてきた、それもそうだ、今の僕はヒーローのコスプレをしているただのコスプレーヤーだ、同じクラスにいる陰キャ男子だとは思わない。


 あまり、というか女性耐性がほとんどない僕はどうすればいいのかわからなくなり、適当な事を言ってこの場から走り去った。


 どうせ僕が彼女と関わるなんてこれっきりだ、この頃の僕はそう思っていた…

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