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少女のたびに笑顔と幸福を  作者: 貝になった先輩
第二章 憧れの偶像と崩れ去る贋作
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憧れの偶像と崩れ去る贋作3

何処に行ったのでしょう、と力なくつぶやくメイプルン。


「とにかく、ビーフボウルさんのためにも魔族を倒して連れ戻さないといけません!! みんなで探しましょう!!」


メイプルンはそう言うがホットケイクが乗り気でない。シフォンはどうしたらいいのか分からなくてあたふたしている。


「確かにここまで送ってくれたビーフボウルさんのために助けないととは思うけど……でも私達は一度魔族に負けてるのよ」


「大丈夫、次は勝てます!!」


ニコニコで自信満々に答える。特に何も考えていないような顔で言う。


「新しい仲間も増えましたし!! 行けます!!」


「どうやってよ……」


気合いだけでなんとかしているメイプルンを止めようとするホットケイク。


「作戦くらい考えてから行きなさいよ!! あの時は死なずに済んだけど今度は師匠も来ない!! 消されるかもしれないのよ!!」


「なんかすごくアレです……いい感じにやれば倒せます!!」


「あ、あの、私に期待されても……」


自信なさげに話すシフォンを放っておいて、アレやいい感じになんて言ってるメイプルンにホットケイクが呆れた。


「というか、そもそも場所わかるの?」


「簡単ですよ! こんな感じで……くんくん……」


メイプルンは突然なにか匂いをかぎ始める。他の二人から見たら明らかに挙動不審だ。


「何してんのよあんた……」


「前に戦ったときに思ったのですが……魔族からはなにか懐かしいような匂いがするんです」


「懐かしい? 何よそれ。 魔族特有の匂いなんてあるの?」


訳の分からない二人は困惑しながらメイプルンを見ている。


「はい、それもすごく懐かしいような、嗅いだことあるようなそんな……おかしいですね魔族とあったことなんてなかったはずなのに」


「……」


なにか思うところがあるかのように黙り込んでいるシフォン。彼女が前に見たもう一人のメイプルンに関係するのだろうか。


とにかく、目撃者はいない。ライブ会場にいたスタッフはみんな気絶しているし閉鎖された空間だからだ。

そうなるとこのメイプルンのよくわからない勘に頼るしかない。幸いこういうときのメイプルンの勘は頼りになる。


「皆さん、こっちだと思います!!」


ホットケイクは走り出すメイプルンを即座に追いかけ、シフォンも少し迷いながらホットケイクの後ろをついていく。


「ちょい待ち!!」


ホットケイクはメイプルンの体を掴み止めて引っ張った。


「なにするんですか!!」


「魔族は強いって言ってるでしょ? なんか勝つ方法あるの?」


「気合いで!!」


ニッコリと微笑むメイプルンにあきれて何も言えない二人、しかし、呆れてる場合ではない。

早く魔族を追わなければならない。そうでなければアイドルの少女の命が危ないのだ。即興でさくっと作戦を考えたホットケイクは走りながら作戦を伝えた。


「作戦言うわよ!! まずは魔法でシフォンが敵を打ち落とす!! その後、抵抗してくるだろうからそれを私が防いでその直後に盾から飛び出したメイプルンが斬る。終わり!!」


「了解です!! さすがホットケイク!!」


不安そうな顔をするシフォンにメイプルンが頭を撫でながら言った。


「絶対大丈夫です!!」


「え……メイプルンさん?」


「絶対大丈夫ですから!! 私が保証します」


自信満々の笑みでメイプルンはシフォンを見ている。何処からそんな自信が出てくるのかは分からないが、その笑顔から安心感を少しだけ得られたシフォンはほんの少しだけ勇気をもらう。

なんとか成功させてやる、そして、みんなでアイドルを連れ帰ってライブを成功させるのだ、と意気込んだ。


 匂いを嗅いでいるメイプルンに付いて行くこと数十分、小さな洞穴のような場所に到着した。


「ここですね……!!」


メイプルンたちは小さな洞窟のような場所を見つけた。彼女いわくここの中から匂いが出ているらしい。


「じゃあ、作戦通り頼むわよ……」


「は、はい、頑張ります……」


中へと入っていくと天井の高い小部屋のような場所に出た。


「ようこそ、お嬢様方。私はカルボナーラと申します」


白いヒゲを蓄えた、初老のコウモリの翼を持つ魔族が三人に挨拶する。そこには大量の墓石が立っている。


「貴方がアイドルをさらった魔族ですか!?」


「さっさとアイドルを返しなさいよこのコウモリ野郎!! あいつの性格は終わってるけど、みんなあいつの歌を待っているのよ!!」


「……あの女はいないのですか?」


カルボナーラがメイプルンたちに問う。


「あの女?」


「そう、蔦の洞窟にて偵察していたボロネーゼという魔族の腕を持っていった、あの女性ですよ」


「まさか、師匠のことですか!?」


師匠のことを知っているのか、とそう思いメイプルンは聞き返した。


「おそらく、その方でしょう。 ご一緒では?」


「いえ!! 師匠とは別れました!!」


カルボナーラは怪しいと感じたようでじっとメイプルンの顔を見ている。その後、彼は小さな丸メガネをかけた。


「な、なんですか!?」


「ほうほう、なるほど……」


「さっきから、なんでメイプルンの顔を見つめてるのよ!! あんた変態!?」


じっと見つめて動かないカルボナーラにしびれを切らし、ホットケイクが後ろから斬りかかる。


「おっと、失礼。 あまりいたいけなお嬢さんに手を出したくはないのだがね」


「なっ!?」


完全に不意打ちだったはずの攻撃はいとも簡単にカルボナーラに受けられてしまう。


「え、嘘!! 完全な不意打ちだったのに!? なんで受けられるの!?」


「ははは、この年になると普通見えないものまで見えるようになるのだよ。 なるほど、シフォンの魔法で私を撃ち落とし、ホットケイクの盾で守りながらメイプルンを突撃させ一刀両断、ですか」


「え!? そんななんで!?」


シフォンが驚嘆してカルボナーラを見る。


「師匠とは蔦の洞窟を出て、一緒に食事をしてから別れた、行き先はわかっていない、と」


「なんで、そんなことまで!?」


作戦だけならともかく師匠と離れたときのことまで言い当てられてしまい一同、唖然、愕然。


「まあ、彼がいないのならみなさんとことを構える理由はありませんな、アイドルならそこのもう街に返しました」


「嘘言わないでください!!」


返しているわけがない、メイプルンはそう思ったのだが何を考えているかまたも言い当てられてしまう。


「返しているわけがない、嘘をついていたら倒してやる、ですか」


鼻で笑うカルボナーラ。


「何がおかしいんですか」


「どうやって倒すのか、楽しみですね」


「メイプルンさん、あの、その、ここは的に引かせるべきだと思います」


メイプルンを制したのはシフォンだった。


「お嬢さん、一番小さいのに頭がいいね。 私を倒す手段がわからないから今は見送るべきだ、全く持って正しいですよ」


「くっ」


悔しそうな顔をするホットケイクとメイプルン。カルボナーラがゆうゆうと歩いて帰っていくのを黙ってみているしかなかった。

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