憧れの偶像と崩れ去る贋作1
よろしければ感想お願いしますね!!
皆さんは今の自分に満足していますか? 他の誰かになりたいと思ったことはありませんか?
私は何度もあります。他の人を見て羨ましいと思わなかった日はありません。でも、いくら頑張って真似してもやっぱり自分は自分なんだって思うんです。
今はそれでいいと思えるようになったんです。
自分を愛せないということがいかに恐ろしいことか、この事件で分からされましたから。 ーーー植物学者 シフォンの伝記
メイプルンたちは師匠が置いていったテントで一夜を過ごし、宛のない旅を始めた。
地図を広げるとここより西側に小さい村のような場所があった。
「これなんでしょう?」
地図を見たメイプルンは村のような表示がある場所を指さして話した。
「これは、村?」
「隣村のルーン村ですね」
シフォンがそう話す。シフォンは蔦の洞窟を始め様々な場所に一人で行っていた。他の二人に比べて土地勘があった。
隣村にはよく植物図鑑を取りに行っていたらしい。
「行く宛もないですし、行ってみませんか?」
「確かにとにかくあの国の領地から出たほうがいい気がします。 皆さん、あの……追われる身ですし」
メイプルンは犯罪者として、シフォンは行方不明者として、ホットケイクは貴族の娘として追われているのだ。皆、早く国外に出たほうがいいだろう。ボサボサしていたら追っ手が来るかもしれない。
「馬車に乗ればすぐに付くわね」
「早速馬車を探しましょう、お金は貴族のホットケイクが出してくれるはずです」
「え?」
ホットケイクはお金を持って出てくるだけの余裕はなかった。とにかく急いででなければならなかったのだ。
「いや、ないけど」
「え?」
完全にホットケイクのお金を当てにしていたメイプルンは完全に困ってしまった。徒歩移動しかない。
「徒歩で移動するとなるとなかなか遠い距離ですね」
シフォンは様々な場所に行ったことがあるが、ほとんどが馬車移動だったためあまり長距離歩き慣れていなかった。
「困りましたね」
三人が困っていたとき、大量の人と馬車がこちらに近づいてきた。
身なりも様々で高そうな服に身を包んだ者から一般市民同然の身なりのものまでいた。そして、先頭にはまばゆく光り輝く王冠を見につけた青年がいた。
「あ、馬車です、馬車!!」
メイプルンは一切恐れずにその一団近づいていく。そうして王冠を被った青年に話しかけた。
その時シフォンとホットケイクは内心かなり焦っていた。王冠をかぶっているものなど王以外はありえない。このままでは身柄が拘束されて皆、元いた場所に返されてしまうだろう。
「ん? 君は?」
「私はメイプルンです!! アリアントレイトから来ました!!」
ホットケイクはこのバカ!!っと心のなかでつぶやき、シフォンの顔色は青ざめていった。
やばい、バレると二人が思った、が王の対応は意外なものだった。
「アリアントレイトの誘拐犯もそんな名前だったが、誘拐犯が名前をなんてありえないし別人か。 それで私になんのようだい?」
そんなバカが居るわけない、という思考になってくれて九死に一生を得た二人。そんな二人の心配を他所に
「はい、私たちお金がなくて、馬車に乗せてくれる人を探していたんです!!」
「お前たちはどこへ行きたいのだ」
「隣村のルーン村です」
「君たちもルーン村に行くのか。 プリンのコンサートが目当てなのかい?」
シフォン以外は聞いたことも見たこともない。ホットケイクは芸術には疎いし、メイプルンはそもそも知る機会がないのだ。
「あ、あの、その……はい。私もプリンさん、可愛らしくて羨ましいと思ってます」
「うーん、連れて行ってあげるよ。 後ろから二番目の馬車が空だからそこに入ってくれ」
「え? ありがとうございます!!」
なんとかルーン村までの足を手に入れたメイプルン一行は指定された馬車に乗り込む。初めて馬車に乗るメイプルンはめちゃくちゃにはしゃいでいる。
「うわーー!! 馬車だあ!!」
走って馬車の中に入っていったメイプルンは嬉しそうに天井やら色んな場所を見る。
「はあ、めちゃくちゃドキドキしたじゃない!! もう!!」
メイプルンを見て怒るホットケイクにぽかんとした顔で返す。
「ま、まあ、結果的に足が手に入ったからいいじゃないですか」
「そうだけど、危なすぎでしょ……」
何はともあれこうしてルーン村に行くことができる。帝国の国境線に近づくことができたのだ。
「見てください!! ナッツですよ!! ナッツ!!」
ご自由にお食べください、という紙が貼られたナッツに手を伸ばし、美味しそうに頬張る。
ルーン村まではそこそこ距離がある。一同はつかの間の休息を取るのであった。